「前向き」が辛いとき
こんにちは(*'ω'*)
平井堅さんの「ノンフィクション」に、♪~惰性で見てたテレビ消すみたいに 生きることを時々やめたくなる とあります。誰かがそう口にしたとき、簡単に「そんなこと言わないでさ…!」とは、慰めにも何もなりません。ただ、辛いんだなぁ…ということがひしひしとわかるだけ。
決して勝たないけれど、戦い続けていれば、負けないのです
しかし、生きていると、疲れるね。
かく言う私も、無に帰そうと思う時が、あるですよ。
戦いぬく、言うは易く、疲れるね。
然し、度胸は、きめている。是が非でも、生きる時間を、
生きぬくよ。そして、戦うよ。決して、負けぬ。
負けぬとは、戦う、ということです。(略)
決して勝てないのです。人間は、決して、勝ちません。
ただ、負けないのだ。
坂口安吾『不良少年とキリスト』
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生きていると疲れるね。ぼくも死んでしまおうかと思うことがあるんだよ。
そんなふうに心情を吐露(とろ)しながらも、彼は死にません。「生きる時間を、生きぬく」のです。
「戦っていれば、負けないのです」に、救われたようなきもちになる人は、人生というものの厳しさを実感している人でしょう。「とにかく物事の明るい面だけをみて、毎日笑顔で過ごしましょう」に類似したことが書いてある嘘だらけの人生指南書が好きな人には、ぴんとこないかもしれません。
「人間は、決して、勝ちません、ただ、負けないのだ」という、人を煙(けむ)にまくような一文に、それでも胸うたれて不思議と勇気づけられるのは、ここに安吾の願いを感じとるからでしょう。
それは、「人間を信じたい」という、痛いほどに切実な願いです。
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◆坂口安吾で一番有名なのはやはり『堕落論』でしょうか。「人間は生き、人間は堕ちる。そのこと以外の中に人間を救う便利な近道はない」。『続堕落論』もいいですね。「たえがたきを忍び、忍びがたきを忍んで、朕の命令に服してくれという。すると国民は泣いて、外ならぬ陛下の命令だから、忍びがたいけれども忍んで負けよう、と言う。嘘をつけ!嘘をつけ!嘘をつけ!我等国民は戦争をやめたくて仕方がなかったのではないか」。……しびれます。
山口路子
『逃避の名言集 特に深刻な事情があるわけではないけれど私にはどうしても逃避が必要なのです』(大和書房、2019年) CHAPTER 1 「前向きに生きる」から逃れたい より
「前向き」ということが、ただただ辛いときがあります。「後ろ向き」で何がいけないのか。一寸先は闇、なら、前を向かず後ろを向いて、いままで自分なりに踏みしめてきたことでできた道のようなものを自分の糧にして、足元にも注意を払って進むほうがよほどいいのではないか。そんなふうに感じることもあります。全方位型!?
ちなみに、「ノンフィクション」2番では、♪~消えそうな炎 両手で包むように 生きることを諦めきれずにいる とあります。そうやって逡巡すること、それこそが生きているということなのではないかとも感じます。
If you keep struggling, you never lose ☆
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