新輝戦決勝と飯田さんの話

29期の最高位決定戦の話をしたいと思います。
最終日、僕は採譜をさせてもらっていました。
その年の決定戦は最終戦のオーラスを迎えて、尾崎さんが圧倒的リード。
ラス親の宇野さんが連荘して10万点差くらいをまくれるかどうか?くらいで他の二人は優勝条件なしでした。
僕は「ここからが長いんだよなぁ…」と思っていました。
なぜならこうなった時点であがれるのは実質尾崎さんと宇野さんの二人のみ。しかも尾崎さんの立場からすると親への放銃は避けたいので目いっぱいの手組にはしづらい…
しかしオーラスの7巡目くらい
「ツモ 400-700」
手を開いたのはトータルラス目の飯田さんでした。ツモのみのテンパネ。
こうして29期の最高位決定戦はトータル4位の4位確定アガリで幕を閉じたのでした。
僕はこの時、このアガリの意味がわかりませんでした。
競技麻雀というのは自分の利益のみを追求してうつべき。可能性はほぼ0とはいえこの状況ならノーテン罰符をもらい続けて優勝条件が出るのを目指すべきというのがこの日までの僕の考えでした。
でもよく考えてみたら、そうやって子供二人があがらなかった結果、宇野さんが連荘して尾崎さんをまくってしまう…それって本当にいい決定戦か?
今季の尾崎さんの麻雀は本当に素晴らしいものでした。僕以外の観戦者も対局していた4人も同じ気持ちだったのではないでしょうか?
なので飯田さんは普通に手を進め自然にあがりの形になったのであがった。
「尾崎君、最高位おめでとう!でも来年は負けないからな!」
そんな飯田さんの声が聞こえてくるようでした。
このように僕の競技麻雀観を変えたこの決定戦。
僕はどんなドラマチックな逆転劇とかよりも一番好きだし競技麻雀として美しいなと思っています!

さてさて、先日新輝戦の決勝の最終戦、実は似たような状況になりました。
トータルトップの粟野さんがラス親なので実質最終局。僕は現状3位で順位が変わる条件は4位の伊藤さんへの三倍満以上の放銃のみ。2位の山中さんの優勝条件は跳満ツモとそこそこ現実的…
僕は普通に手を進め役アリテンパイ。もちろん心中はめちゃくちゃ複雑であがりたくはないのですが、あがるつもりでいました。
あがりに向かわなければ山中さんに利する、あがりに向かえば粟野さんに利する。なら自然に打つ!
「麻雀に迷惑じゃない一打なんてないんだよ」ってやつですね。

オーラス僕は普通に手を進めながら飯田さんの事を考えていました。
飯田さんの麻雀はこうやって僕の中で生きている。
僕も誰かの心に残るような麻雀打ちになりたい!
そんな事を改めて考えさせてもらった決勝戦でした!
皆さんご視聴・応援ありがとうございました!
粟野さん優勝おめでとうございます!
これからも最高位戦並びに今村順平を宜しくお願いします!

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