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『アポロストリートの亡霊』と言えば、子供にとってはちょっと怖くて楽しい怪談だし、大人にとっては都合良く説教できる便利ツールだった。
ダメと言われていることはしてはいけない、という、シンプルな教訓が根底にある。
その教訓を子供に押し付けたい親。
その教訓を時限爆弾にダメな遊びをしたい子供たち。
何かに怯えることができるのは、それがどう怖いかを知っているからだ。
マッチをこすったことがない子供に、火事を恐れることはできなかった。
アポロストリートが燃えたあの日、幼い僕の心を占めていたのは、夜のメリーゴーランドをいつまでも見ているようなふわふわとした多幸感だった。
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