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オトンと祭りの思い出

10月のオトンの娘訪問介護日記です。またまた長い日記になりますが、お付き合いいただけたら嬉しいです!

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10月に入りぐっと寒くなった。朝昼晩のオトンとのメールも「今日も寒いねえ。」で始まる。

私はある日の病院帰りオトンの家に電気ストーブを持って行った。

オトンはエアコンが苦手でなかなかつけてくれないのと、足元が冷えるから。去年持って行ったセラミックヒーターは、乾燥するからと嫌いらしく、使ってくれなかった。
 
私はいつもすっぴんにラフな格好でオトンの家に行くのだが、病院帰りだったので、きちんとお化粧してオシャレしていた。
私を見て「誰かと思ったよ!」とオトン。「失礼だなあ。」と二人で笑う。

「メダカも大きくなってエビも今日は顔を出してるよ。」
「もう水槽が小さいね、大きいのに替えないと。」
「今度お兄ちゃんが替えてくれるって言ってたよ。」
「それは良かったね!」
ニッコリ頷くかわいいオトン。

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(メダカと貝が増えて成長し、狭くなった水槽。一匹だけ金色!)

数日後は、オトンの散髪へ。

私はふんふーん♪と鼻歌を歌いながら、散髪セット、ミートボールと大根の煮物弁当、お土産をリュックと自転車のかごに詰める。
「オトン待っててねー!今行くよ!」
もちろん自転車は立ちこぎだ。

朝早く出たので午前中に家事と散髪を終えた。
とても機嫌良くピカピカのお風呂へ入るオトン。オトンもピカピカだ。
珍しく鏡を見つめている。
「どうしたの?」
「髭がねカミソリだときれいに剃れないからコレを使おうかと思って…。」
以前、兄がプレゼントした高性能の電気カミソリを取り出した。
電源を入れて「動かないなあ?」と呟いている。そりゃぁそうだ、充電していない。
「充電しておくよ。」
最近は以前より身だしなみを整えるのが楽しいようで私も嬉しい。  

お楽しみのランチタイムお弁当をぺろりと食べ、ゆっくりカフェオレを飲みながらニコニコおしゃべり。
「ストーブも朝晩つけていて暖かいよ、ありがとね。」オトン調子良さそうだな。

「そろそろ帰るね。スーパー寄って行くよ。」
「お父さんもスーパーに買い物行くからじゅんみはちゃん一緒に行こうよ。」

1月に電動自転車を買いに行って以来のサイクリング。(と言ってもスーパーまで自転車で5分) 
お天気が良くポカポカした空気の中、オトンと自転車を走らせる。

ああ、嬉しいなあ。一年前とは別人のように元気になってる。涙が出てきた。
スーパーで「またねー!」と言い別れた。

帰宅して、スマホのメモに書いておいた、オトンのおもしろ語録のメモを見る。

「お星さまキラッキラ」「かーい貝」「ほにゃら!」 

え?なんだこれ?覚えてない。オトン本当に面白いな。 

あ、そうだ、二人でメダカの観察をしている時、スマホで動画を撮ったらオトンは、てっきり写真だと思っていたらしく、メダカの餌やりについて熱く語る自分の動画を観て、志村けんさんの「だっふんだ!」みたいにくるくると手を挙げて
「ほにゃら!」と言っていた。 

仕事から帰宅した息子と動画を観て
「じさまは癒し系だね。」
とクールな息子が笑った。
(※じさまとは、息子が父を呼ぶ時の愛称。)

次の日の朝のメール。

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兄からも「お父さん、最近で最高に元気でした!水槽も大きくしましたよ。」とメールが来ていた。 
オトン良かったねぇ!

数日後、柔らかく煮込んだ手羽元のチキンカレー弁当を持ってオトンの家へ。

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メダカ飼育用の大きい水槽で楽しそうに泳ぐメダカたち。
オトンが幸せそうな顔で見つめている。動きが早くなって撮影が難しい。

温めたほっかほかのカレーを見て「スープゥーカレーェー♪」と喜ぶ。
「お父さん、ちょっと辛いけど大丈夫?」
「全然辛くないよ。美味しい。」
「ゆっくり食べてね、軟骨は硬いから残してよ。」 
気付いたら軟骨も食べていた…。

テレビで農家さんがそば粉を使ったすいとん風のお汁を作っていた。
「美味しそうだね!」と言うと
「昔はね、一生懸命お米を作っても殆ど年貢で取られちゃうから、白米は貴重でお正月くらいでね、そばを主食で食べる地域では、飽きちゃうからいろんな料理に工夫して食べた郷土料理だと思うよ。美味しいだろうね。」

