見出し画像

ブルアカ苗字考その② ~それなりにいる苗字~ (3000世帯以下、300世帯以上)

本当はもう少し刻んでもよかったのだが、やはりというべきか希少な苗字が多いということでそこに至るまでの3000世帯以下、300世帯以上を一気に紹介。繰り返すようだがまだ前座の域である。



桐生

約2,400世帯・9,700人
読み:きりゅう、きりうなど
※2023/11/08 追加

桐生キキョウ

セガの某堂島の龍を始め創作に多く見られる苗字だが、現実にも結構多い苗字。胎内市を始めとした新潟県に多いが、発祥は群馬県にある桐生市から。
地名としての「桐生」の由来については諸説あるが、桐の木がよく生えていたからとも、山地にあったため霧の発生が多く、「霧生」が転訛したものともされている。また苗字としても「霧生(きりゅう/きりうなど)」は神奈川県小田原市などに見られる。
桐は日本と非常に縁が深い植物であり、歴史上多くの紋章に描かれてきた。このような紋章を「桐紋(きりもん)」もしくは「桐花紋(とうかもん)」という。特に中世以降は武士が天皇から家紋として賜ったことでも知られ、足利尊氏、織田信長、豊臣秀吉といった著名な武士も家紋や衣服などにこれを刻んでいる。また、現在でも内閣総理大臣の紋章には桐紋でも最も格式高い「五七桐花紋(ごしちとうかもん)」が描かれているほか、五百円硬貨の表面に用いられている植物も桐である。


朝比奈

約2,200世帯・9,000人
読み:あさひな、あひな

朝比奈フィーナ

創作に多いイメージもあるが静岡県西部にはよくいる苗字。
静岡県藤枝市岡部町の旧称を「朝夷郷(あさひごう)」といい、そこから派生したのだそう。
かつて同地を治めていた今川義元の配下・朝比奈氏もそれなりに知られている。特に泰朝は今川家の滅亡まで見届けた苦労人だ。
ちなみにフィーナはみくるビームを撃てない代わりに機関銃が撃てる。


各務

約1,700世帯・7,000人
読み:かがみ、かかみなど

各務チヒロ

難読ではあるが岐阜県にある各務原市の影響で読めるユーザーは多いだろう。その通り同地発祥の名字で、702年には既に「各牟」の表記で記録が残り、これが「各務」に転じた。当然のように岐阜県に集中しているが、一番多いのは各務原市ではなく多治見市のようだ。
なお、同市を聞いて『ゆるキャン△』の各務原なでしこを思い出す人も多いかもしれないが、「各務原」という苗字は存在しない。また同作のキャラの名字は東海圏の地名で固められている。


不破

約1,500世帯・5,800人
読み:ふわ、ふばなど
※2023/11/08 追加

不破レンゲ

幻想郷であれば妖怪の山にいそうな見た目をしているが、2023年11月に名前が判明した百花繚乱のメンバーの一人。苗字は一般的な読み方ではないものの、こちらも創作に多く存在するため浸透しているであろう。
岐阜県羽島市などに分布しており、発祥も付近にある岐阜県不破郡から。不破郡は壬申の乱や関ヶ原の戦いの舞台となった関ケ原町を有することでも知られる。かつてこの地は畿内と東海道を結ぶ交通の要衝であり、800年頃までは不破関が置かれた。中世以降は「兵どもは夢の跡」とばかりに松尾芭蕉や小林一茶といった俳人によって詠まれている。そんな中で大田南畝の残した「大友の 王子の王に 点うちて つふす玉子の ふわふわの関」という句は一線を画しているように思える。


春原

約1,400世帯・5,500人
読み:すのはら、はるはらなど

春原シュン
春原ココナ

最も多い「すのはら」読みは難読だが、こちらもやはり創作の影響で読めるユーザーが多いのではないかと思われる。それと便座カバー。
長野県に非常に多いが、由来は埼玉県に端を発するようだ。
今となっては「春」という字の音読みは「シュン」の他にないが(姉の名前と被っているのは偶然だろうか)、かつてはやや転訛した「すん」とも読まれ、変体仮名の一つには「春」を崩して「す」と読むものがある。よって道理に適った読みと言えよう。


