見出し画像

「自分で始めた人たち」から

こんにちは(*'ω'*)

連続ドラマ「悪女(わる) 働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?」(日テレ)を毎週観ています。田中マリリン(今田美桜さん)が各回違う部署で奮闘している姿が痛快&つい応援したくなっちゃいます。マーケティング部に配属になったとき、社内でデータから有力な情報を読み取る社員が冷や飯を食っている場面で始まりましたが、外注して丸投げすると見えなくなるものがあること、内部連携の大事さに気づく回でもありました…!


太田垣 IT=人減らしのように言われていた頃です。ご相談を受けて私がまず思ったのは、データ化することで、その方の仕事を奪ってしまうのではないか、ということでした。でも恐る恐るヒアリングに向かった私に、彼はこう言ったんです。「俺だってこんな非生産的な仕事をしたいわけじゃない。今は電話対応に追われて一日の大半が終わってしまう。会社の対応が遅いせいでこうなってしまっている。ぜひ早く変えてほしい」と。聞きながら、私は先ほどのような考えで打ち合わせに臨んだことに、恥ずかしさでいっぱいになりました。私自身の発想を変え、正しいご提案ができるようにならなくてはと強く感じました。このように、私は実際の仕事を通して、システム構築にはデータをデザインすること、構造化することの発想が不可欠であることを気づかせてもらいました。
 そうして2010年以降、国や自治体など行政のお仕事にもかかわるようになったのですが、当初はあらゆる面でやり方のあまりの違いに辟易しました。システムを納品する際、(略)
 でも、その仕事に携わる中で、行政のデータを使わなければ解決できないことがたくさんあることにも気づきました。システムやサービスの構築や広報は民間で作ることができたとしても、行政のデータは必要です。ただ、仕事としてかかわるにはあまりに大変なことが多い。そこでもっと意見を言い合いながらみんなが便利になるサービスを共に作っていく場を持とうと、知り合いの自治体と非公式な勉強会をやり始めたのです。こういう形でシステムも作っていけるのではないかと感じたのが、行政の仕事を別の角度から捉えられるようになったきっかけです。3年ほど、少人数で知り合いを集めた形の非公式の勉強会を定期的に続けた後、さらに広く仲間を集めたいと思い、2014年には「Code for Kyoto」(※)を結成。2017年にはCOG(チャレンジ!!オープンガバナンス)にも応募して総合賞をいただきました。

(※)…「Code for Kyoto」 とは、IT技術を使って社会を創造的にアップデートすることを目的に、地域課題の解決を目指して活動するシビックテックの非営利団体。「Code for America」から派生し、「Code for Japan」「Code for Shiga」など、各地にコミュニティがあり、相互にゆるやかにつながっている。

宇野 デザインからWebに入り、重要なデータの優先度をどう示すかというアーキテクチャ(設計)の問題に気づかれたこと、そしてITは人の仕事を奪うと言われるけれど、やっている人のほうも実は非効率だと思っている、もっと合理化して生産的な活動に時間を使いたいという声を聞いたことが、太田垣さん自身のその後の原動力になったというお話、とても示唆的でした。
 お二人のお話を伺いながら、日本の行政はなかなか変わらない、変えていくには相当なご苦労があるのだろうと感じました。これまでやってこられた中で、これがあるからDXが進まないんだ、と思う事例やポイントはありましたか。

下山 理想形を思い描けないことが一番大きいのかもしれません。自治体によっては、パソコンが一人に一台なく、「○○さん、メールが来てるよ」と言われないと自分宛のメールに気づかないとか、ネットワーク分離のせいで、パソコンを使うとかえって非効率になるような状況がある。そうした浦島太郎状態の人に「デジタル化すると便利ですよ」「データを使えば業務が楽になります」と言っても、通じるわけがないんですね。DXされた組織やDX後の自分の働き方が想像できないことは、大きなネックです。
 一方で、もう少し環境の整っている行政機関ではもちろん皆さんPCを使って業務を行なってはいますが、外部から最先端の働き方をしている人たちが入ってきて力を持たれることに、恐怖を感じているようです。これまで自分たちが握っていた決定権などの権限が外部の人に奪われ、自らの存在意義が失われるのではないかと戦々恐々としている。この二つがDXを阻む要因になっていると思います。

宇野 官庁ではいまだにファックスを使っているところもあるという話も聞きますし、構造的な問題がかなりあるのでしょうね。とくに難しいのは、外部から専門技術を持った人を迎えることです。内部で賄うのが無理な以上、専門家を連れてくる必要があるのに、かれらをうまく使いこなせない。それどころか、自分たちの立場が脅かされると脅威すら感じてしまう。外部の専門家の能力を現場で十分生かすことが、日本の官庁は構造的に苦手なのでしょうね。表面的にいろんな人を連れてきては、担当者が交代して結局意味がなくなる、ということを繰り返している状況ですから。今後、外部の専門家が必要な場面はますます増えてきます。官庁の人事の仕組みや専門性に対する考え方、文化自体が変わらないと立ち行かなくなる気がします。

