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「好色一代女」原作と映画と歌詞【この記事は続編です】

 本記事は!こちらの記事の続きです!
 読んでなくてもなんとかなるようにはしておきますのでご安心を✋(14000文字も読んでられんもの)

【1400文字あらすじ】

 前回の記事を1/10程度に圧縮しました〜!!(こんな大暴力ある??)様々な職業と色道を経た女の自伝的な内容なので、職業を太字にしてみましたヨ!

一巻
老女の隠家
→老女()が住んでいる山奥の「好色庵」に若い男が2人来て、色道の相談をして酒を勧める。老女の身の上話が始まる。11歳で始めた公家奉公を13歳で辞め青侍と恋をする。(侍は逢瀬の露見で処される。)

舞曲の遊興
芸妓になり、客の夫を寝とり追い出される。

国主の艶妾
→江戸の大名の妾になるが殿の体調が悪くなったことを一代女の色のせいと言われ追い出される。

淫婦の美形
→知人の借金のせいで遊女になる。次第にわがまま奉公するようになり客がいなくなる。

二巻

淫婦の中位
→器量が良いと大した接客もせず太夫から天神に下げられる。3人の客があったがいずれも身を持ち崩したと同時に私も体調を崩した。

分里の数女
鹿恋になると仕事に身が入らず、端女郎に下がる。

世間寺大黒
→寺小姓になろうと、寺に行き大黒(僧侶の妾)になる。僧侶の母親分をしていたという老婆から恨みを告げられ、怖くなり腹に布を詰め懐妊を装い逃げる。

諸礼女祐筆
祐筆(高貴な人に支えて文章を書く人)になる。艶書の依頼主の男を好きになり抱き続け、相手が体調を崩す。

三巻

町人腰元
→「大文字屋」という呉服屋で腰元奉公。主人に手を出し、夫婦を破滅させようとしたところ、主人との関係が露見し気が狂う。

妖孽の寛𤄃女
表使い(外交役)として、御前のお供をしに行った先で人形に関する怪奇に遭遇。持ち主の奥様が病になり、恐ろしく思い奉公に懲りる。

調謔の哥船
歌比丘尼になるが自分に付いた3人の客がすってんてんになり、キレる。

金紙の匕元結
御髪上げとして奉公した奥様(薄毛)に美髪を妬まれ執拗に責められたため猫を使って仕返しをした。

四巻

身替の長枕
→娘たちの介添をしていて「派手な結婚が流行っているなあ」と思う。

墨絵の浮気袖
御物師(針仕事)をしていて、若殿様の下着に書いてあった男女の秘戯の絵にうっとり。立ち小便を覗き見て色への気持ちが爆発し退職。針仕事関係の個人事業をし、取引先の真面目な男を寝取る。

屋敷琢の渋皮
→1年の年季で茶の間女(女中)になる。隠し男との逢瀬にお供した年寄りの中間(下級武士)に思いを告げられ、行為に及ぼうとする。が、できずにキレる。

栄耀の願男
→布団の上げ下ろしのみの仲居(夜、床に一緒にいる人)として囲われに行くと、御隠居が老婆であった。性自認が男の老婆に迫られ一晩。

五巻

石垣の戀崩
→老いに抗いながら茶屋者(色茶屋に奉公し酒色や遊興の相手をする女)をしていたところ、物好きな大名に囲われ贅沢な暮らしをする。

小哥の伝受女
→ 風呂場および中宿で世話する風呂屋者になり、女たちと自堕落な共同生活をした。

美扇の戀風
→女医のもとで目の養生をする共同生活をする。嫁をとらず50歳になった主人に好かれ、扇屋の女房になる。客と浮気し追い出されるが客は行方知れずになる。

濡の問屋硯
→問屋が客をもてなすためにおいた蓮葉女になり、自堕落な生活をする。客に迫りすぎて、手切れ金を渡される。

六巻 

暗女の昼は化物
→暗者女(私娼)を見て嫌な印象を受けつつ、分け(私娼)になる。

旅泊の人許
人待女になり、伊勢参りの御一行を言葉巧みに転がし商売する。次第に容姿が劣化し、暇を出される。

夜発の附声
→65歳で遣手になるが、勧められ夜鷹になる。次第に客が女を見定める目が厳しくなり、客が取れなくなる。

皆思謂の五百羅漢
→五百羅漢を見て過去の男を振り返り、自殺を決意。池に飛び込もうとするが止められ、止めてくれた人の勧めでになる。(1巻1章の時点)

