やさしくなることこそが…
こんにちは(^^)
私の部屋には、ナマケモノ型ティッシュボックスカバーがあります。自分で座ってくれるし、腕がウエストポーチのようにカシャッとつなげられるので、高い位置からのほほんと見守ってくれてることもあります。部屋の「ヌシ(主)」です。
ナマケモノは究極の平和主義者だ。
同じ種類でも個体ごとに餌とする木の好みが異なり、それぞれ自分の好む木のみを渡り歩いて生活する。これによってナマケモノは同種同士で争うことを避けているのだ。
それだけではない。(中略)
紹介したように、ナマケモノは活発に動くことがない。しかしながら、排便排尿の際は木を降り、穴を掘って排泄し、落ち葉をかぶせる行儀のよさを見せる。当然、このとき捕食者である肉食動物に狙われる可能性は格段に高くなる。
この、不可解でまったく無意味に見える行為が、実は重要な意味を持っていることがわかったのはごく最近のことだ。
ナマケモノが住む熱帯雨林の土壌は、栄養に乏しく木が育ちにくい。年間を通して高温多湿な環境の熱帯雨林では、本来は土の養分になるはずの落ち葉や倒木が、バクテリアなどの微生物に跡形もなく分解されてしまう。そのため土壌が痩せてしまうのだ。事実、熱帯雨林の木は根が浅く、一度森林が失われてしまうと急速に土壌が流出し、砂漠化してしまう。
ナマケモノが地面に埋める排泄物は、こうした特徴を持つ熱帯雨林の植物にとって栄養になっているのだ。ナマケモノはわざわざ穴を掘って排泄することで自らの命を守ってくれる木に恩返ししているとも言える。
そしてこのことは、私たちの生活とも無関係ではない。実は大気中の酸素の40%は熱帯雨林の木から供給されていると推測されている。さらに、熱帯雨林には地球上の生物の50~80%にあたる多様な生物が生息している。
私たち人間は農地の開拓や伐採のために森林を切り開き、毎秒0.5~0.8ヘクタールのスピードで熱帯雨林を破壊している。かつて地球の16%を覆っていた熱帯雨林は半分以下の7%まで減少し、このままのスピードで破壊が進むと40年程度しかもたないと言われている。
ナマケモノは自らの命を危険にさらしながらも、熱帯雨林の、ひいては地球の環境を陰ながら支えてくれているのだ。
その生き方は、強くなることだけが進化ではなく、やさしくなることこそが一番の進化なのだと教えてくれる。ナマケモノはゆっくり進んでいるように見えて、実は人間のずっと先を歩んでいるのかもしれない。
篠原かをり
『LIFE(ライフ) 人間が知らない生き方』(麻生羽呂&篠原かをり、文響社、2016年)より
世界ふしぎ発見!でミステリーハンターを務めたこともある篠原さん、動物の魅力を余すことなく伝えてくれる彼女の語り口には慈愛や畏敬の念も感じられ、すっかり彼女のファンになりました。
ナマケモノはSDGs(気候変動に具体的な対策を/陸の豊かさも守ろう/エネルギーをみんなに、そしてクリーンに)をとっくのむかしから実践していたんだなぁ。
Chi va piano va sano e va lontano ☆
(キ・ヴァ・ピアーノ、ヴァ・サーノ、エ・ヴァ・ロンターノ
ゆっくりいく者は安全に遠くまで行ける。イタリアのことわざ)
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