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ブルアカ苗字考その④ ~非常に珍しい苗字~ (100世帯以下、30世帯以上)

ここからは100世帯以下、諸君らの身近にいたら是非気に留めておきたいところ。話の引き出しも枯渇してくる頃合いだが、前回をさらに上回る生徒を調査。ここよりさらに先は刻む必要が出てくる。



天見

約90世帯・350人
読み:あまみ

天見ノドカ

大阪市に集中し、発祥も同府の河内長野市にある地名から。南海高野線の天見駅や、辰野金吾の建築が遺ることで知られる天見温泉がある。
「天海」とも通じる部分があるが異形かは不明。「天海」と聞くと『アイドルマスター』シリーズの天海春香を思い浮かべるが、読み方では「あまがい」が圧倒的に多い。なお同シリーズで実在しない苗字は「双海」のみ。
ノドカの趣味の通り天文に託けた苗字と思われるが、現実世界の苗字でも「月」「日」がつくものは暦にまつわるものも多い。


空井

約90世帯・320人
読み:そらい、うつい

空井サキ

広島県呉市などに多い苗字。かなり離れて群馬にも分布するが、そこでは「うつい」と読む。諸説あるが地形由来と思われ、高所から井戸を汲むのを空に例えているものと思われる。通常だと「高井」になるのだろう。
また前回の記事で「下倉」の「下」の意味を「標高の低い土地」と述べたが、「高」がつく苗字が枚挙に暇がない中、「低」のつく苗字は僅か3種ほどしかない。その中のひとつ「低田(ひくた)」は、周りに高木姓が多かったため敢えてこのように名乗ったという逸話がある。


飛鳥馬

約80世帯・400人
読み:あすま、あすかまなど

飛鳥馬トキ

最近ダブルピースが板についてきた気がするトキの苗字「飛鳥馬」は埼玉県春日部市に圧倒的に多い。由来は同地の地名であり、恐らく飛鳥文化などの飛鳥との直接の関係はない。
また同地付近発祥と思われる苗字「遊馬」の異形とも言われる。何やらかっとビングしそうな苗字だが、元は「馬を放し飼いにする場所」を意味し、「馬場」などに近しい。


野正

約80世帯・300人
読み:のまさ
※2024/1/25 追加

野正レイ

打率は0割8分ながらミレニアムサイエンススクール野球部の4番バッターとのこと。そういえば『beautiful day dreamer』は夢オチだった。関係ない話だが、目つきも似ているので『アイドルマスター ミリオンライブ!』のこのアイドルを思い出す。
苗字は大半が福岡県に存在。築上郡築上町が本拠と見られる。由来は「野」のつく苗字に名前として使われた「正」を合体させて創姓したものと推測される。こうした名前そのものが苗字になったケースは案外多く、例えば愛媛県松山市平井町に集中する「重信(しげのぶ)」は、この地で河川改修をした足立重信という人物にまつわる伝承が残る。加藤嘉明の配下であった彼は関ヶ原の戦いで功績を残すと、暴れ川として悪名を轟かせていた伊予川の治水工事に着手。見事これを成功させ、伊予川だった川は現在に至るまで重信川という名前で残っている。こうした功績を残した個人の名前が残る川は珍しいと言うが、概ねこういった伝承からこの系統の苗字が生まれているのではないかと考えられる。
ちなみに足立はこの後も現存天守の一つとして知られる松山城の築城を手掛け、普請奉行に命じられている。残念ながら築城の完成を待たずして亡くなっているが、彼が松山の英雄であることは寸毫の疑いを挟む間もないだろう。


猫塚

約80世帯・260人
読み:ねこづか、ねこつか

猫塚ヒビキ

エンジニア部なのになぜかチアガールの姿しか見たことがないのだが、それはさておき岩手県花巻市などに分布する苗字。同地の大字北笹間にある地名が由来と思われる。
名字由来netにはアイヌ語が訛ったという説があるものの、分布の中心となっている地域に同一の地名がある以上眉唾だろう。大抵かような面白そうな由来や逸話には罠が潜んでいるので調査を怠るなかれ。
ちなみに「犬飼」を筆頭に「犬」のつく苗字はメジャーなものも多いが、「猫」のつく苗字はこの猫塚が一番多く、犬のつくものと比較してかなり少ない。これは完全なる勘だが、犬の方が人間のパートナーとして長年暮らしてきた歴史がある以上、地名や苗字にも残りやすいのではないだろうか。それこそ上に挙げた「馬場」なんかはこの説に則れば理に適っている。


