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【怪談】おい

Kさん50代男性から聞いたお話。


彼は事務で、ノートPCを持ち歩いて仕事をしているそうだ。

エクセルやワード、経理処理ソフトなどを多々使用している。


ある日、自宅にノートPCを持って帰り取引先への案内メールをメモアプリに下書きしていた。

下書きを作成している最中、尿意を催しトイレの為に席を数分立った。


戻ってきて席に着き続きをしようとノートPCの画面に目をやると、

作成途中の文に三行ほどの改行ののち「おい」という文字が打たれていた。


Kさんは不思議に思ったが、席を立つ際に間違ってキーボードを触ったのだろうと気に留める事は無かった。



すぐにその改行と謎の文字を消し、数分作業を続けていたところ、

耳元で低い男の「おい」という声がした。

Kさんは驚き振り返ったがそこには誰もいなかった。

え?気のせい?外の声?いや近くで聞こえたよな?

と振り向いた姿勢で固まったまま軽く混乱したと同時に、さっき勝手に打ち込まれた文字と同じことに気付き嫌な考えが頭を過った。


Kさんは「いやいやいやいや」と声に出し気のせいだと自分に言い聞かせながら作業に戻ろうとノートPCの画面に向きなおした。


ノートPCの画面にはまた三行の改行と、「みろ」という文字が打たれていた。



Kさんは絶句し画面を見つめたまま固まってしまった。

が、咄嗟に「いや何をだよ!」と心の中で叫びすぐにノートPCをバタンと乱暴に閉じ、財布と携帯を握りしめ家の近くのネットカフェに駆け込み朝まで過ごしたそうだ。



このお話を聞かせて頂いた私はKさんに「その後かわった事はなかったんですか?」と尋ねたらKさんは

「次の日から数日、肩が重くて痛くってねぇ~。憑りつかれたかな?

なんてね、慣れないネカフェで雑魚寝したから肩凝っただけで何も無いよ」


と妙に楽しそうに語っていらっしゃった。

幽霊?じゃないが、私も内心「おい」と思った。


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