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佐賀県難病支援ネットワークの総会で「私たちの提案」として、医療的ケア児支援についてお話ししました

本日、日頃からお世話になっている佐賀県難病支援ネットワークの総会にて、お話をする機会をいただきました。

佐賀県難病支援ネットワークさんは、佐賀県より委託を受け、「佐賀県難病相談支援センター」を運営されています。

今回、センターの所長さんより『ぜひ総会で「私たちの提案」として、医療的ケア児支援についてお話をしてほしい』と貴重な機会をいただきました。

正直言いますと、今回の話はすっごくプレッシャーでした。
例えば、医療的ケア児支援に関する講演などの機会自体は、私もかなりの数をこなしていますし、ある程度プレゼン資料を作成していますので時間調整しながら、聞いている方の反応を見ながらお話をしています。

今回の提案は、10分間。
この10分で提案をしなければならない。。沢山伝えたいことはあるけど、収められるかな、、などなどの不安の中内容を認めました。

結果、会場には議員さんや県の職員の方、医師達が参加する中、やや震えつつ(笑)提案をさせていただきました。

せっかくですので、下記に今回の原稿を残します。

© 2023 荒牧順子Corporation. All Rights Reserved.

「私たちの提案」
R5年6月11日
於:佐賀県難病相談支援ネットワーク総会
株式会社ドアーズ 代表取締役
荒牧順子

ただ今、ご紹介に預かりました。株式会社ドアーズ 代表取締役の荒牧順子と申します。本日は佐賀県難病支援ネットワーク総会にて、このようにお話をさせていただく機会をいただき、誠にありがとうございます。また本日は総会のご開催、誠におめでとうございます。

私自身は、看護師と保健師の資格をもち、NICU(新生児集中治療室)や小児科病棟で勤務しておりました。現在は、人工呼吸器装着を含む、医療的ケアや重い病気のあるお子さんから大人の方までの、日中の預かりをする事業の運営と、医療的ケア児のご家族や自治体を含む支援者からの相談に対応する、佐賀県医療的ケア児支援センターのセンター長をしております。

皆様は、「医療的ケア児」という言葉をご存知でしょうか?知的障害や肢体不自由の有無は問わず、日常的に医療的ケア(つまり、人工呼吸器など一見して医療的なケアが必要と分かるお子さんから、1型糖尿病などのインスリンや血糖測定の必要なお子さん、心臓の病気で酸素を使用しているお子さんなどを含みます)そのような医療が日常的に必要なお子さん全てが対象になります。
全国で約2万人、佐賀県ではR3年度の実態調査で把握できた範囲で160名いらっしゃいます。そして今後も医療的ケア児数は年々増加していく見込みです。

ご存知の方も多いかもしれませんが、一昨年、国会にて「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(通称:医療的ケア児支援法)」が議員立法で成立をしました。この法律は、これまで制度の狭間に陥っていた医療的ケア児の支援に対して、国や地方自治体が医療的ケア児支援を行う責務を負うことを、日本で初めて明文化された法律になります。
また、この法律の特徴として、保育園や学校へ親の付き添いなく就園や修学をできるようにする責務や、「家族の離職の防止に資すること」というご家族が医療的ケア児を育児する中で望む形での就業継続を断念している現状の対応を求め、さらに「居住する地域に関わらず等しく適切な支援を受けられるようにすること」と言う、自治体格差の是正についても触れられています。

佐賀県でも、昨年4月より医療的ケア児支援センターが設置されその運営を私も担わせていただいています。実際にご家族からの相談や行政からも相談を受け、関係各所と連携を図りながらお子さんとご家族の最善の利益のために日々邁進しているところです。

ご家族の相談の対応をする中で、感じることがあります。
それは、いくら画期的な法律ができたからと言って自治体側は「前例がないこと」や「予算の少なさ」、「マンパワー不足」などから、何年前に作られたかわからない要項や政策に捉われ、その責務から逃れようと必死になられているように感じることが残念ながら多々あります。
自治体職員の方々の想いも、痛いほどよく分かります。職員1人の想いでは、地域政策を変えていくまでは、太刀打ちできないことも多いでしょう。
「なぜこんなに大変なのか?」それは、医療的ケア児が制度の狭間に落ち込んで、これまで明らかに支援が行き届いてなかったからです。支援に結びつけるためには、新たに対応しなければいけないこと、変更しないといけないことがありすぎるのが現状なのだと思います。
これまで医療的ケア児の支援は民間の事業者たちの努力で、今もなお支えられていたという事実があります。
しかし、今後は佐賀県としてそのように医療的ケア児や医療的ケア者を支えてきた貴重な事業所をしっかり支援し、さらに足りない資源に対して人の確保や育成、ハード面の整備の見通しを行政主導のもと、進めていく必要があると私は感じています。