千鳥

約70世帯・210人
読み:ちどり

千鳥ミチル

ふにゃふにゃボイスが話題になったミチルの苗字は富山県や九州地方などに分布。中の人は『原神』でも忍者の役を演っている。
鹿児島県に千鳥山という小字があったほか、富山県のものはそのまま鳥類のチドリから来ているのだという。その辺で見ることができる野鳥である。
千鳥というと同名のお笑い芸人も思い浮かぶが、彼らのコンビ名の由来は憧れていたものの入れなかった笠岡高等学校の通称「千鳥」から来ているようだ。ちなみにノブの苗字は「早川」、大悟の苗字は「山本」とありふれている。


朝霧

約65世帯・300人
読み:あさぎり
※2024/4/11 追加

朝霧スオウ

キヴォトスの鉄道管理教育を行う「ハイランダー鉄道学園」の監督官。「ハイランダー」とはスコットランド北部・ハイランド地方の住民のことを指す。その実スコットランドも鉄道が有名であり、同地の最大都市・グラスゴーを発つ蒸気機関車ジャコバイト号は、映画『ハリー・ポッター』シリーズに登場するホグワーツ特急のモデルともなっている。
さて、苗字の「朝霧」だがこれは岡山県美作市が本拠。単に朝に立ち上る霧のことを「朝霧」といい、一例として兵庫県明石市の朝霧町は柿本人麻呂の句「ほのぼのと明石の浦の朝霧に島隠れゆく舟をしぞ思ふ」から来ているのだという。しかし日本姓氏語源辞典を参照する限りでは、「推定では朝と桐から」とあり、「朝桐」「浅桐」の異形と考えられる(ただしこの2つは現在も実在こそすれど「朝霧」より数が少ない)。
また、先程本拠と述べた美作市では戦国時代に朝霧氏が居住し、「朝墳墓」と称する祠があったという。朝霧氏についてはネット上の文献がほぼなく、氏神として祀られていたという情報程度しか確認できなかった(参考)。


若葉

約60世帯・220人
読み:わかば

若葉ヒナタ

島根県や千葉県など全国に疎らに見られる。由来はそのまま原義である「新しい葉っぱ」を意味する言葉から。
古くから新しさの象徴として使われている言葉であり、瑞祥を象徴するめでたい苗字と言える。そんな若葉が青々と茂るさまをよく「新緑」とも言うが、これは夏の季語であり、日本の原風景を象徴するものでもある。
ちなみに「緑」がつく苗字はグリーンリバーでお馴染み「緑川」が4000世帯ほどとダントツで多く、次いでそのまま「緑」が約200世帯と一気に減る。


音瀬(音瀨)

約60世帯・200人
読み:おとせ

音瀬コタマ

ヴェリタスの盗聴担当だけに音のつく苗字。滋賀県彦根市や兵庫県高砂市に存在。発祥は高砂市の曽根町で、文字通り音のする瀬からとされ、同地にある天川(あまかわ)という川が由来か。字面的には「小川のせせらぎ」が想像されるが、天川はれっきとした二級河川で、姫路市→加西市→高砂市と渡り曽根湾に流れる。また1つ市川と呼ばれる川を挟んだ右にはこれより向こうの人が帰られへんことでお馴染みの加古川がある。
「音」が入る苗字は世帯数が多いものこそ少ないがかなりの種類があり、元中日ドラゴンズの外野手音重鎮(おと・しげき)のように「音」1文字の苗字もある。これは何かの音がしたからというわけではなく石川県金沢市にある観音堂町から音の一字を拝借したのだという。
またお笑いコンビ、トム・ブラウンのボケを務めるみちおの本名は道音雄太(みちおと・ゆうた)と言い、彼の出身地が示すように「道音」は北海道に多い。発祥は富山県魚津市と言われ、戦国時代に山道で危険を知らせた住民が称したという伝承が残っている。


仲正

約60世帯、200人
読み:なかまさ、なかしょうなど
※2023/10/4 追加

仲正イチカ

正義実現委員会の中では唯一苗字が判明していなかったが実装に伴い公開。いかにも正義の名の下を彷彿とさせる苗字だが、読み方は「なかしょう」が一般的。岡山県津山市を本拠とする。
「なかしょう」の読みが多いことが示す通り、元の苗字は「中庄(なかしょう)」だと言われる。これは石川県金沢市・白山市などに分布し「仲正」よりも希少な苗字だが、中央にある荘園を表したとされる。この記事で後述する「清澄」にも少し情報が出ているが、「荘」が「庄」に通じるケースは多い。江戸時代には村長に値する役職を「庄屋」と言ったが、この「庄」はまさしく荘園のことを意味する。また「庄」のつく苗字で最も多く13,000世帯ほどいる苗字「庄司」は山形県や宮城県に集中するが、読んで字の如く荘園を司る役職から来ている。


