世界一小さなラブレター
高校の休み時間。
教室の中は皆の声で騒がしかった。
誰かに廊下から名前を呼ばれた私は教室の外に出た。
そこには他のクラスの真面目くんが3人、顔を見合わせてニヤニヤして立っていた。
何々? と思っていたら
その中の一番背の低い君が何かをくれた。
"これ読んで" と手渡されたそれは、小指の爪ほどに小さく折られた紙切れだった。その上に鉛筆で書かれた文字は(お手紙)とやっとで読める。
ちっちゃい。まるで10円おみくじ。
教室に戻ってその幾つにも折られた(お手紙)を開いた。ノートの切れ端に、これ又小さい字で "僕とつきあってください" と書いてあった。
ラブレターか?
私は君の事はなにも知らないし、君が思ってるような女の子でもないと思うよ。
だから私はなんの返事もしなかった。
それから数年後、社会にでた私は親友と久々に会って食事をしていた。
お互いの職場や恋愛の話をしばらくした後、親友は言った。
"そういえば、隣のクラスにいた○○くん、覚えてる?彼、病気で亡くなったらしいよ"
私は絶句した。
あの小さなラブレターをくれた君が亡くなった?
はにかんだあの日の君の顔が目に浮かんだ。
一体、何があったの。
しばらくは君の事を考えたけど
やっぱり私は君のことを何も知らない。
そうだ、もしかしたら......。
私は地元の病院で働いていたので、受付に行って君のカルテをさがしてみた。
やっぱり、あった。来てたんだね。
病名には○○Ca? と書いてあった。○○癌の疑いという意味だ。
来院は1日だけ。大きな専門病院を紹介されたのだろうか。
会えなかったんだ。
私は君のカルテに、そっと手を合わせた。
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