このような状況の中、私から4つの提案をさせていただきたいと思います。

1つは、預け先やレスパイトの資源の確保です。
これは何も、医療的ケアの有無に限らず、重い病気のお子さんを持つご家族や障がいのある方のご家族にも共通した願いだと思います。
先ほど、医療的ケア児支援法で「家族の離職の防止に資する」責務があると申し上げましたが、日々のケアや介護で疲れ切り、さらにきょうだいや他のご家族の対応をする特に母親の疲労というものは、計り知れません。
そのご家族が、疲れた体を休めるための資源や、就業できるような資源や政策は佐賀県内ではまだ現実的ではありません。
例えば、愛知県は病床数の確保と施設の地域的な偏りを解消するため、民間にも施設整備を促そうと、30億円の障害者福祉減税基金を設けるなどし、重症心身障害施設を8年間で2倍の病床数にするなど(参考:読売新聞)、計画的に予算を積み上げて実施できています。
ぜひ、県内でも人材育成や資源開発・事業所支援含め、検討して行っていただきたいと思います。

2つめは、子どもの未来を見据えた支援や親亡き後も安心して生活できる資源や政策の整備です。
子どもはいつか歳を重ねると、必然的に大人になります。
例えば、放課後等デイサービスで手厚く、学校後の預かりをしていても卒業後に通える「生活介護」や「就業支援事業所」などは常に医療的ケアが必要な方を受け入れにくい状況です。看護師の確保も報酬上の観点からも人件費を鑑みると看護師配置が、厳しいからです。また、多くのそのような障がい者事業所は、フルタイムで働く親の就業を可能にするほどの開所時間ではなく、学校を卒業後に親は離職やパートタイムへの転職を余儀なくされる現状があります。
また、まだお子さんが小さい時から親亡き後を憂うご家族が多数です。
親亡き後に、重い病気や障がいを持つ子どもが、社会の一員として地域で安心して暮らしていける未来を想像できないと言うのは、親として絶望に値すると思います。
医療的ケア“児“の法律ができたから、18歳以下の子どもに注力するではなく、その子どもたちが、そして今医療的ケアが必要な大人の方も安心して地域で生活できるような政策実現が、必要とされています。

3つ目に、医療的ケア児支援の協議の場の設置を各自治体圏域毎でも設置し、支援政策を進めていく会議体設置に各市町が主体性を持って取り組んでいくことです。
厚生労働省は、第2期障害児福祉計画の成果目標として【医療的ケア児支援のための関係機関の協議の場の設置】及び【コーディネーターの配置】をあげています(参考:厚生労働省)。現在、センターと県障害福祉課において、R6年度の各圏域コーディネーターの配置に向けて進めているところですが、【医療的ケア児支援のための関係機関の協議の場の設置】は2018年からの第1期障害児福祉計画(参考:厚生労働省)から目標に掲げられているにも関わらず、県内の自治体間で取り組み格差が生じている現状です。
各市町や圏域の医療的ケア児者の課題や資源の現状にしっかり、自治体側が主体的に向き合うような会議体の設置を進めていき、地域政策へ落とし込んでいく機会が必要だと感じています。

4つ目に、付き添い入院問題についての対応です。
子どもが入院した際に親も病院に泊まり込む「付き添い入院」について、今月2日、こども家庭庁の小倉大臣は、「今年度中に、小児の入院医療機関を対象に調査を実施し、必要な対応を検討する」と述べました(参考:朝日新聞)。小児科などへの親の付き添い入院は、私自身が小児科病棟の看護師をしていたことから、現状はよく把握しており、睡眠や食事もままならない環境で親がケアをしている実態については、医療的ケア児に関わらず、難病のお子さんなど長期入院を余儀なくされる多くのお子さんとその親御さんにとって国の指示を待たずに、できることを県内でも検討していく必要があると感じております。
例えば、「障害者総合支援法改正案」ではR6年度以降、小児慢性特定疾病児童等に対する自立支援の強化を示しており、現段階では見通し案として「小児慢性児童やその保護者の実態把握と課題の分析を実施し、任意事業(とされていた例えば、通院や入院の付き添い支援、きょうだい児への支援)を努力義務化する」(参考:厚生労働省)とされています。
来年度の改正に向けて、付き添い入院問題含め、佐賀県内でもいち早く課題解決に向け進んでいっていただきたいと思います。

以上の提案をさせていただきます。
最後になりましたが、これからも佐賀県難病支援相談支援センターを担われている、佐賀県難病相談支援ネットワークさんとは、医療的ケア児さんや大人への移行期間の方への支援・就業等についても引き続き連携をさせていただきたいと思っております。今後のご発展をお祈りし、「私たちの提案」とさせていただきます。

普段はTwitterでの発信がメインです。

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