【原作と映画】

 映画「西鶴一代女」と小説の照合へようこそ!映画では一代女に「お春」と言う名前が与えられています。映画は小説の再構成です。
 まず、章の順番だけ言うね。映画では、㉔皆思謂の五百羅漢→ ①老女の隠家→ ③国主の艶妾→ ④淫婦の美形→ ⑫金紙の匕元結→ ⑲美扇の恋風→ ⑭墨絵の浮気袖(後半)→ ㉓夜発の附声(後半)〜㉔皆思謂の五百羅漢、です。

皆思謂の五百羅漢
 羅漢さんの顔を見て過去の男を思い出す。

🌾💬羅漢さんと男の顔が重なるところの映像技術が拙くてたまらんやったよ。

老女の隠家
 青侍との恋が露見し、殿中を追い出される。お春は「好きな人と恋して何が不義理か」と両親に啖呵を切り、青侍は「身分関係なく誰でも自由な恋ができる世の中が来ますように、お春さま!」と処されます。

国主の艶妾
 江戸大名に使える爺が掛け軸の絵に似た女を探しに早駕籠に乗ってやってくる。爺と京の人間が理想の女の条件を読み上げて、女を見定めていきます。そこで、芸妓として舞踊をするお春が見そめられ、大名の妾になりました。そして若殿を出産。しかし殿がお春に夢中になりすぎて殿の体が悪くなり、若殿さえ産めば用済みと実家に帰されます。

🌾💬眼鏡をかけて理想の女の条件を読み上げて、女を見定めていく爺が可愛くてたまらんかった。わがままな大名に支えて大変すね、「こっちも(そんな無理言われて)死んでまうわ」と言って限界のご様子。
 なんか…個人的な……えぇ…私、一代女がどれだけ「女」を使っても「一代」で終わるのが好きだったんですけれど……。ここまで丁寧に原作をなぞってくれたのに、そんな裏切りってないや…。あと、若殿を産むのが親孝行になるのも、親の借金の描写も嫌だぁ。両親というしがらみを切って好きに一代で泳いでてほしいんだが〜〜〜(?)

淫婦の美形
 父がお春の出世を見越して豪遊したため金が必要になり売りに出されます。
 太夫になっても高飛車な態度で「お勤めをなんだと思っている」と店の主人に叱られます。太夫から位を下げられそうになったところで身請けの話が舞い込みます。が、その客が使っていたのは偽金で廓は大騒ぎ。

🌾💬この時の太夫姿、このページの1番上の画像ですヨ!カワイイネ!

金紙の匕元結
 京でうちにいたら悪いようにはしませんよと言われ住み込み女中(大変髪の少ない奥様専属の御髪上げ)に。奥様に気に入られ「うちで囲ってお春に婿をもらってやろう」とまで言われる。
 しかし、お春の前職がバレてしまい、奥様が主人の廓遊びを疑い大喧嘩。奥様は綺麗な黒髪を妬み、お春の切ってしまう。お春は猫を使って奥様の寝込みを襲い復讐を果たします。

🌾💬禿げ方えぐかった。後頭部の髪の毛一個もなかった。すごい無い。
 お春、普通に奉公してるだけなのにやたらとモテる。特に文吉という若者がめちゃくちゃ手を出してくる。さすがでした。あと、たまちゃん(猫)いい子で言うこと聞いてました🐈

美扇の恋風
 道楽一つせずウブにやってきた働き者、弥吉という扇屋の主人。お春の過去を知ってもなお「そんな可哀想な身の上ならもらってやりたい」と。
 夫婦仲良く扇屋を切り盛りしていましたが、人斬りにあって夫が死んでしまいます。寺(池があったのでおそらく大雲寺?)で夫を弔います。

🌾💬 「美扇堂」の紋が少し開いた扇子が2個重なっている紋で可愛かったです。
 ちなみに原作と違って扇屋の主人は若者でした。変わり者の中年→働き者の若者、と書き換えられている。お春もそれに見合うくらいまでしか年取ってません、見た目の上では。
 し、「私夫がいます」的な不倫もしないんかい!笑

墨絵の浮気袖(後半)
 尼に話を聞いてもらううち、尼になりたいと思い住み込みます。さて、御髪上げとして勤めていた店の爺が借金を取り立てに寺にやってきます。お春は扇屋をたたみ無銭で離別した身で金を払えません。「この淫売女」と言われて腹が立ち、全て服を脱いで掛けを払おうとしたところ襲われてしまいます。
 不貞で寺を追い出されることになりました。寺を出されたところで、店に暇を出された文吉と再会します。しかし、店の金を盗んできた文吉は店の人間に追われ離れ離れに。

🌾💬原作では誘っているけど、映画では襲われてんだ〜〜…!


