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モチベーション…現場で働く人に、アイデア形にする適切な権限を

こんにちは(*'▽')

母親「宿題やったの?」 子ども「今やろうとしてたとこなのに~ やる気なくしたワ~」…あるあるネタでしょうか?? 映画「長いお別れ」(中島京子・原作、中野量太・監督、2019年)では主人公の次女が、子ども時代、自分だけ宿題済ませるたびに母親に50円もらっていたと打ち明けるシーンがありました…( *´艸`) 自分、あるいは他人のモチベーションを維持する&上げるのって、なかなか難しいです。自分、あるいはその人に合っている方法を見つけなくては!!


興味深いのは、20世紀の二つの主要なイデオロギーである資本主義と共産主義が、この人間観を共有していたことだ。資本主義者も共産主義者も、人を行動させるには二つの方法しかない、それはニンジンと棍棒だ、と語る。資本主義者がニンジン(つまり、金)に頼る一方、共産主義者は主に棍棒(つまり、罰)に頼った。両者はあらゆる点で異なったが、同意できる一つの基本的前提があった。人は放っておくと、やる気にならない、というものだ。

あなたはこう考えているかもしれない。「いや、そんなことはない。わたしはいつもやる気まんまんだ」。

反論するつもりはない。確かにあなたは正しい。わたしが言いたのは、人間は「他の人」はやる気がないと考えがちだ、ということだ。スタンフォード大学のチップ・ヒース教授はそれを「外因性インセンティブ・バイアス」と呼ぶ。つまり、人にやる気を起こさせるには報酬を与えるしかないと、わたしたちは決めつけているのだ。例えば、ヒースが法学生を対象として行った調査では、64%が、自分が法律を学ぶのは長年の夢だから、あるいは、法律に興味があるから、と答えた。しかし、他の学生の動機も同じだと考えている学生は、わずか12%だった。それ以外は? 彼らが法律を学ぶのは金を儲けるためだ、と考えていた。

資本主義の基盤になっているのは、この冷笑的(シニカル)な人間観だ。世界初の経営コンサルタントの一人であるフレデリック・テイラーは100年ほど前に「労働者が雇用主に何より求めるのは、高い賃金だ」と主張した。テイラーは「科学的管理法」の考案者として名を成した。その管理法は、工場を効率的に稼働させるためにはパフォーマンスをできるだけ正確に測定しなければならない、と説く。そのためにマネージャーは、ストップウォッチ片手に生産ラインの各所に張りつき、工員がねじを締めたり箱詰めしたりするのにかかる時間を計測する。テイラーは、理想的な従業員を、脳を持たないロボットになぞらえ、「愚かで、鈍重で、ほぼ雄牛に近い」と評した。

(中略)

テイラー主義に対する最初の意義は、1969年夏に小さなつぶやきとして唱えられた。

エドワード・デシは、博士号に取り組む若い心理学者で、当時その分野は「行動主義」の虜(とりこ)になっていた。行動主義は、テイラーの学説と同じく、人間を怠惰な生き物と見なし、人間を行動に駆り立てるのは、報酬の約束か、罰への恐怖だけだと考えた。

しかしデシは、この学説は現実にそぐわないと感じていた。結局、人間は行動主義者の見解に適応しない、あらゆる種類のばかげたことをしている。登山(辛い!)、ボランティア活動(無料!)、子どもを持つ(激務!)。一文の得にもならないことや、疲れるだけのことを、わたしたちは自ら望んで、継続的に行っている。なぜだろう。

その夏、デシは、場合によってニンジンと棍棒は「怠惰」を引き起こすことがあるという、奇妙な例外に遭遇した。彼は学生の被験者に、パズルを解くというタスクを与えた。しかし、報酬として1ドルを与えると、とたんに彼らはやる気をなくした。「お金はたしかに効くようだ」と後にデシは説明した。「ある活動へのモチベーションを下げるためには」

(中略)

数年前、マサチューセッツ大学の研究者たちが、職場での経済的インセンティブの効果についての51の研究を分析した。彼らは、ボーナスが従業員のモチベーションを下げ、道徳心を鈍らせる、という「圧倒的な証拠」を発見した。それどころか、ボーナスと目標には創造性をむしばむ可能性があることも発見した。通常、インセンティブの結果は数字で現れる。就労時間に応じて報酬が支払われるのであれば、人はより長時間、働く。論文の数に応じてなら、より多くの論文を出す。手術数に応じてなら、より多くの手術を行う。

ここで再び、西側の資本主義経済と、かつてのソビエト連邦の経済との類似が目を引く。ソビエト時代の管理者は、政府から生産目標を課されていた。生産目標が高くなると、たとえば家具工場では、家具の数が重視され、質が落ちた。テーブルと椅子の価格が重量で決まるようになると、動かせないほど重い家具が作られるようになった。

笑い話のようだが、残念ながら今でも多くの組織で同じようなことが起きている。手術数に応じて報酬を得ている外科医は、治療の質より、手術の数を重視する。弁護士の給与を勤務時間に応じて支払う法律事務所は、より良く働くよう弁護士を奨励しているのではなく、より長く働かせるだけだ。共産主義と資本主義のいずれのシステムにおいても、数の重視は、働く人のモチベーションを下げる。

では、ボーナスは無駄なのだろうか。そうとは限らない。(略)