食べ終わると「眠くなっちゃたよ。」とオトンがベッドに横になった。
掃除機をかけようと思ってたけどオトンがお昼寝してるので私もベッドの下のラグにごろっとした。
窓を開けっぱなしにしていたので、おひさまと優しい風でウトウトし、いつの間にか眠っていた。  

オトンがトイレに起きた音で私も起きた。父娘でお昼寝なんて小学生以来?
なんだか心もホカホカした。  
洗濯物が乾くまで二人でベランダから池を眺めていたら
「お父さんの子どもの頃は10月になると昼間でも寒かったのに地球温暖化なんだろうね。」
「そうだね。」
「『お会式』が終わると、本格的に冬が来たって思ったもんだよ。」
「『おえしき?』って何?」
「10月にやるお祭り。万灯(まんどう)や纏(まとい)を担いで、明治通りから池袋までねり歩くんだよ。はっぴを着てはちまきした大人達が笛や太鼓のお囃子に合わせて踊るんだ。」
「まんどう?」
「提灯が沢山ついたお神輿みたいなのを、竹の棒一本で持ち上げてドンツクドンドンツクって動かしながら歩くの。『チョイチョイチョイヤサ、チョイヤサノサッサ!』って掛け声かけてね。」
「へえーこんな感じ?」

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(ササッと書いたので自分でも見辛いメモで本当にすみません。下の方に写真があります。)

と頭の中のイメージを絵に描くとオトン細かく説明してくれた。
お祭り好きだった少年時代の父は、近所でやっていたお祭り「お会式」を毎年家族で観に行き、終わると
「もう冬が来るんだと少し寂しくなったもんだよ。」と話してくれた。
「今もやってるのかな?じゅんみはちゃん、携帯のインターネットで調べてごらん。」 
直ぐに調べると最近もやっているようだ。(ここ数年は感染症で中止らしい)

オトンとラグに寝っ転がってYouTubeで祭りの動画を観た。

「あー!これこれ!今もやってるんだね、懐かしいなぁ。」

万灯は、沢山の提灯が下がってその周りにはお花紙で作った桜に見立てた花がまるで咲いているようにフワフワと揺れていた。それを一本の竹で抱えた人が上下に動かし歩く。
その周りでは纏いを踊るように代わる代わる回す人達が何人もいた。

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「夕方、薄暗くなったら始まって提灯の明かりがきれいなんだよ。」
「きれいだし、賑やかで楽しそうだね。」
「久しぶりに観れて嬉しいなぁ。10月13日って、昔はそんなに早くから寒かったんだね。少しすると雪も積もったしね。」
「そうなんだ。」
「じゅんみはちゃんが子どもの頃も、この辺りにも雪が積もって土曜日の休みになる度にわんことソリで遊んだね。」
「あー!覚えてる!今は雪が降っても殆ど積もらないよね。」

オトンからこんなに子どもの頃の思い出をゆっくり聞いたのは初めてだった。
昔、見せてくれた写真は、オトンが学生時代に海で頭に海藻を乗せて女性っぽいポーズでニヤニヤ笑っているものだった…。子どもの頃から面白かったんだ、変わってない。
どうやって堅い仕事していたんだろう…。謎。

洗濯物を取り込んで
「そろそろ帰るね」
と言うとベッドから
「ありがとうね!にゃんこ達にもよろしく。『今度はお父さんが、にゃんこに会いにいく』って言っておいて!」とニコニコ手を振る。

数年前はオトンがキッチンの小窓から私が見えなくなるまでニコニコ手を振ってくれた。
体が弱ってからは起き上がるのが億劫なのか小窓にはオトンの姿はなかった。

階段を下り、自転車に乗って上を見上げた。
オトンが小窓から手を振っている。私も大きく手を振り返した。また涙が出た。
オトン、本当に元気になったね。
にゃんこも喜ぶよ。

オトンのハッピースマイル♪最高だ!

このnoteをパソコンでパチパチ下書きしていたら、ちょうどオトンからお昼のメールが来た。

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かわいい。
オトン、ひなたぼっこ最高だね。また会いにいくよ!

オトンも、お兄ちゃんも「最高」ってメールに書いてあって、やっぱり親子は似てるんだなぁと私はニヤニヤしながらパチパチとパソコンを続けた。

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長い長い娘訪問介護日記のnoteを読んでくださりありがとうございます!
オトンも、私も、メダカも、にゃんこ達もとても嬉しいです♪

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オトンとお祭の動画を観る絵を描きました。

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読んでくださりありがとうございます! 嬉しくて飛び上がります♪ 私の心の中の言葉や絵を見て何か感じてくださればいいなと願いつつ。