河和

約50世帯・200人
読み:かわわ、こうわなど

河和シズコ

某秀知院学園生徒会副会長の口癖みたいな苗字だが、岡山県や栃木県などに実在。
似たような苗字に「川和」があり、これの異形である可能性が高い。同苗字は神奈川県横浜市都筑区に現在もある川和町が由来とされている。かつて川和町は「河輪」「川輪」「川勾」などの複数の表記があったようであり、これらも全て苗字としても少数世帯ながら残っている。
同じ文字が2つ続くのは日本語では面白い響きになるが、3文字続く苗字もある(「大岡(おおおか)」「笹硲(さささこ)」「飯井(いいい)」など)。


生塩

約50世帯・180人
読み:うしお、おいしおなど

生塩ノア

ミレニアム随一の強キャラだと信じて止まないノアの苗字は、広島県東広島市に集中している。詳しい由来ははっきりとしなかったが「牛尾」の派生とも言われ、同姓も広島県に多い。牛尾というとどうしても闇のゲームの犠牲者1号の人を思い出す。
ちなみに「牛尾」の次に多い「うしお」は「潮」であり、島根県雲南市発祥、或いはそのまま地形由来と思われる。なんとなく「潮」の方が一般に通じている読み方ということを考えてもしっくりくる気がするのだが、わざわざ「生塩」にした理由はあるのだろうか。この辺りの疑問は当調査に至るまでの経緯のひとつでもある。


豊見

約45世帯・?人
読み:とよみ

豊見コトリ

兵庫県三田市・西宮市などにいる苗字。「豊」は好字と言われる。好字というのは即ち縁起のいい文字ということであり、地名や苗字などに使われるケースが多い。サルをエテ、シネマをキネマと言ったりするなど、日本人は昔から言葉に縁起を担ぐことを重要視しているのだろう。
また713年には元明天皇の命の下「諸国郡郷名著好字令(しょこくぐんごうめいちょこうじれい)」なるものが発布された。別名を「好字二字令」とも言い、要するに地名を分かりやすくするため2文字かつめでたい漢字を用いた表記に統一しましょう、ということだ。
これにより「大和」「和泉」「近江」「美濃」「群馬」など数々の現在にも通じる地名表記が生まれ、苗字にも通じていくこととなる。

安守

約45世帯・40人
読み:やすもり

安守ミノリ

共産主義者の苗字は富山県富山市に集中する。直接の関連は不明だが、同市の安養寺という地名に非常に多く、全体の1/4-1/6ほどを占めている。よってこの地名との関連が濃厚である。
さらに安養寺という地における苗字の特筆すべき点として、「終夜(しゅうや)」という中二病を極めたような苗字が存在することが挙げられる。現在「終」が入る苗字はこれしか発見されておらず、加えて1-2世帯ほどしかいないとされており、そういった意味でも貴重だ。


牛牧

約40世帯・140人
読み:うしまき

牛牧ジュリ

鹿児島県肝属郡に集中している。同地に位置する同名の小字が発祥と見られる。また現在岐阜県本巣郡穂積町の一部となっている地名にも牛牧があり、河川が多いことから古くから洪水多発地帯として知られたようだ。
字面的には放牧をしていたかのような印象を受けるが、この話を聞く限りではとてもそうは思えない。鹿児島の方はといえば黒豚などの放牧も有名であるが。
ジュリといえば↑のように栄養士のような風格を出しておいて災害レベルの料理を作ることで有名だが、「料理谷(りょうりだに/りょうりたに/りょうりや)」という苗字が熊本県などに僅かながら存在する。その通り料理人であったことが由来のようだ。


伊原木

約35世帯・140人
読み:いばらぎ、いはらきなど

伊原木ヨシミ

兵庫県・大阪府・香川県など。マイナーな苗字ではあるが、現岡山県知事の伊原木隆太氏がいるので聞き覚えがあるユーザーも多いだろう。例のアレの県北土方ミームのせいで著しく風評被害も食らっていることだし。
読み方については「いはらぎ」「いばらき」なども考えられるが、ヨシミや伊原木隆太氏を始め「いばらぎ」と読むケースが多い。それもそのはず「茨木」からの異形であるからだ。こちらの由来は大阪府茨木市からであり、最初に述べた通り「伊原木」が大阪府に多いのも納得と言える。恐らく茨城県とは何の関係もない。


姫木

約30世帯・150人
読み:ひめき

姫木メル

鹿児島県、それも何の因果か先に述べた「牛牧」と同じく鹿児島県肝属郡に多い。肝属郡にはキヴォトスの謎を解き明かす何かがあるのかもしれない。そもそも鹿児島県南部は苗字の魔境として知られていたりもするのだが。
由来は同県にある霧島市の地名から。この地名自体は「ひめぎ」と濁るようで、この読み方をする苗字には「姫城」がある。なんだか姫路城みたいな字面だ。
そういえばなんかの作品で「姫木」という苗字のキャラがいたな、と思ったら『異能バトルは日常系のなかで』のヒロインの一人にいた。この作品は2014年のなかでもトップクラスに好きで、しかも制作は『キルラキル』から2作目となるTRIGGERが担当していた。しかし一部のミームが話題になったの以外は忘れ去られてそうであり、もっと評価されてほしかった作品である。


