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世界から飢餓を終わらせる

こんにちは(^^)

アボカドが好きです。ねっとりした食感が独特で、コールスロードレッシングをかけて単体で食べたり、トマト・玉ねぎにお塩ふって揉みこんだものにスモークサーモンとアボカド投入したサラダ(ロミロミサラダと呼んでいました)にしていただいたことがあります。

でも、森のバターといわれるだけあって、土壌の栄養分をたくさん必要とするために、アボカドを生産する土地の痩せ方が半端じゃないらしいのです。そのことを知ってから、いままで「美味しい、美味しい♪」と無邪気に食べていたことをすこし反省しました。


読者のみなさまへ

ぼくは今、アフリカ大陸東部・キリマンジャロ山の麓の村でこの文章を書いています。海抜1500メートルにある人口2000人ぐらいの小さな村で、日中は気温が30度近くに上がりますが、朝夕はとても涼しくなります。

この村にはこの本を支える食のあり方についての多くのヒントが詰まっています。

村を歩いていると、家々の周りには必ず主食であるバナナやイモ類が栽培されていることに気づきます。バナナは一年中収穫ができ、親株から子株が生まれ自ら育っていきます。また庭で飼っている牛や山羊はミルクを与えてくれます。これらの家畜は、バナナの葉を飼料とし、その排泄物は畑の肥料となります。

おかげで、この村の日常の食料生産は家族単位で年々更新されていき、現金がなくても、すなわち村の外にある市場で購入しなくても食の安全は基本的に確保されてきました。

人類の歴史において、人びとは自分たちの行動範囲で日々食べるものを調達してきました。この村で見る風景には、さながら人類がどう生きてこれたのかという原点があるように感じられます。

毎度の食事は、一家の長による食への感謝の祈りで始まります。食料は、経済的に豊かな「北」の国では、単なる商品として扱われることが多いですが、貧しい人びとが多く暮らす「南」ではそれ以上の価値を持つ生命財なのです。

キリマンジャロに降り注ぐ雨は澄んだ水をもたらし、そこで育つ立派な森は豊富な薪(まき)が、彼らの食を支えているのです。ここには、地産地消の原点がはっきりと見ることができます。そして、飢えとは歴史的にはこうした地域の自活のしくみが天災や戦乱などの人災で機能しなくなったときに起こることがわかります。

しかし、より便利で安全な現代の生活を送るためには、様々なニーズを充たすために、モノ(たとえば車や農機具、電化製品や建材)やコト(たとえば教育や医療)を外部世界から購入するための現金が不可欠です。

この村では、「北」の富裕国の消費者向けのコーヒー生産からも現金収入を得ています。コーヒーの栽培はキリマンジャロ周辺の地域では盛んで、バナナ園の日陰を利用してコーヒーの木が方々に植えられている光景をよく見ます。この村でつくっているのは、「北」の消費者向けに農薬を使わないで牛糞などを利用した有機栽培のコーヒーです。そのため、「北」の消費者は安心してこの村のコーヒーを飲むことができ、村の生産者は有機食品というブランドのためより高い値段で販売できます。このように、コーヒー生産によってこの食料自給村は遠く離れた外部の世界と結びつくことができるのです。

村の生活は少しずつ便利になっているようです。20年近く前、はじめてこの村に来たときは、電気はなく道路はもっとでこぼこでした。村では車を持つ人が増え、都会との交通もより容易になりました。何よりも素晴らしいのは、戦乱や社会不安で人びとが恐怖と欠乏に苦しむこの大陸のいくつかの地域と異なっていることです。つまり、この村は独立以後も戦乱に見舞われることがなく、平和なコミュニティーであり続け、すべてがゆっくりと、けれど確実に進んでいるのです。

しかし、食と農に関して、まったく問題がないわけではありません。

たとえば、人口が増加するにつれて新たな農地が必要となり、森は確実に減少していっています。またコーヒー豆の価格は、遠い「北」の国の市場で決められているため、村の生産者は自分たちの生産したコーヒー豆の価格に交渉力を持たず、ひたすら国際市場の動きに左右され続けています。

さらに深刻なことは、恵まれていた雨量が減ってきていることです。キリマンジャロの頂上を覆う雪にもここ数十年で変化がみられるそうです。

村人が、こんなことを教えてくれました。

「子どもの頃小学校の校庭から見たキリマンジャロ山頂はいつも真っ白なヤギが横たわっているように見えたが、いつのまにか山頂に岩肌が目立ちはじめ、ヤギの顔が半分になってしまった」。

この現象を地球温暖化と切り離して考えることはできませんし、「北」の私たちは、その歴史的責任から免れることができないでしょう。

このように、アフリカの小さな村の食と農の例をとっても、そこには南北問題が横たわっていることがわかります。

この本のテーマである飢餓の背景は、時代が変わるにつれて、どんどん複雑になっています。本書は、このような「南」の世界の現実を踏まえて、飢餓が、なぜ・どのように生じるかを考え、私たち「北」の食べ方、つくり方を問い直すというスタンスを貫き、そのための多様な分析と、私たちのできることを幅広く提案しています。これまで提起されてきたような、豊かな「北」が食料の不足している「南」に分けてあげるという従来の飢餓問題ないし、南北問題の図式を乗り越えて、前に進んでいくための第一歩を踏み出しましょう。

2011年3月11日の東日本大震災と、それをきっかけに生じた東京電力福島第一原子力発電所の事故によって、ぼくたちは、人類が安心して生き残るには、どんな世界のあり方が可能かつ望ましいのか、その答えを迫られました。

すべての人が世界各地で多様でかつ安全・安心な食料を作ることができ、しかも仲良く分かち合って食べていける世界を、今こそ、考えるときにきています。この本が、その一助となることを願っています。

     キリマンジャロ山の麓で

     2011年12月末  勝俣誠

『世界から飢餓を終わらせるための30の方法』(特定非営利活動法人 ハンガー・フリー・ワールド・編、2012年、合同出版)より


食糧の問題は、足りないならたくさん生産すればいい、というような単純なものではなく、貿易/加工・販売/輸送/流通…システムの面でも解決すべきことが多くあるようです。

「バーチャルウォーター(仮想投入水)」…ある国が輸入している品目を自国で生産すると仮定した場合に必要な水資源量。

「フード・マイレージ」…食料の輸送量に輸送されてきた距離を掛け合わせた数字。10tの食料を50km先の生産地から運んできた場合のフード・マイレージ=10×50=500t・km(トン・キロメートル)  10tの食料を2000km先の海外から運んでくると、フードマイレージは2万t・km ※イギリスの市民運動、フード・マイルズ運動を参考にしたもの

「フェアトレード(公正な貿易)」による「互恵取引の原則」…どちらか一方だけが有利になることなく、お互いに認め合えるフェアな関係で取引が成り立っているかどうか。

「身土不二(しんどふに)」…その土地でとれる固有の食材を、その食材が一番おいしい時期に、その食材に合った調理方法で食べるのが健康的な食生活であるという考え方。

知らなかった言葉を紐解くだけでも、世界の、および日本の食糧事情が見えてきます。

Imagine where foods come from and do what you can ☆

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