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Nomaが東京にやってきた

あのNomaが東京に店を出す、というので予約した。それが本当にNomaなのか、何故東京なのかを調べたのは、その後、値段を知ったのは更にその後。まあ、若干冷や汗かいた。

世界一予約が取れない、なんて言うが、大事なのはそんな事より、Nomaが起こしている確かなムーブメント。こんな話も素敵。ただのレストランでは無く、新しい食文化の旗手なのだ。

そんな中、一回は誘い一回は誘われ、オープン仕立てに2回も行けた。オープン仕立てのスタッフの緊張や、お客さんのフワフワした空気も独特。
お客さんは半分以上外国人。スタッフはほぼ全員が英語ネイティブ。日本語の方が苦手なレベル。流石。

1皿目「沖縄スナックパインとシトラス」の写真と共に大事な事を。
この店はInua。NomaのNo2で10年以上働いていたThomas Frebelが独立して作ったお店。バックアップをあのKadokawaがしている為、店もKadokawa本社の中にある。不思議。(気にする人の為に、旧Kadokawa、ドワンゴでない方)

2皿目「枝豆とルッコラの花をヤリイカのダシで」
池に浮かぶ花の中には枝豆が、とでも言うような美しい一皿。このダシがめちゃ美味しい。

3皿目「味噌と島バナナ、海藻のクリスプパイ」
ここまで沖縄食材が大分フィーチャーされている。しかもかなりマニアック。Thomasに「日本中回ったの?」と聞くと「朝は沖縄で夜は北海道みたいなスケジュールで」と。凄い情熱。

パイを横から見る。味噌は強すぎず香りと食感。バナナを引き立てるのが海藻というのが、普通出てこないインスピレーション。

とても好きな一皿。「赤いフルーツと蜜蝋のジュース」タイトルと中身が全然合ってない!
スイカと、謎の果物ピタンガ!なのか?な?既に食感以外は別物。上の花はパクチー!やフェンネル。Inuaの料理は見た目以上に香りに表現を感じる。全ての皿が「その食材が取れた環境を再現しました」とでも言うような幻想的で神秘的な香り。

5皿目「湯葉に包まれた野生の花」
花、花、とにかく花。ここまでもバナナパイ以外は花!
「このレストランは花をフィーチャーするの?」と聞くと「いや、今が偶然旬の花が多いだけだよ」と。花が旬?他の店でこんなに花出すとこ見たことない。「1ヶ月程で終わってしまうけど」お、、、おぉ(スタッフの苦労が浮かぶ)
ソースはホースラディッシュをアレンジしたもの。香りはほのかで上品、辛味はない。ホースラディッシュってこんな使い方あるのかー。

ここでこんなものが。「舞茸を5日間熟成させた後、3日間コールドスモークしたものです」
なんて手間!その手間!ほんとに必要かどうかは恐らくThomasにしか違いがわからないレベルの手間。この作家性に触れたくてきたんですよ。変人、有難や。

舞茸を切って「松と味噌」をアレンジしたスープをかけて食べる。このスープ激ウマ。そういえば香りはいつのまにか「華やかさ、神秘」から「大地、包容力」に。

そういえば、公式の写真と共に、ペアリングの話を。
ビール、ワイン、日本酒などの酒ペアリングとノンアルコールのペアリング2種類ある。(値段はそれぞれプラス1万円だぞ!気をつけろ!でもめちゃうまいぞ!)
なものから、甘味で包むものまで。
初めての方はこのジュースペアリングが、多分お酒よりもおススメ。全てオリジナルだし、ペアになるジュース毎に、料理と合わせて物語のチャプターを感じます。あ、森の中だな、今海に入り、難しい時間を迎えてるな、花と共に開放感が!などなど。
最初はこんぶ茶、次にルバーブ、そしてパプリカの燻製、酸葉(すいば)とパッションフルーツと、一杯ごとに方向性が全然違う。酸味で突き放したよう。
こういうのが好きな人には最高のアート鑑賞時間。

そのルバーブジュースと合わせるのがトロトロの茄子。くるみと、さっきも出てきたホースラディッシュ(今度はそのもの!)が乗せられ、カボチャの種から抽出したソースをかけたもの。
薄い木のスプーンでもさっくりと切れ、くるみの優しい甘さとホースラディッシュの透かした香り(ほのかな辛味)が複雑な味わいをくれる。ソースも含めて甘めなので、これまで多かったさっぱり系から、舞茸以降チャプターが変わった事に気づく。新しい場面の表現だ。

これなんぞ?と見た感じは思うが、どの皿よりもイメージが湧きやすい。「豆腐にタラバガニを乗せたもの」ソースは昆布から取れたケルプバター。
今日二回目のケルプの香りがとても良い。茄子から海に入ったものの、味わいには関連性を感じる。次も海、もっと海!

