ツイッターで書いた妄想物語まとめその21 4 奥野じゅん 2022年11月10日 01:15 10/31今年もあいつが来る――僕は竹篭に重量級最中を詰め込み、玄関前で待機していた。去年は、黒くてぬちゃぬちゃしてお腹に大きな口がある化け物が現れて、上生菓子と菓子楊枝を投げつけて退治した。でも同じ形態でくるとは限らない。夜中になりアパートのドアが、小さく、しかしすごいスピードでドコドコドコドコ……と叩かれ始めた。徐々に音量を増していく。ドアが割れそう。僕は身構える、しかし「ヴァァアアアアア!!」入ってきたのは玄関ではなく、台所の換気扇。灰色のヘドロを垂らしながら侵入してくる小さな目が無数についていて、僕は喚きながらはちゃめちゃに最中を投げつけたが、ぐるりと向いた背中に吸収されてしまう。僕は化け物の正面へ飛び込み、悪臭に耐えながら最中を千切っては目玉に埋め込んでいった。ぶちゅぶちゅとした感触で鳥肌が立つ。最後の一つの目が急所だったらしい。押し込むと同時に勢いよくトルネードしながら、化け物はシンクに吸い込まれていった。11/3(毎年11/3は「晴れの特異日」といって、統計上高確率で晴れになる日。理由は分かっていない)引っ込み思案の男子高校生「あしたは11/3だから……たぶん、絶対晴れると思うから……コスモス見に行きたくて……いや、コスモスは終わってるかも。あっ、紅葉? かな。とにかく、あしたはたぶん絶対晴れるらしいので……」11/5 寝る前に書いたと思しき怪文書僕はツイッターの裏アカに日記をつけるタイプの人間で、もちろん鍵にしているうえに、自分ひとりのツイッターサークルに公開しているので、絶対に誰にも見られることはない。公開範囲をツイッターサークルに切り替えるというひと手間でアカウント間違いを防げるし、投稿後も公開範囲が違うツイートは色が違うので、ダブルチェックになるそんなに厳重にしている僕の私生活がなんなのかといえば、それは惑星間エクスプレスの車掌なのである。きょうも、たくさんの秘密を乗せてミルキーレールウェイを走る速度を上げ、僕の目に入る星々のきらめきが、純度100%の潤いをもって僕の心の中に入ってくる。そういうことを、鍵をかけたツイッターの、さらに柵の中に書き留めているときに、秘密というのは、意外なかたちで暴かれるものである。例えばそう、突然美女が運転席にやってきて、僕の肩にあごを載せうっとりと微笑むとか(了)※惑星間エクスプレスは、2021年の架空のあらすじに出てきます。こんな話じゃなかったけど11/6「この世界では、ほとんどのひとが会ったことないひとだけど、『1回した会ったことないひと』も多いことに気づいたよ」「なんなら、毎日たくさんの『1回しか会ったことないひと』を量産している。それが生きているということなのかもしれない」「そういえば、袖振り合うも多生の縁だとか、DSのすれ違い通信だとか、会話も交わさない一瞬を出会いと呼ぶような心持ちが、日本語の概念にある気がする」「君と僕は会っている?」「僕は君と会っただろうか」「初対面という言葉はどう処理すればいい?」「君とは対面したこともない!」「対面していない!」「「僕らは出会っていない」」11/10「俺は歯の浮くようなセリフを言う奴になりたかったんだーーーー!!!」プールサイドにできた水たまりを裸足でばしゃばしゃ踏む、そのギリギリまでまくりあげたハーフパンツは太ももを包む輪っかのようになってるし、なんていうかお前、残念なイケメンだな(青春のひと幕) ダウンロード copy #小説 4 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? 記事をサポート