天地

約30世帯・110人
読み:あまち、てんちなど

天地ニヤ

糸目猫属性と何かと強キャラ感を漂わせるニヤ。その苗字「天地」もいかにも強そうで森羅万象を束ねた苗字だが、愛媛県や広島県などで確認できる。
ニヤの読みは「あまち」だが、「てんち」「あまじ」も確認できる。
地形に由来する苗字のようで、高い土地を表す。この辺り先述した「空井」とも通じる言い換え方である。僕がつけるとしても間違いなく素直に「高」にはせずこれらを使うだろう。
ちなみに福井県坂井市には「雨地」で「あまち」と読む苗字が存在しており、江戸時代に「天地」という苗字が畏れ多いと考えて改称したという伝承が残る。「天」「雨」の発音が同じなのは何も偶然ではなく、大和言葉から派生している由緒正しい読み方だ(「海女」を「あま」と読むように、「海」も同様の読みがある)。さらに、奇遇にもキヴォトスには「天雨」という苗字の生徒もいる。これについては次回の記事で触れるだろう。


間宵

約30世帯・110人
読み:まよい

間宵シグレ

栃木県芳賀郡などに実在。個人的には響きも字面も素晴らしい苗字のひとつ。「宵」のつく苗字は数種類あるが、その中では最も多い。
「宵の明星」という言葉を聞いたことがあるだろうが、宵とは日暮れからしばらくの間を表す言葉だ。まさしく由来はそこから来ている。
派生苗字として1世帯しか確認できないが「間霄」がある。「霄」とは大空などを表すが、「宵」と同じ意味も持つようだ。また横山大観の絵画に『雨霄る(あめはれる)』というものがある。


そういえば前回の記事の「羽川」の項目で『化物語』に登場する苗字は非実在のものが多いと書いたが、「まよい」ついでに名前を苗字に置き換えたらどの程度いるのだろうか、とふと気になった。そもそも過去にも調べたことがあったと思うのだが、折角なので軽く追加で調査をしてみた。

暦……存在しない
「暦」のつく苗字であれば「暦本(れきもと)」「暦利(れきかが)」がある。後者は足利氏との関連も濃厚。
ひたぎ……存在する
「肥田木」が宮崎県都城市などに存在。清濁の区別があるため読み方が多い。
翼……恐らく存在しない
須﨑氏のサイトに1世帯だけ表記があるが、情報が全くないため恐らく幽霊苗字。名前と誤認したのではないかと推測している。
駿河……存在する
500世帯はいる苗字。地名も残る静岡県駿河区発祥だが、岩手県に多い。笑福亭鶴瓶の本名としても有名。
真宵……「間宵」なら存在
上述の通り。
撫子……存在する
こちらも1世帯しか情報がなく幽霊苗字を疑ったが、確認したところ石川県に実在した。不動産業を手掛けているようである。ただし読みは「なでしこ」。


清澄 

約30世帯・110人
読み:きよすみ、きよずみ
※2023/5/1 追加

清澄アキラ

ワカモに次いで明らかになった「七囚人」の一人。苗字は福岡県田川市などに見受けられるが、発祥は奈良県大和郡山市にあった清澄荘(清澄庄)という地名・もしくは荘園の名から。
同地には749年に宇佐八幡宮から勧請(かんじょう。いわゆる神の暖簾分けのようなもの)した八幡大神を祀る薬園八幡神社があり、これは聖武天皇が祈祷を行った時に信託を受けたものだと言われ、奈良時代に施薬院が設置されるきっかけになったという。その後東大寺の荘園であった清澄荘に遷座。ここに清澄荘の名前が見られることから由来ではないかと推測する。更に1491年には現在の場所に遷座され、今でも境内に50種余りの薬草見本園を見ることができる。
この「清澄荘」について掘り下げていくと記載があり、950年発行と思われる台帳『東大寺封戸荘園并寺用帳』には「清澄庄田地廿七町二段七歩」と見える。現在の大和郡山市の本庄町・杉町の辺りに位置していたようだ。


今回はここまで。冒頭で述べたように100世帯以下、30世帯以上とかなり刻んだのだが、一挙に過去最多となる15人も紹介することとなった。しかしブルアカの苗字の奥深さはこんなものではない。次回からはさらに刻んで「30世帯以下、15世帯以上」「15世帯以下、10世帯以上」の記事を2回に分けて投稿する予定である。
期待して頂ければ幸甚であるが、目下の課題として「非常に珍しい」以上のレア度の表現を4つほど用意しなければならないので、まずはそこから考える必要がありそうだ。


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