「シン・ゴジラ」から
こんにちは(*'ω'*)
今朝の新聞で、ゴジラも「ヒバクシャ」、という文言を目にして、『シン・ゴジラ』(庵野秀明監督、2016年)を観ていました。さいごの殲滅作戦のところでは、東京駅の真上で体力充電のため停止したゴジラに対して、無人操縦の在来線で爆撃したり、周辺の高層ビルをゴジラ側に倒してダメージを与えたりと、圧倒的な映像の迫力に思わず身を乗り出して見てしまいました。
「大臣、先の戦争では旧日本軍の希望的観測、机上の空論、こうあって欲しいなどの発想にしがみついたがために、国民に300万人以上の犠牲者が出ています。根拠のない楽観は禁物です」by 内閣官房副長官・矢口(長谷川博己さん)
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「にしても、防衛拠点が関東近郊に偏ってますよね」
「迎撃作戦は、首都防衛が最優先だ。ま、(首相官邸)5階からのお達しらしい」
「ここでも地方は後回しですか」
「東京の人口は1300万人強、GNPは約85兆円。日本の17%の水準だ。関東地区に広げると200兆円、40%にあたる。国家の維持を考えた戦略的判断だ。仕方ないだろう」
「“国を守る” って大変ですね…」
by 首相官邸ぶらさがり会見記者二人
( ゚Д゚)…なんだか、現在実際に話されていたとしてもなんにも違和感がない言葉です。東京アクアラインの天井崩落して、まだ正体がよくわからないとき、立ち昇るものは水蒸気のみで火山噴火とは確証が持てる証拠はあがってきていないのに、結論ありきで会議の方向を決めてしまったり、「政府に恥をかかせる気か!」と首相が言い放つところ、フィクションながら政府の体質をうかがい知ることができます。
「素朴な疑問なんだが、アレのエネルギー源は何なんだ?」
「たしかに。身体の活動だけではなく、基礎代謝だけでもかなりのエネルギー量が必要です。消化器官による酸素変換では消費量や動作効率が説明できません」
「あれだけのエネルギー……まさか、核分裂」
「(笑)冗談っぽいです、尾頭さん。(真顔)ありえませんよ」
……
「尾頭さんの言うことが正しかったってことか」
「ごめんなさい」
巨大不明生物特設災害対策本部にて
ゴジラは、各国が太洋に沈め廃棄した放射性物質を捕食して発生した生物という設定です。荒ぶる神、神の化身ということでGODを冠して「GODZILLA」というコードネームを与えられています。ほかの生物は世代を経て進化していくところ、ゴジラは変態・変異をして進化する人智を越えた完全生物だということです。
生態を把握するのに米国からも研究者を呼びますが、彼らが「…人類は終わりだ。その前に人類の叡智の炎を使うしか救いの道はない」というつぶやきにぞっとします。風の谷のナウシカの巨神兵を使って腐海を焼き払おうとする人と同じ発想ですね。「我々を守るための救いの道」「人類の叡智の炎」という発想のもと、76年前のきょう、広島が大変なことになってしまったんですね…。
映画では、米国と日本の関係性も描かれています。国連による多国籍軍の指揮を執る米国のたてた作戦は、ゴジラ駆除のための東京への熱核兵器投下。対して、日本のたてた作戦は、ゴジラの口から凝固剤投入することによる凍結プランです。
「祖母を不幸にした原爆を、この国に3度も落とす行為を私の祖国にさせたくないから」by 米国大統領特使(石原さとみさん)
本国から退避命令が出ているけど、東京に残ることにした米国大統領特使さんの言葉です。ゴジラが再び活動再開するとされるまで残された時間は、約2週間。熱核兵器の投下カウントダウンの中、凍結プランを準備するのと並行して、都内の360万人を超える人達の避難がおこなわれていきます。
「避難とは、住民に生活を根こそぎ捨てさせることだ。簡単に言わないで欲しいなぁ」by 総理臨時代理(平泉成さん)
ドラマ「過保護のカホコ」(日テレ、2017年)での父方のジイジのイメージ(めんどうくさいことは、いつも明日に持ち越そうとするぐうたらさん)と一見重なるキャラクターでしたが、上の台詞にはグッとくるものがありました。
ネタばれ、ごめんなさいm(__)m 凍結されたゴジラのしっぽの先がクローズアップされて終わりますが、そこに噛み合わせの悪そうな歯が並ぶ口のようなものがあるんです。この先の進化を予感させるような。エンドロールで流れる伊福部昭さんのゴジラのテーマが「このままじゃ終わらないぞ」という不安を掻き立てています。
身近に弟がいたので、特撮映画・特撮ドラマの再放送を観ていたことがあります。ウルトラマンで登場するジャミラのものまねで、Tシャツやトレーナーの首を出すところを髪の生え際まで引っ張ってきて遊んだことあります。ジャミラはたしか元々フランスの宇宙飛行士で、何らかのアクシデントで宇宙空間に置き去りにされてしまった末、環境に適応するなかで怪獣になってしまったんです。ウルトラマンシリーズではそういった、敵を完全なる悪ではなく、そうなるのに仕方がなかった得も言われぬ事情も描かれています。ウルトラマン側も、地球上に3分程度しか滞在できない完全無欠ではない描かれ方で、なんというか、制作側の深い優しさを大人になってからは感じることができます。
「ゴジラより怖いのは、わたしたち人間ね…」という言葉にあるように、ほんとうに怖いのは、とくに非常事態に表面化し姿をあらわす人間の中の業なのかもしれません。
GODZILLA is one of “HIBAKUSHA”, a victim ☆
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