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日向坂46「君しか勝たん」個人PV感想:[TYPE-A]編

前回のnoteでは5thシングル「君しか勝たん」収録楽曲と歌番組について、率直に感じたことを述べた。今回は、シングルCDのタイプA~Dに収録された22人の個人PVを考えていこうと思う。

個人PVという文化は、日向坂を追いかけるようになるまで知らなかった。しかも、時々今泉力哉や湯浅弘章みたいに名の売れた映画監督が作品を手掛けることもあるらしい。一人ひとりが最も輝く瞬間を記録するなんて、素敵な企画だと思う。しかも今回の「改めまして、はじめまして」は本人が原案らしい。セルフプロデュース力が試されるので簡単な試みではないのだけど、その分、どのPVも「らしさ」にあふれているし、「そうくるか!」と驚かされる作品もあって十人十色だった。それではさっそく内容を見ていこう。


[TYPE-A]収録

齊藤京子「死んじゃうくらい、抱きしめて。」

いきなりトップクラスに好きな個人PVが登場。映像版「とっておきの恋人」の声も多いが、本人が全くその通りにオーダーしたらしい。どちらかというと別れたあとの走馬灯みたいで、むしろ見ているこっちが「死んじゃうくらい」に切ない気持ちになる。僕も勝手に齊藤京子にフラれた気になって感傷に浸ってしまった。本当に「キョコロヒー」のあの人と同一人物なのだろうか(料理のパートになった途端、目がガンギマリになっていたが)。松田聖子全盛期の80年代アイドルソングを思わせる清楚な雰囲気の曲も最高。個人PVで終わらせるにはあまりにも勿体ない。ふだんの曲だとキーが低めのパートを任されることが多い彼女だけど、じつは高音がとても澄んでいてきれいなのだと気付かされる。ミックスボイス(地声と裏声の混ざった歌い方)という技法らしい(ブログで言及してます)。しかし、なんでその強みを個人PVで知ることになるんだ。お金も時間もCD収録曲の方が掛かってるはずなんだけどなあ…。


高瀬愛奈「ホントのワタシ。」

最近「日向坂で会いましょう」でも絶賛フォーカス中のまなふぃ。去年は冠番組でおたけ、みーぱん、なっちょの一期生トリオが覚醒し、そのまま外番組の出演や楽曲のポジションにまで良い影響を及ぼした。あとはまなふぃだと言わんばかりにみんなで彼女を押し出そうと頑張っている。彼女はどちらかというと冷静沈着で、肝が座っていて、だからその分、他のメンバーみたいに感情をそのままに表現することがあまりない。僕はみんなが動揺したり、ぐちゃぐちゃになって泣いたりするときでも、つねに落ち着いている彼女がとても好きだ。本人もそのポジションであることを意識しているらしいが、チームにそういう「動じない」ひとがいるだけで、まわりのみんなは本当に助かる。

「アイドル」として見たとき、その良さはストレートに伝わらないことも多いかもしれない。外番組だったらかとしや丹生ちゃんのような表情筋おばけ(褒めてる)のほうが重宝されるだろう。そこがすごくもどかしい。しかし、本人も忸怩たる思いを隠さず、メッセージやブログでは素直に悔しさを吐露する。本当は熱い想いを秘めた人なのだ。「ホントのワタシ。」はそんな彼女の「爆発」が描かれた個人PVである。予告編だとその良さは伝わりにくいものの、全22作品のなかでもトップクラスに感動的である。どこまで本人の発案なのかはわからないが、たしかに、これは「まなふぃ」ではなく「高瀬愛奈」の個人PVと言えよう。柿崎芽実の亡霊を追いかけるオタクたちに嬉しい小ネタも注目。


宮田愛萌「私たちの未来」

ショートカットに変身してビジュ爆発した愛萌さん。「もしアイドルにならず、普通の大学生活を送っていたら…」というテーマ。アイドルの「IF」は度々描かれる題材で、西野七瀬の卒業曲「帰り道は遠回りしたくなる」のMVは名作だが、今回の個人PVは「普通」が奪われてしまった世の中で、期せずして重い意味を持った作品になったと思う。「誰かにとっての普通は、私にとって特別でした。」のコピーがとても良い。叶えられなかったありきたりな日常を、個人の表現の場で実現する。彼女はどんな想いでアイドル活動に挑んできたのだろうか。ああ、こういう日々に憧れがあったのかなあと思うと、なんとも微笑ましく、また、愛しい気持ちが芽生えてくる。

