靴を間違われたら

先日入った飲食店で、食べている途中、壁の貼り紙が目に入った。

「靴を間違われた方は早めにご連絡ください」

靴に傍点が振ってあった。

「靴? 間違えるか?」

「サラリーマンとかじゃない? 革靴って似てるから」

「ああ、そっか」

お昼に入ったその店は半分以上が座敷で、入った時はほぼ満員。靴を脱いでそろえる時に、フェラガモのミュールがあった。私でも知ってるブランドだけど、本物を見るのは初めてかも。思ったよりファニーな感じのロゴで、「グッチッ」とか「プラダッ!」って感じの威圧感はなかった。ミュールというより細めのサンダルという感じ。(それをミュールというのか?)

貼り紙の文言を見た時に思い出したのが、そのフェラガモだった。まあフェラガモじゃなくても、もし靴を間違われたらイヤだよなあ。前に図書館で、16本骨の傘をまったく同じ色の8本骨の傘と間違われて(絶対意図的だったと思っている)、すごーく悔しい思いをした。傘だって相当頭にくるんだから、靴だったら地団駄のひとつも踏みたくなるだろう。でも地団駄踏もうにも、靴がないんだから、やりきれないよなあ。

子どもの通っている保育園で、靴がなくなることは日常茶飯事だ。たいていは、後になって、縁の下から出てきたり、誰かが間違って履いて行ったのがわかって、やれやれとなって終わる。

はいてきた靴がないというのは、大人の場合、大問題だが、子どもの場合、保育園の庭は主のわからない靴だらけなので、そのへんに落ちているよさげな靴、通称「そのへん靴」をお借りして帰ればどうということはない。また、なくしていなくても、はいてきた靴がびちょびちょに濡れてしまった場合なども、そのへん靴のお世話になる。たまに、神経質な親が狂ったように、暗くなった園庭をスマホ片手に探し回ることもあるが、たいていはそのへん靴でなんとかなる。

しかし、この店で、「靴、間違われました」って申告して、それからその後はどうするんだろう? 店は代わりのサンダルとか用意してるんだろうか。それにしたってフェラガモの代わりにオヤジサンダルじゃな。フェラガモっていくらなのかな? とネットで検索してみたら、中古で312円と出てきた。なんかよくわからなくなった。

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