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アクアポニックスのルーツと発展:古代文明と最新技術の掛け合わせ

兵庫県西宮市でアクアポニックスに取り組んでいる「もり」と申します。

植木屋として5年、アクアリウム歴10年の経験を活かし、持続可能な農業の形として高齢な祖母の農地でアクアポニックスに挑戦しています。

私がこの取り組みを始めた背景には、単なる個人の趣味の延長だけではなく、農地を守りたい、そして少ない資源で最大限の生産を行いたいという思いがありました。祖母が手入れを続けてきた農地が高齢化により休耕地となる可能性があったため、私はこの大切な土地を活かす方法を考え続けてきたのです。その中で見つけたのが、魚と植物を共生させて栽培を行う「アクアポニックス」という持続可能な農業技術でした。

アクアポニックスを選んだ理由は過去記事▶【非農家出身の私が祖母の農地をアクアポニックスで再生する|もり / アクアポニックス】◀をご覧ください。

今回は、アクアポニックスを勉強していく中で得られた知識を基に、アクアポニックスの原点や近代商業としての発展について深掘りし、皆さんにお伝えしたいと思います。

アクアポニックスは単に環境に優しい農業というだけでなく、食糧問題や水資源の有効利用といった多くの課題に対して新しい解決策を提供してくれるシステムです。

その背景にある歴史や、どのようにして現在のような商業的な形に発展してきたのかを一緒に見ていきましょう。

アクアポニックスのルーツ:アステカの「チナンパ」農法


チナンパのイメージ画像

アクアポニックスのルーツをたどると、メキシコ原住民のアステカ族が浮島の上で植物を育てていた農法「チナンパ」に行き着きます。※諸説あり

チナンパは、アステカ文明で用いられた水上農業システムで、湖沼地帯に杭を打ち込み、泥や植物の層を積み重ねて作られた浮島状の農地です。

この農法では水辺の栄養豊富な水を利用して作物を育て、非常に効率的な食料生産が行われていました。チナンパは魚と植物が共生する仕組みを持ち、現代のアクアポニックスの基盤となる持続可能な農業の概念を早くから取り入れていたと言えます。

古代農法から現代への進化

古代の農法であるチナンパが、なぜ現代で再び発展し進化したのか。それは持続可能性の観点からだけでなく、現代社会が抱えるいくつかの重要な課題に応える必要性があるからです。

まず、チナンパが持っていた自然と調和した効率的な食糧生産の仕組みは、現代において水不足や環境への負荷を減らしたいという社会的ニーズに非常に適合しています。アステカ時代には、豊かな湖の環境をうまく利用して作物と魚を同時に育てることが行われていました。この考え方は、現代のアクアポニックスにおける持続可能な資源利用の基礎となっており、限られた資源を無駄にしないという点で、地球規模の食糧問題や環境問題に対する有効な解決策となるのです。

さらに、技術の進歩がチナンパのような古代農法の再評価と進化を可能にしました。ポンプや水質モニタリング技術などの近代的な設備を利用することで、効率的に水を循環させ、安定した環境での農業を実現することができるようになりました。現代のアクアポニックスは、古代の知恵と最新のテクノロジーを融合させた形で、より効率的で持続可能な農業システムへと進化を遂げているのです。

このように、アステカ時代の農法が現代で発展し進化した背景には、持続可能な食糧供給へのニーズ、そして技術の進歩が相まって、古代の知恵を現代に適用することで新たな価値を生み出したことが挙げられます。現代社会では、水資源の不足や環境保護の必要性が強く求められており、チナンパのように水を効率よく使い、環境に負荷をかけない農法が再評価されました。こうした背景の中で、アクアポニックスは技術の進歩と共に現代農業の一つの解決策として発展してきたのです。

私の経験から学んだこと

私自身の経験でも、アクアリウムやアクアテラリウムを管理する中で、水草や観葉植物を育てることから得た知識がアクアポニックスに繋がりました。植木と野菜を同じように捉え、水草や観葉植物も野菜として栽培できるのではないかと考えたのが始まりでした。そして、実際に水槽内で野菜を育てることに成功したことから、この考えが間違っていなかったことを確信しました。

