緑の中へ、光の中へ、物語のはじまり(五月)

緑の中へと歩いていった

満ちてゆく

満たされてゆく感覚が

器の記憶をよびさました


わたしはずっと待っていたのだ

この器が満たされて

静かにあふれだす音を聞くのを


緑はわたしを充たすだけ満たすと

あとは

まわりとのちがいがわからなくなるくらい

緑なのだった


深く底に沈みこんで

足元が目の高さになると

いくつものヘビイチゴが目に入った


また別の日

図書館の裏の大きなカシワの木の幹に

立派なうろをみつけた

手をつっこんで中を探ると

枯葉の感触

手紙はみつからなかったが

物語がはじまるのに、それでじゅうぶんだった

楽しいことをしていきます。ご一緒できたら、ほんとにうれしいです!