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【怪談】夜の腕

Yさん20代から聞いたお話。


彼の自宅はりんご畑に囲まれた少し田舎の方にある。

夜遅くに帰路に着き、真っ暗なりんご畑の中を車で走っていた。


と、車が照らすライトの先に何かが見えたので目を凝らしてみると、

道路の真ん中に何かが落ちているのがわかった。

Yさんはゴミか何かかな、と思いスピードを落として近づいた。


それは腕だった。


肘から下。男か女かもわからない、肌色の腕が落ちていた。

血が飛び散っている事も無かったので彼は反射的に、カカシやマネキンの腕かなと思い踏まないように車を走らせた。


ちょうどその腕が車の真下を通るようなコースにハンドルを切りその腕を車が通り過ぎた。


と思ったその瞬間バグンッ!!という鈍い音と共に車が一瞬浮き上がった。


Yさんは轢いてしまったと感じたが、マネキンやカカシの腕でこんな衝撃が走るか!?と疑問に思った。


そもそも田んぼでもあるまいしカカシなんてこの辺にあるか?マネキンだったら猶更だ。

もしかして本当に人の腕だったのでは…


嫌な冷たい汗が額を伝ったのを感じた。

すぐに車を停め、警察に電話が出来るようスマホを握りしめ車から飛び降り周りを確認した。


しかし、腕の欠片どころか血の一滴さえも見つからなかった。

ビビリな彼は、すぐさま車に乗り込み家へ戻った。


それから、近辺で事故や事件があったという情報は全くないそうで、彼が言うには「いまだに轢いた感触が忘れられない。あれ絶対本物ですよ」


本物が落ちてて轢いた拍子に近くの畑に飛んでったってのも考えられるが、では何故そこに腕が落ちていたのだろうか。

あたりで特に有名な事件事故は無かった。

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