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ツイッターで書いた妄想物語まとめ23

2/28
「もしも、書店で定価680円の本を手に取った瞬間、急にその著者が現れて『その本を読んで、面白かったら100万円ください。面白くなかったらこちらから100万円お支払いします』って言われたらどうする?」
「いや、普通に定価で買うよ。面白さを期待して買うのに、面白かったら大金払わなくちゃいけないなんて、そんな不条理にわざわざ首を突っ込む意味が分かんない」
「面白かったとしても、面白くなかったと言えば100万円もらえるんだぞ?」
「嫌だよ。本の著者に向かって偽レビューするなんて、食べログのサクラの闇バイトより嫌だ」
「そんなものがあるのか」
「知らない。適当に言った」
僕らは押し黙る。ややあって彼は言った。
「俺なら買う。そして面白くなかったと言い、100万もらう」
「すごい面白かったらどうするんだ。メディアで大絶賛されてたら、君の嘘はばれるんだぞ」
「なに、俺には刺さらなかった。それでいいだろ?」
「……」
強い君が羨ましい、なんて言えない。
(了)

3/11
いつからか、春めいてくると、冬の間に失ったものや尽きたものを置いて次へ行ってしまうような、少しの寂しさを感じるようになった。
凍って止まってしまったそれをその場に残して、あたたかく動きやすく軽やかな春に、僕らだけが進んでしまうような気持ちになる。
生きている限り、一定の速度で進むベルトゴンベアに乗せられているから、止まったものから遠ざかっていくのは仕方がないのかもしれない。
それでも僕は、気温の上昇を感じながら、「寒いところに置いていってごめんね」と、少し謝りたい気持ちになるのである。
あたたかくて寂しいな、と思った。
冬の間に置いてきたきみが、過去になってしまうね。
(了)

3/18
「どうしたお前。そんなにガクガク震えて」
「こ、怖いんだ……花粉の季節が終わるのが」
「なんでだよ、てかお前花粉症じゃないじゃん」
「花粉シーズンが終わったら、マスクしてる言い訳がなくなるんだよ?……こんな、マスク外してもいい世の中になっちゃって、それでもまだしてたら『あいつひよってんの? みんなが外さないから外せないチキンなの?www』みたいに思われるかもしれないでしょ」
「はあ? そんなこと言う奴いねーよ」
「いたらどうするんだ! いまならまだ、『いやいや、人に合わせてるとかじゃなくて、花粉症なのでマスク外せないんです〜(^-^)』とか言えるけど。花粉が終わったらもうそれはチキンレースじゃないかっ。2年以上ここまでかからずに奇跡貫いてきたのに、緩和ムードになった瞬間かかったら恥ずかしいじゃんっ!」

僕の震えは止まらない。彼は肩を震わせて笑いを堪えている。
ひ、ひよってないから!
(了)

3/16
電気を消す寸前、ついハリ3の名前を呼んでしまい、パチンとスイッチが鳴り部屋が暗転するのと同時に、じゅんすたがくずおれた
電気を消してお布団に入っても、ケージの中でゴソゴソする音はしない。片付ける勇気が無くてお皿にあの日のごはんが入ったままだが、食べる音もしないのだ
でもずっとすきだ

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