夜発の附声(後半)〜㉔皆思謂の五百羅漢
 食うに困っていたところを相長屋の女2人に拾われます。「あんたも私たちみたいに売りに出よう、世の中何をやっても同じや」と笑い飛ばして貸衣装を見繕ってくれました。
 やっと1人声をかけてきた者に、数人の前で顔に灯りを当てられ「これでも夜遊びがしたいか」と罵られ小遣いを握らされる始末。化け猫とまで言われた我が身が虚しく悔しく笑うほかありません。
 そうして、夜の街を歩くうちに五百羅漢に辿り着きます。お春が「皆、男に似てる」と言うと夜鷹の仲間の女たちがまじまじと羅漢さんの顔を見て「なるほどな」「みんなおかしな顔してる」と笑います。羅漢さんを見てるうち、お春は倒れてしまい母の元に運ばれます。父は他界したこと、若殿が殿になったことを知らされます。
 殿中でお春は今日までの職歴を罵られますが、殿の顔を見ることだけは許されます。顔を見て発狂し走り出したお春。次の場面で尼として歩いています。幕。

🌾💬おばば2人が鏡に向かって2人並んで支度しながら「こんなシワだらけの顔で二十歳そこそこの声出してぇ」「厚かましいもんや」とガサガサの声で笑ってるのよかった〜〜!原作だと、「可愛らしい若者の相手をしていくつかと聞かれたので17歳と答えたが、闇夜だから姿が隠せたものの42もサバ読み、後世で鬼に咎められて舌を抜かれそうだ」「なんにせよこの商売は若いが花。私たちは上中下なしに十文と決まっているのだから、器量が良いだけ損。」などと話していた女たちですが…ふふ、私この手の会話大好き。大好きな会話が解釈一致の声で繰り広げられて湧いた〜!

🌾💬【感想】
 思ったより丁寧に原作なぞっててラブ。絵面が割と想像通りだったのには湧きました。
 しかしながら、私の大切大切ポイント「女は女を使っていながら一代でしかなかった」というところが🧐でした。まさかの出産している!そして育っている!成人して殿になっちゃった!で、「一代」というには20年間だと描写が虚しくて、というのもあります。よぼよぼになってもまだ夜鷹の格好をしている枯れかけのおばあちゃんを見てみたかった。あと、あんまり「小作りな女の徳」は感じられなかったです、小説ではゴリ押ししてたのに。
 いやでも、原作の古本を繰ったときのワクワク感が白黒映画にもありましたよ!おもろかったです。

【歌詞の飲み下し】

 歌詞の読み込みand飲み下しにようこそ!

水風呂に熱い身体を沈めても
火の蛍 殺しきれずに闇に飛ぶ

 夏の景色…。夏の描写があるのは⑨、暑い日に呉服屋に腰元奉公しに行ったといっています。暑い描写があるのは⑱⑲、風呂屋と扇屋でどちらも扇が登場します。
 女の人生での何回も来る夏、今年はどの年の夏を思い出してどんな夏を過ごすのだろうね。

荒くれの腕の中 さらされて
二度も三度も二度も三度も 恋慕う

 これはもうずっとやん。一代女の人生やん。色んな男の腕の中にいながらも、1人も本質的に優しいやついなかったよなあ…。結局、お金で売ってしまった自分の身は荒くれの腕が抱くのよ…。

あゝ恋する女は罪ですか
あなた あゝめらめらと
それぞれの利き腕で

夢を見るのも 女…

 「夢を見るのも女」ですけども…①で人生を振り返って喋り始める様子を「夢のごとく語る」としているんですよ。これまでの人生を語るのに達観して夢のように喋る、って…過去と現在の距離感がありますよね?今では想像もし得ないことをしちゃってた過去に対して距離が生まれるの、分からんでもないが。

あたし夫がいます
でも愛さずにいられない

 前回記事でも言っての通り、夫がいたのは⑲のみ…!これのせいで、ここでいう「夫」は本当に婚姻関係にあった男がいたということなのだろうか?と疑問が生じた。
 「あたし夫がいます」という常套句にすぎないんじゃないかな。だって歌詞の中でも繰り返されているし。でもでも、この繰り返しの中のひとつに、⑲があって美男子との不倫を後ろめたくありつつ楽しんでいる愚かな女がいたら喜ぶよね。文字だけを辿っても分からないような機微を…声や表情にこめて、感じさせておくれよ(?)