歌声もいい。彼女は歌にあまり自信がないらしく、謙遜するような言動が多いけれど、僕は宮田愛萌にしか描けない世界、彼女ならではの情緒があると思った。平凡な大学生活を送るというミニマムなよろこびに満ちたこの映像に、どこか儚げでフラジャイルな美しさをもたらしているのは、ほかでもない彼女の歌声だ。これはふとしたときに見返したくなる個人PVかもしれない。


佐々木美玲「みーぱんの目指せ!ドッグトレーナー」

バラエティ番組のロケ企画のような個人PV。まなふぃや愛萌があくまで「高瀬愛奈」や「宮田愛萌」であろうとしたのに対し、こちらはアイドルとしての「みーぱん」の色が強い。そうきたか!みたいな驚きはないけれど、みーぱんが大好きな犬とたわむれる姿を見ることができる。彼女はもう存在そのものが輝きだと言っていい。梅雨入りのブログで「いいお米が育ちますように〜」はみーぱんにしか書けないだろう。とにかく彼女の魅力を浴びよう!という企画なので、あまりつらつらと内容を説明してしまっても野暮だ。ぜひ本編を見て、みーぱんワールドに浸ってほしい。


山口陽世「ぱるよの星」

舌っ足らずなちいさい女の子とごついおっさんが並んでいる絵面だけで面白い。若干予告編が出オチだった感は否めないものの、本編もいい意味で非常にくだらない。「Tomorrow is another day」はラミレスが監督時代によく言っていた言葉だが、こんなの野球ファン以外知るはずがない。桑田真澄の復帰登板へのオマージュや「ロッキー」風のパロディもある。いったい誰に向けて作っているのかは謎だ。

「HINABINGO!」で小籔千豊のとなりに立つとメンバーが3割増しでかわいく見えたみたいに、ラミレスと並ぶと山口陽世のスタイルの良さと細さが際立つ。本人はどういう原案をスタッフに提出したのだろう。ふだんサバサバとしたイメージのある彼女だからこそ、こういう全力の悪ふざけ企画でがんばっている姿が無性に可笑しい。ともするとオトナが勝手にはしゃいで作ったように見えがちなテーマだが、あくまで山口陽世のかわいさを引き出し、かつ、新たなキャラを与えて幅を広げるための個人PVになっているところに、僕は作り手のバランス感覚を見た。


金村美玖「水色、美玖色」

年始の「プレバト」単独出演や「余計な事まで」のラジオ仕事で、確実になにかを掴んだ気配のある金村美玖。本当はキャプテンやかとしのようにチョケたいタイプの人なんだと思う。けれど、前に出るにはあまり自信がなさそうだったし、自分だけのカラーがないとずっと悩んでいたようだったけど、ここに来て一つひとつ成功体験を積み上げ、肩の力が抜けたように思う。「バズリズム」でボソッとつぶやいた「マジックハンド」のツッコミが、あのバカリズムにさりげなく拾われ、さらに採用までされていたのにはなぜか僕が感動してしまった。

「水色、美玖色」はここ最近の彼女が掴んだもののひとつ、「アートキャラ」を全面に出した個人PVだ。「少女とレディのまんなか」のフレーズが出てくるように、金村美玖のみずみずしくあどけなさの残る可愛らしさと、大人っぽい色気の気配(あくまで気配)のマーブル模様を、まるで彼女のあたまのなかを覗いているかのような映像でカラフルに表現した。キャンバスをペンキでベタ塗りするシチュエーションはベタだけど、丁寧に色塗りするのではなく、おりゃーっと勢いできれいな模様を描いてしまうところに、19歳(の代)という年齢のリアリティがあると思う。いまこの瞬間の彼女の魅力を閉じ込めるのに成功している。アイドルの個人PVとして、とてもいい出来なのではないだろうか。


今回はここまで。意外と一つひとつのコメントが長くなってしまったので区切ることにした。次回はTYPE-Bの感想を書こうと思う。

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