謎の一皿「海藻のピクルスとウニ」完全に海辺の見立てで、石川県から取れた様々な海藻を食べながら時々ウニをすくう。口直し感もある味控えめ、コンセプト強めの皿。

ここからメインに向かう雰囲気が出来上がる。初めてナイフが登場し、ジュースがさわやかなルバーブから「パプリカの燻製」に。スモーキーな香りが海から上がった事を伝えてくれる。
そこで出てきたのが10皿目「バナナの葉で包んで焼いたえのきのステーキ、卵黄ソース」上には黒トリュフ。これまでの爽やかさから俄然しっかりとした味わいに。ジュースとよく合う。。。

分厚いナイフを出しておきながら、柔らかいえのきでフェイントかけられたと思うと、次が更に凄かった!
タコ!丸ごとタコ、のみ!後からもらうメニューに記載が無いのは日替わりものだから?えのきがスモーキーでしっかり、なら、このタコはもう、重みがあり茅のみのソースはどっしりとした味わい。この味の振れ幅が挑戦的すぎる。「味の種類を全部教えてあげますよ」と言わんばかりの。
隣のアメリカ人4人組はかなり怪訝な顔をしており、Thomasが自ら説明(説得)していた。タコは今でも欧米では食べる人少ない。半分以上欧米客の店なのに、そういう意味でも挑戦的。客に媚びる気は一切無し!頑固でドSなThomas。

因みに2回目は、こちらの「金目鯛とアーティチョークのグリル」に変わっていました。「君は2度目だから1つでも違うものを」と。ありがてぇ!
皮パリパリでウマウマ。

そして、行った人全員から激しく賛否両論を巻き起こしているメインの登場。
メインディッシュ。主役。看板。クライマックス。魚介を使いながらもメインの為にマットに仕上げてきて、一体どんな肉がどんなソースで出てくるのか!!

と思いきや、完全に、完全にドS。完全にアーティストなThomas。出てきたのは「ゆめぴりかと蜂の子、ハマナスを添えて」つまり、「昆虫ご飯!」話題沸騰でオープンした最初のメインが「昆虫ご飯」
なんじゃそりゃゃゃゃゃゃああああ!

アップ。見事に、蜂の子、見たまんま。「揚げたのと茹でたの、2種類入ってるんだよ!(ドヤっ)」
何という勇気と頑固さ。普通に褒めてもらう気は全く無し。日本の牛でも使っておけばという逃げは一切無し。
余りに気になったのでスタッフにこの事を聞きまくり。面白い話が聞けたので後で。

「お代わりもあるのでー!」といいながら混ぜてよそってくれるスタッフ。1度目の同行者はギブアップ。1人で2人分食えました。
この昆虫ご飯、めちゃうまいです。はちゃめちゃに美味い。毎日食べたい。おにぎりにして持ち帰りたい。
味はバターソースがかなり甘くクリーミー。蜂の子自体は臭みも苦味もなくむしろ甘い。バラの花がとても良い香りで「甘く華やかな香りに吸い寄せられた蜂」という場面を完全に表現しきる。口直しのピクルスも、花、花、花。

ピクルスをウサギに並べ替えたのはスタッフではなく同行者。アートにはアートで返す。

最後まで「季節の花」を中心とした植物の表現を保ちながら、海山森川どこからの食材も楽しませ、それぞれの皿が全く別方向の味わい方。Thomasが日本で出会ったあらゆる食材や自然環境への感動を表したような、非常に感傷的でアーティスティックなコースでした。恐らく今までの中で一番高いコースでさたが、僕はその価値は十分にあると思っています。

デザート2品はラウンジへ席を変えて、飲み物と一緒に。

「豆乳、トウヒとサルナシ」
豆乳をサクサクとした冷たく無いシャーベットのようにしたものに、サルナシ(ワイルドキウイ)とトウヒというマツ科の植物。蜂の子もそうだがトウヒも北欧ではポピュラーな食材。これまで日本食材が多かったが、とても北欧ぽいデザートに。
ペアリングは酸葉(タデ科植物)のジュース。とてもあっさりとして、先程の蜂の子ご飯のインパクトをお腹に残したままでも食べやすい。コースは「胃の中にどう貯めていくか」の作業でもあるので、この組み合わせの妙は胃に入っても楽しい。かなりの量食べたのに、少しも辛くならない。肉が入るとこうはいかない。

最後の品「カボチャの種と黒麦麹」
最後はしっかりとした食感ながら、けして甘くない一品。甘さの代わりにカボチャと麹の香りが口から鼻に抜けていく。
写真撮り忘れたが、1度目はヒマラヤグリーンティー、2度目はコーヒーを。苦手でなければコーヒーおススメ。苦くない代わりに酸っぱ目なのがとてもユニーク。パティシエはもちろん、バリスタも半端な仕事はしていない。

ところで、やはり話題の店、人、だけあり、お客さんは皆写真を撮りたがる。忙しいので断るどころか、毎回スタッフ全員が集まって一緒に写る様子が、とてもかわいい。良いチームなんだろうなあ。
その素晴らしいスタッフから聞いた裏話、そしてまさかのバックステージパスを手にして舞台裏へ行けた後編はこちら!

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