しかし、わたしたち人間は、モチベーションがなければ働けない。

残念ながら、エドワード・デシの教訓は、日々の実践にほとんど生かされていない。依然として人間がロボットのように扱われることがあまりにも多い。オフィスでも、学校でも、病院でも、社会サービスでも。

そしてわたしたちは幾度となく、他の人は自分のことしか考えていないと決めつける。つまり、目の前に報酬がなければ、人はだらだら過ごすのを好む、と思い込んでいるのだ。(略)

何によって報酬が決まるかによって、行動は大いに違ってくる。数年前、二人のアメリカ人心理学者が、時給で働く弁護士とコンサルタントは、働いていない時間にも値段をつけることを示した。その結果は? 彼らは、ボランティアの仕事をやりたがらなかった。

目標、ボーナス、罰金の見込みによって、わたしたちがどのようにつまずくかを見るのは衝撃的だ。

● 四半期ごとの結果にのみ集中し、企業を破産させるCEO。

● 論文の出版数によって評価されるため、捏造した論文を提出する学者。

● 標準テストの結果で評価されるため、定量化できないスキルの教育をおろそかにする学校。

● 患者の治療期間が長いほど収入が増えるため、必要以上に治療を長引かせる精神科医。

● サブプライムローンで儲けて、最終的に世界経済を破滅寸前に陥れた銀行家。

リストは続く。フレデリック・テイラーの時代から100年が過ぎたが、わたしたちは相変わらず他者のモチベーションを、壮大な規模で損なっている。142か国の23万人を対象とする大規模な研究では、仕事に「没頭している」と実感している人はわずか13%だということが明らかになった。13%。この数字を見ると、どれほど多くの野心とエネルギーが無駄遣いされているかがわかる。

だが、そのぶん、改善の余地は大きい。

(中略)

モチベーションについての見方を反転させたアメリカの心理学者エドワード・デシは、問うべきは、どうやって他者をやる気にさせるかではなく、どうすれば、人が自らやる気になる社会を形成できるかだと考えた。そして、その答えは新たな動き、新たなリアリズムを語っている。「そうしたいからする」人々ほど強力なものはない。

ルトガー・ブレグマン(Rutger Bregman)

『Humankind  希望の歴史(下)  人類が善き未来をつくるための18章』(野中香方子・訳、文藝春秋、2021年) 「第13章 内なるモチベーションの力」より


さいご、太字にした部分、グッと刺さりました…!!

巷で言われている「やる気スイッチ」というのは、好奇心ということでしょうか!? 興味があることを自主的に調べたり学んだりする、熱中できる(やらずにはいられない)ことで上達のために練習・鍛錬するのは、時間を忘れて没頭できることがあります。個人的にありがたく思っているのは、再来月に控えているフラメンコの発表会。この予定がなかったら、わたし、時間が止まったような毎日をただただ無益に過ごしていたかも…(;゚Д゚) 換気・消毒・マスク着用のお願いしつつ、開催楽しみです♪

ある人が健康に暮らしているときGDPはゼロとすると、その人がたとえば喫煙して/炭酸飲料飲みまくって/無茶して怪我して、病院で治療&投薬を行なうと、GDPは跳ね上がるんだそうです。…GDPを上げることだけ考えるなら、不健康になることも辞さない、ということになるのかな? う~ん、数字(定量化できる価値)が独り歩きすると、本末転倒になりかねないようです。

同書、第13章に登場する、ヨス・デ・ブローク氏が始めた在宅ケア組織「ビュートゾルフ」の成功の話に、興味津々です。「ヘルスケアであれ、教育であれ、他の何であれ、トップにいる人と現場で働く人との間には、大きなギャップがある」「マネージャーたちは結束しがちだ。さまざまな講座や会議をセッティングし、しょっちゅう集まっては、自分たちのやり方が正しいことを確認しようとする。(そのせいで彼らは現実から切り離される)」「現場で働く人は戦略的に考えることができない、つまり、ビジョンに欠ける、とマネージャーたちは考えている。だが、本当は、現場の人たちはアイデアに溢れている。彼らは千のアイデアを思いつくが、マネージャーは耳を貸さない。なぜならマネージャーは、会社の保養所に行って、働きバチのためのプランをひねり出すのが自分たちの役目だと、考えているからだ」と語っています。ヨス・デ・ブローク氏ご自身は、自分が雇っている人々を、仕事をどう行うべきかを熟知している専門家にして、内発的に動機づけられたプロフェッショナル、と見なしているそうです。

自民党総裁選候補の方の、保育士・介護職員・医療従事者の公定価格見直し(上げる方向)提案に賛成票一票。どなたがトップになったとしても、実現してほしいと感じています。業務量と責任ばかり重くなって大変極まりないのに、その献身的な態度にこれまで甘え過ぎていたと思うので。ボーナス?あるいは報酬アップ必要!!と思う方たちです。財界人に受けのいい経済活動推進の働きかけよりも、一人ひとりが安心して当人なりの活動ができる社会構築の下支えを期待したいです。一人も取り残さないぜ!!くらいの勢いで。

Re:Hack (日経テレ東大学/Youtube)という番組で、成田悠輔さんが別の政治家の方に質問していました。何かやるたびに批判されるのに、政治家になるメリットってなんですか?というようなこと。そのモチベーションが知りたい、今日この頃です。ひろゆきさん、デジタル庁に関わってほしかったな…!

Structures/Groups that believe goodness of human can go well ☆ 

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