アクアポニックスの原点とハワイでの発展

アクアポニックスは特にハワイで発展してきました。その背景には、ハワイの地理的な孤立、限られた淡水資源、そして温暖で安定した気候が深く関係しています。

ハワイは太平洋に浮かぶ島々で、周囲を海に囲まれています。一見すると水資源が豊富に見えますが、そのほとんどが海水であり、植物に使うと塩分で枯れてしまいます。実際に生活や農業に使える淡水は非常に限られているのです。このため、貴重な水資源を効率的に使い、食料を確保する必要がありました。

アクアポニックスはこうした課題に対する理想的な解決策でした。

島内で限られたスペースと資源を使いながら、魚と植物の両方を効率的に育てることができるアクアポニックスは、食料の持続可能な供給を目指すために非常に適した方法でした。水の再利用が可能なアクアポニックスは、水資源が限られるような地域でも、持続的に農業を行うことが可能です。

また、ハワイは温暖で気候も非常に安定しており、年間を通じて農作物の栽培に適しています。魚の育成には一定の水温が必要ですが、ハワイの気候はその条件を満たすのに最適です。年間を通して植物が成長するのに適した気温が維持されるため、アクアポニックスのシステムが効率よく機能するという利点もあります。このような気候条件により、システムの維持にかかるエネルギー消費を最低限に抑え、コスト面でも大きなメリットがありました。このため、ハワイの多くの家庭や農家が気候の利点を活かして、アクアポニックスを導入しやすかったのです。

現在、アクアポニックスは世界的に広まりつつあります。特にオーストラリアや乾燥地帯、砂漠地帯での食糧生産において大きく貢献する可能性が高いと言えるでしょう。

まとめ

ハワイでアクアポニックスが発展した理由は、地理的な制約を克服するための持続可能な農業の必要性、限られた淡水資源、そして温暖で安定した気候条件が重なった結果です。こうした要素が結びつき、ハワイではアクアポニックスが農業の新たな選択肢として多くの支持を得て普及していきました。

さらに、アクアポニックスの技術は世界中に広がり、乾燥地帯や水資源の少ない地域においても、持続可能な食糧供給を可能にする方法として注目されています。オーストラリアや砂漠地帯などでの取り組みは、これからの地球規模の食糧問題の解決策として、大きな可能性を秘めていると言えるでしょう。

アクアポニックスは、限られた資源を最大限に活用し、環境への負荷を減らすことができる革新的な農業手法です。これからも技術の進歩と共に、さらなる効率化と普及が期待されており、持続可能な未来を実現するための重要な一歩となるでしょう。

著者紹介

もり

兵庫県西宮市在住。
植木屋として5年、アクアリウム歴10年の経験を活かし、2021年から義理の祖母が大切にしてきた農地でアクアポニックスに取り組んでいます。

高齢化が進む地域で、祖母の農地も休耕地になる可能性があり、なんとか活用できないかと考えた結果、アクアポニックスを取り入れることに。

持続可能な運用を目指し、日々試行錯誤を続けています。

≪SNS総フォロワー1万人以上≫
インスタグラムを中心にアクアポニックスや農業の魅力を発信中です。

≪農場見学について≫
関西を中心に、全国から法人・個人問わず多くの方が訪れる農場です。
見学では、アクアポニックスの基本や日々の管理のポイントを初心者にもわかりやすくお伝えしています。

訪問者の中には、同じように休耕地の活用方法を探している方も多く、私の取り組みが参考になればと願っています。

≪応援をお考えの方へ≫
アクアポニックスの取り組みを通じて、祖母の農地の活用と地域の農業活性化を目指しています。活動に関心を持っていただける方や応援をお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。

≪メディア実績≫
ラジオ関西「羽川英樹 ハッスル!」
Mer編集部「Mer Vol.36」 その他

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