中務

約1,000世帯・4,100人
読み:なかつかさ、なかつかなど

中務キリノ

これも難読だが歴史の勉強をしていれば読めそうな苗字。律令制において天皇を補佐する役職であった中務省からそのまま持ってきている。岡山に多い。
ここで今回職業に由来する苗字が初めて出てきたわけだが、日本の名字は英語圏やドイツ語圏に比べると圧倒的に職業姓が少ないと言われている。しかしながら藤原氏が絡むものも多いため種類ではなく人口で言えばそれなりの割合にはなる。例えば斉藤、工藤、武藤などのメジャーな苗字がそうなのだが、この辺を話すとどんどん話題が逸れていくのでここでは割愛。興味を持ったら調べてほしい。
なお当記事で「各務」「中務」と「務」を持った苗字が2つ出てきたが、これ以外でこの字を持った苗字となると「務台」で150世帯ほどと一気に減る。読売新聞社社長を務めた務台(務臺)光雄などが有名人として挙げられる。
ちなみに彼女はプレテスト版では「伊折」という苗字だったらしい。「伊織」の異形と思われ、広島県庄原市などに40世帯ほど存在。


京極

約940世帯・3,800人
読み:きょうごく
※2024/3/28 追加

京極サツキ

創作にも多い苗字。大阪府や秋田県秋田市、静岡県浜松市など全国にそれなりに散らばって存在するが、発祥は京都で、平安京にあった東京極大路だという。これは現在も商店街として栄えている寺町通に当たる場所である。
歴史において京極と言えば宇多源氏に属する京極氏が知られ、特に有名なのは織田・豊臣・徳川と天下人に仕えた高次(たかつぐ)であろう。彼は妹・竜子や淀殿の妹・初を正室としたことにより出世を遂げたことから七光りを意味して「蛍大名」などと揶揄される。しかし、応仁の乱以降衰退していた京極氏を復興させ、関ケ原の戦いでも西軍を食い止めて東軍の勝利に貢献するなどきちんと功績を残していることに留意されたい。実際のところ関ケ原の戦いの武功から家康により若狭一国を与えられ、小浜藩を開き城下町の発展に貢献している。
また、彼の孫養子にあたる高和(たかかず)は嫡子不在により断絶しかけていた京極家にあたり転封、丸亀藩の初代藩主となっている。その後丸亀藩は明治維新まで続き、最後の藩主であった朗徹(あきゆき)の養子・高徳(たかのり)が北海道は倶知安に農場を拓く。後にこの地は虻田郡京極町となり、ここから京極を名乗る者も現れるなど、現在でもその名を残している。


古関

約900世帯・3,700人
読み:こせき、こぜき、ふるぜきなど

古関ウイ

関東や東北の分布が大半を占める苗字。現在の山形県鶴岡市に古関村という村があったほか、「小関」からの異形も考えられる。異形とは同じもしくは類似の読みで漢字を変えた苗字のこと。分かりやすい例として、例えば「渡辺」の異形に「渡部」「渡鍋」「亘鍋」「綿鍋」などがあることなどが挙げられる。もちろんこれらの苗字全ての由来が異形に典拠しているというわけではない。
また「こせき」という読みが多くを占めており、「こぜき」と濁るのはそこまで多くはなさそう。尤も戸籍謄本には読み仮名を書く欄がないため、データベースについては曖昧と言わざるを得ない。


赤司

約700世帯・3,100人
読み:あかし、あかつかさなど

赤司ジュンコ

こちらも某キセキの世代の中心を始め創作ではよく見かける苗字。現実世界では九州に分布が多く、特に福岡県久留米市や佐賀県三養基郡などに集中する。由来もその久留米市で、古くは「赤自」と書いた。
ちなみに「青司」(せいじ)という苗字も静岡県などに僅か3世帯ほど存在する。この字面だと名前ではあるが綾辻行人の館シリーズに登場する中村青司を思い出す。


鹿山

約630世帯・2,400人
読み:かやま、しかやま
※2023/5/26 追加

鹿山レイジョ

山海経でルミの護衛を務めるカンフー娘。
埼玉県や群馬県に多いが、どれも地名由来であるのは共通しているようだ。文字通り鹿のいる山だったのだろう。
「鹿」のつく苗字で最も多いのは「鹿島(かしま/しかじまなど)」で4,500世帯ほど存在し、茨木県鹿嶋市に由来している。そのほか「鹿野(かの/しかのなど)」「鹿内(しかない/ししうちなど)」「小鹿(こしか/おじかなど)」など、動物のつく苗字の中ではかなり世帯数が多い部類である。
奈良公園や宮島で鹿が放し飼いにされているように、古来から日本は鹿との結びつきが強いため、苗字、ひいては地名としても多くが残っているのだ。
ところで、個人的には苗字より耳慣れない名前の方が気になる。中国らしい響きにするために「麗女」から当てたのだろうか。ちなみに江戸中期には荒木田麗女(あらきだ・れいじょ)という名前の女流作家がいた。彼女は本居宣長と文学論争を繰り広げた逸話もあるほか、作家業では現在で言うBL小説のようなものを書いていた記録も残り、日本文化の根底にある深い歴史を偲ばせる。