耳をあて聴いてください 血の音を
好きだから 二人どちらも好きだから

 「二人どちらも」と選べなかったのは、⑲のみ…!他の章では複数の客を取っていても「好き」の感情に踊らされている印象はなかったです。
 このことから察するに、「好き」もリップサービスかな。ん〜なんかでも原作の一代女ってあんまり客としての男に媚びてる印象ないんだよなあ。「夫がいます」までなら言いそうだけど「好き」ってばら撒いてそうな気がしないかも…。

姫鏡覗き込み 紅をひく
二度も三度も二度も三度も 爪を剪る

 姫鏡の絵柄何にする!!暫定、リンゴの花にしていい?!?!花言葉が全部いいので!!!(思想強)
 花言葉は「優先」「好み」「選択」「誘惑」「後悔」です。リンゴはね、桜と同じバラ科のお花でね、桜が散った後に咲くんですって。お花の雰囲気も桜とリンゴは似ております、白っぽくて小さい花がわあっと咲きます。
 そんな遅咲きの「桜」を覗き込んで、「自分はみんなに愛される国花的存在にはなれないんだ」と思って欲しい。そうとは分かりつつ、今日も耳の裏まで洗って身支度しますよね?

あゝ切なさつらさは罪ですか

 原作、切なさ、つらさを感じる場面多かったよね。「口惜しい」ってよく言ってた印象です。で、罪、と言うのは…?となり絶句したんだけど、切なさつらさという罪に対する罰ってなんですかね??多分、切なさ辛さを埋めるもの…?やばくね??男性関係を罰と捉えてたらどうしよ、う、好、す、好き。

眠れ あゝぐらぐらと
触れ合えばひとすじに

 一代女って人知れず長い夜を過ごしてそうだよね。眠れない夜多そうじゃん。㉓では、雨の夜ににうぶめを見て死を覚悟したりしましたね。㉓のような虚無を見つめて過ごした夜は数えきれないよねって言う想像です。
 そう、「眠れ」って言うのは虚無を見ないだけ一人でいるよりマシだけど二人でいるほどのありがたみのない触れ合い、を示している感じがする!

けものごころの 女…
いつも刃を渡る
でも愛さずにいられない

 「けもの」ってまで下げて表現する意味ってなんだろうね。一代女の本心ではなく、皆様が望まれるでしょうから「世間様の目を甘んじて受け入れます😌」という、虚偽のしおらしさ、感じませんか?私、一代女の自己肯定感は鬼であって然るべきと思ってます。

あゝ溺れる女は罪ですか
あなた あゝゆらゆらと
それぞれの利き腕で
夢を見るのも 女…
あたし夫がいます
でも愛さずにいられない

 「溺れる」…入水自殺の暗喩っすか…ね…。結局今まで虚無を感じた腕に抱き止められて命を長らえている様子…?歌詞の構造、繰り返しを経ながら女が老けていく構図をとっている感じがします。「私夫がいます」と今までの夢を象徴する言葉をうわごとにうなされながら生死を彷徨ったのでしょうかね。

🌾💬【まとめ】

 微妙な主人公の女の違い、私は以下の感じを汲み取った。
 原作「小作りな女の徳。かわいい私が色んなところで勤めたのって、尼になった今振り返ると夢のような記憶だな。いやはや我ながら勤め女って恐ろしい」
 映画「とてもモテる私。親と世間の目がありながらも女として生きました、最終的には尼になりました。」
 歌詞「私という女と男の間に生まれる背徳感。でも、女である私がいる以上そうなってしまうものなのだから、仕方ないでしょう。」
 どれが好きっていうか、やっぱり原作の当時としては働いている、かつ性に奔放である、女像の型破り具合、突き抜けてかっこいいって思います。これは当時を生きて「西鶴氏の小説やべえ!めっちゃすげえ×××な女書いてる!」って思いたかったな。めちゃくちゃ興奮するだろ、嬉しいだろ。

 というわけで〜🖐️劇場で好色一代女かかったら一緒に各々盛り上がりましょ〜🖐️勝手に針箱や硯を見てやろうぜ〜🖐️!

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