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連なる山々の輪郭を、2Bの鉛筆で、丁寧に写し取る。
雲でぼやける裾野は、イマジネーションで補完した。
完成したものを眺めてみると、ヘロヘロの斜線が並んでいる感じ。
奥行きって大事なんだなと思いながら、スケッチブックを依頼者に見せた。
「旦那さんが行方不明になられたのは、この手前から二番目の山の……このあたりですね」
「なるほど……これでは、絶望的ですね」
引きつった笑顔が痛々しい。
彼女の中ではもう、未亡人になる準備ができているのだろうか。
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