一之瀬

約560世帯・2,200人
読み:いちのせ

一之瀬アスナ

甲信越地方に多い苗字であり、特に長野県東筑摩郡筑北村では3%を占める。また同地が草分けとなっているそうだ。
「イチノセ」という苗字では「一ノ瀬」が最も多く、3,100世帯ほど所在している。ただしこちらは甲信越ではなく長崎県に多く、同地が発祥地の一つとも言われる。ちなみに次点で多い一瀬(いちせ、いちのせ)(2,500世帯)となると再び甲信越に分布する。
個人的に「一之瀬」といえば『ポケットモンスター』シリーズのBGMを担当する一之瀬剛氏を思い浮かべる。


三善

約460世帯・1,800人
読み:みよし、さんぜん
※2023/8/27 追加

三善タカネ

福岡県うきは市、新潟県新潟市に集中。「三吉(みよし)」との関連姓と推定され、「三次(みよし)」にも通じる。このことから広島県三次市が由来と見られている。また百済や漢から渡ってきた渡来人が「三善」の名を授かり、後に貴族として定着している。醍醐天皇の代に活躍し阿衡の紛議で菅原道真と対立した三善清行(百済系)や、詩文や浄土教に精通し多くの書籍を残した三善為康(漢系)が知られている。
「みよし」と言えば四国を中心に分布する「三好(みよし)」が18,000世帯近くと圧倒的に多いのだが、こちらは徳島県三好市が由来。同市は著名な景勝である大歩危・小歩危を擁し、四国の中で最も面積が多い市区町村である。また室町時代にはこの地を支配した三好氏が畿内を中心に勢力を伸ばし、戦国時代になると当主の長慶が最大版図を築き、一時期は幕府をも支配した。これが「三好」が多い理由であろう。


下江

約450世帯・1,800人
読み:しもえ

下江コハル

広島県(特に福山市)に多い苗字。恐らく今調査の中でもトップクラスに分かりやすい地名由来の名字であり、そのまま「下(流にある入)江」から来ているものと思われる。
他にあまり語ることもないので捕捉するが、「小春」という苗字も大分県杵築市を中心に僅かながら存在する。
また一つ言えるとすれば当調査は極めて健全なものであり、押収される心配も死刑を執行される心配もない。



栗村

約430世帯・1,700人
読み:くりむら

栗村アイリ

東北地方に非常に集中する。特に岩手・宮城・福島と東側の3県に多い。
発祥は福島県河沼郡会津坂下町の旧地名で、同地には現在も栗村稲荷神社が存在する。
放課後スイーツ部ということで恐らくは彼女の名字はクリームから来ているのだろう。また完全なる余談だが、偉大なるキム・ヨンハ統括Pのお膝元韓国には栗村駅(ユルチョン-)という駅もある。


明星

約350世帯・1,300人
読み:あけぼし、みょうじょう、みょうせいなど

明星ヒマリ

メルヘンチックで創作のような苗字だが愛媛県新居浜市を始め一定数存在する苗字。由来はそのまま明るい星から取ったもの、もしくは三重県多気郡明和町にあった明星という村から僧侶がつけた明治新姓とされる。
明治新姓とは、所謂1875年に発令された「平民苗字必称義務令」を下敷きにし、庶民が名乗り始めた苗字のことだ。概ねこうしたものの中から「田んぼの中に住んでいたから田中さん」だとか「ススキが辺りに生えていたから鈴木さん」だとかメジャーな苗字も生まれたわけだが、これ以降に紹介するであろう珍苗字も大半がこの時に生まれている。
また先述の「僧侶が名付けた苗字」というのも非常に珍苗字を呼びやすいので、興味があれば覚えておくといい。


氷室

約300世帯・1,400人
読み:ひむろ

氷室セナ

偉大なるヒムロックやコバルト四天王に数えられる少女小説家などの有名人はいるものの、実はそこそこ珍しい苗字。福岡県や兵庫県姫路市に多い。
由来はそのまま氷や雪などを貯蔵する倉庫「氷室」から。冷蔵庫が普及する前は貯蔵庫として有用であった。また雪や氷は大昔から暑さ対策としてローマ皇帝などから重宝された。
ちなみにセナは上の画像で示すようにやたらと固そうなおにぎりを食べていたことでも一部で注目を浴びたが、「鬼切」で「おにぎり」(おにきり)と読む某三刀流のような苗字もあるようだ。


概ねこんな感じで3000世帯以下から300世帯以上を駆け抜けたが、非実在の苗字があろうとも恐らくまだ1/5にも到達していない段階だ。だからこそ調べる価値があると感じたのである。
次からはいよいよ本格的に画像でソースを明示しつつ調査結果を報告する予定だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?