太田垣 官庁の方、とくに省庁系の方って、データを持っていること自体を権力だと考えていると聞いたことがあります。だからそれを手放すことが非常に不安だと皆さんおっしゃる。ご自分たちがデータを握り、分析することで地位を確立してきたのに、データが「見える化」されてしまうと、それが崩れてしまうのではないかと怖がっているようなんです。日本の省庁でデジタル化が進まないのは、ある意味老害的なところもあると、50年代前半の方がよくおっしゃっていますね。私自身、自分が作ったデータでビジネスをしてきましたから、気持ちはわかりますが。
 そのほかにも、思いのある担当者が異動すると志が中途半端に閉ざされてしまうこと、業務の外注が気軽に行われていることも要因ではないかと思います。例えば市民とのシンポジウムを開催するとなれば、その仕事全体を業者に丸投げする。あるデータが必要だとなると、ある程度作ったら、クレンジング(データから不正確な部分や欠損部分を検出して修正し、無関係な部分を削除するなどして「使えるデータ」にする作業)を外に投げる。外注するのが自分たちの仕事だと思っているんです。一度でもいいから、そのデータを中の人と共有してみれば、どこがどう使いにくいかはわかるはずなのですが、投げてしまうから見えてこない。業者との連携はもちろん、内部でも連携することがない。そういう現場にはデジタル化ってあまり関係がないんです。連携する相手がいるからこそ、効率を上げて便利にしたいという気持ちになるものなのですが、そこがないというのが、DXが進まない大きな要因だと感じます。

宇野 ありがとうございます。すごくドキッとしました。データを抱えていることが権力の源になっているから共有したくないというのは、官庁に限らず企業などいたるころにある話ではないでしょうか。実は外部はもちろん、内部とも連携できていないのではないかというご指摘は、とても鋭いと思います。

太田垣 私自身、長年受託開発の仕事をしてきたので、情報をオープンにするよりも、情報を出さないクローズドな世界で仕事をしてきました。しかし、下山さんと一緒に仕事をしていると、すべてにおいて考え方がオープンであることの大切さを教えてもらっていますし、自分自身、無意識のうちにオープンであることを心掛けるようになったと思います。

宇野 外注の際の自己完結性についても、実にその通りだと思います。こういうところがあるから、DXがなかなか進まないのですね。やはり皆さんDXをすごく警戒している。でも、お二人のお話を聞いていて強く思うのは、DX化とは可能性であるということ。データを共有してみれば、社会はもっと面白く、生き生きしたものになるし、自分の働き方や生き方だって変わっていく。そういうポジティブなメッセージを受け取りました。
 読者の中には、まだDXに対して消極的な方もいらっしゃると思います。そんな方たちに向けて、DXにはどんな魅力があり、生活をどう変えることができるのかをお話しいただけますか。

下山 データを使うと、自分の主張を客観的に説明できるというのが、とても大きなメリットだと思います。私自身、学生時代に出合った統計学のインパクトが強烈でした。ある課題に対して自分が抱いている深刻さや効果を、同じ程度に相手に伝えるのは至難の業です。でも、数値的な根拠を出して説明すれば説得力が増して、意見を伝えやすくなるし、人とのコミュニケーションもとりやすくなる。企業内、自治体内でも部署が違えば見えているものが違うし、意見が食い違うことも多いと思いますが、目標が数値化されていれば、現状認識を共有できます。データは共通言語として機能するのです。異なるステークホルダー(企業に対して利害関係を持つ人。株主・社員・顧客だけでなく、地域社会までをも含めていう場合が多い。)間の合意形成にも役立つと思います。

(中略)

宇野 仕事を合理化することによって、本当に自分のやりたかった生産的活動に時間を割くことができるというのは、本当にそうだと思います。エリートや専門家と言われている人たちだって、真にその能力を発揮しているかというと、意外とつまらない雑事に時間を取られているわけですからね。

太田垣恭子 & 下山紗代子 & 宇野重規

『自分で始めた人たち 社会を変える新しい民主主義』(宇野重規、大和書房、2022年)より


えへへ、市役所でアルバイトした時ファックス使ったなぁ…! でも、職員でない人間が相手市役所に送信や受信する手段としては、PC使うとなるとパスワードとか発行しないといけないだろうし、現時点では手軽だよなぁと思っていました。
「外注するのが自分たちの仕事だと思ってる」のところは、磯田道史さん(歴史学者)の江戸の後期と現代が似ているお話に通じます。生産的・創造的なことを何もしない武士が中抜き業者のようなことをしていたのだそうです。
マイナンバーカードを作れば健康保険証や運転免許証の提示の代わりになるかと思ったら、提示するものが単に増えただけの時期を経て、もっと便利な使い方ができるようになったらいいなぁ…!

It's very nice that the noticing people starts moving actually, and I want to be like this ☆

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?