梅雨明け(七月)
六月に死んだ友に
手向ける花がない
花屋に並ぶ香りのない花たちを横目に
静かな商店街を歩いた
あの日、バスの中からみた焼き鳥屋の屋号は「天国」
根回しだけはいい神様
乾かない涙
一瞬で凝固して
ガラスの中に閉じ込められた
死体は飾り物めいて見えた
よく冷やされた白い建物を出ると
湿った風がからだを包んだ
線路沿いに、紫陽花
人の死の理由について考えることをやめたら
野に咲く花の刹那さが
いっそうむきだしになった
野菊 ムラサキツユクサに 矢車草にどくだみの花
香りを残して闇に沈む
降り続く雨の季節がはじまった
紫陽花が色を変える
じきにこの雨はやむと
生きている者たちは知っている
人々が夏の予定を尋ねあっている
シロップに浸かった果物が
壜の中でゆらりと揺れる
思い出はこれ以上、鮮明にはならないだろう
安心してまぶたを閉じたら
夜になった
会いに行こう、と思った祖母が
おととし亡くなったのだったと
目覚める途中で思い出した朝
窓をあける
夏がはじまっていた
楽しいことをしていきます。ご一緒できたら、ほんとにうれしいです!