ツイッターで書いた妄想物語まとめその21

10/31

今年もあいつが来る――
僕は竹篭に重量級最中を詰め込み、玄関前で待機していた。
去年は、黒くてぬちゃぬちゃしてお腹に大きな口がある化け物が現れて、上生菓子と菓子楊枝を投げつけて退治した。でも同じ形態でくるとは限らない。
夜中になりアパートのドアが、小さく、しかしすごいスピードでドコドコドコドコ……と叩かれ始めた。
徐々に音量を増していく。ドアが割れそう。僕は身構える、しかし
「ヴァァアアアアア!!」
入ってきたのは玄関ではなく、台所の換気扇。灰色のヘドロを垂らしながら侵入してくる
小さな目が無数についていて、僕は喚きながらはちゃめちゃに最中を投げつけたが、ぐるりと向いた背中に吸収されてしまう。
僕は化け物の正面へ飛び込み、悪臭に耐えながら最中を千切っては目玉に埋め込んでいった。ぶちゅぶちゅとした感触で鳥肌が立つ。
最後の一つの目が急所だったらしい。押し込むと同時に勢いよくトルネードしながら、化け物はシンクに吸い込まれていった。
11/3
(毎年11/3は「晴れの特異日」といって、統計上高確率で晴れになる日。理由は分かっていない)

引っ込み思案の男子高校生「あしたは11/3だから……たぶん、絶対晴れると思うから……コスモス見に行きたくて……いや、コスモスは終わってるかも。あっ、紅葉? かな。とにかく、あしたはたぶん絶対晴れるらしいので……」
11/5 寝る前に書いたと思しき怪文書

僕はツイッターの裏アカに日記をつけるタイプの人間で、もちろん鍵にしているうえに、自分ひとりのツイッターサークルに公開しているので、絶対に誰にも見られることはない。公開範囲をツイッターサークルに切り替えるというひと手間でアカウント間違いを防げるし、投稿後も公開範囲が違うツイートは色が違うので、ダブルチェックになる
そんなに厳重にしている僕の私生活がなんなのかといえば、それは惑星間エクスプレスの車掌なのである。きょうも、たくさんの秘密を乗せてミルキーレールウェイを走る
速度を上げ、僕の目に入る星々のきらめきが、純度100%の潤いをもって僕の心の中に入ってくる。そういうことを、鍵をかけたツイッターの、さらに柵の中に書き留めている
ときに、秘密というのは、意外なかたちで暴かれるものである。例えばそう、突然美女が運転席にやってきて、僕の肩にあごを載せうっとりと微笑むとか
(了)

※惑星間エクスプレスは、2021年の架空のあらすじに出てきます。こんな話じゃなかったけど
11/6

「この世界では、ほとんどのひとが会ったことないひとだけど、『1回した会ったことないひと』も多いことに気づいたよ」
「なんなら、毎日たくさんの『1回しか会ったことないひと』を量産している。それが生きているということなのかもしれない」
「そういえば、袖振り合うも多生の縁だとか、DSのすれ違い通信だとか、会話も交わさない一瞬を出会いと呼ぶような心持ちが、日本語の概念にある気がする」
「君と僕は会っている?」
「僕は君と会っただろうか」
「初対面という言葉はどう処理すればいい?」
「君とは対面したこともない!」
「対面していない!」
「「僕らは出会っていない」」
11/10

「俺は歯の浮くようなセリフを言う奴になりたかったんだーーーー!!!」
プールサイドにできた水たまりを裸足でばしゃばしゃ踏む、そのギリギリまでまくりあげたハーフパンツは太ももを包む輪っかのようになってるし、なんていうかお前、残念なイケメンだな
(青春のひと幕)

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