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東京では桜の開花宣言が出たそうだけど、うんと北にある僕の家の周りはまだまだ、雪が溶けきらない気温だった。
春とはほど遠い四月。
別れ際彼女が笑った『また桜が咲く頃に会いたいね』と言ったのは、僕らが出会ったこの土地のことだったのか、はたまた、僕らが三年を過ごした東京のことだったのか。
何にせよ、彼女はもういない。
カチカチに固まった雪を蹴って、大きな塊をひとつ手に取る。
持っていられないほど冷たいこの氷をあえて握りしめ、手の中で溶かし切れたら、桜が早く咲いたりしないだろうか?
妄想の中で、苦行と幸福の等価交換を試みる。
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