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「え……なんもなくないですか?」
「なんもないな」
 あまりにも何もなさすぎた。
 探偵助手の仕事を始めてまもなく半年が経とうとしているが、こんなにも手掛かりがない証拠写真が、かつてあっただろうか――いや、無い。
「この人、何をもってしてこれを『証拠』と考えて送ってきたんでしょうね」
 無駄なダブルクリックで拡大縮小を繰り返しても、定規で引いたような水平線から得られる情報は、特にない。
 純然たる風景写真――僕はそう言い切って、この画像のことは忘れようとした。しかし。

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