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 男は自信満々に、2杯のコーヒーを僕の前に置いた。
 もちろん、歓迎の意味ではないだろう。
 僕はおずおずと、それぞれのカップに口をつけた。
 豆の味の違いなんて、さっぱり分からない
 思わず眉をひそめながら、もうひと口。
 足りない語彙で食レポをすることほど虚しくなる行為が、他にあるだろうか。
 僕は3口でそれを辞し、カップをテーブルの隅に寄せてため息を吐きながら、自分の運が尽きるのを感じた。

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