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女医の育休のすごし方。

休日のすごし方、と聞いてワクワクするのは私だ。

「休日は、何して過ごすの?」
と、よく聞いてしまうのも私だ。「休日」という響きが好きなのだ。

医師と、休日の関係

病院で働いていると、入院患者も診療する。たまに、外来以外は不在と思っている患者さんもいるが、大体は医師は外来の時間以外は、入院患者の診療、検査、カルテ記載、書類仕事などを行っている。ちなみに、意外に記録などの書類仕事も多い。

休日、祝日は病院は通常の診療はしていない。CT、MRI、血液検査などは、緊急時やどうしても必要な時に行われる。そうしないと、病院が疲弊して機能しなくなる。
しかし入院患者にとっては変わらず平日だ。だから、休みの日でも変わらず医者は患者のもとを訪れることが多い。

病院では、医師は、通称ピッチと呼ばれるPHS(病院内のみつながる電話、Personal Handy-phone System)を持っている場合が多いが、携帯電話(ガラケーの方)を持っていることもある。看護師が交代制で、勤務以外の時間は完全オフなことに対して、何かあれば医師へ直接休みの日でも連絡がある。

「救急車の音が聞こえるような気がする」

「病院のピッチ(携帯)がなったような気がする」

というのは、ドクターあるあるである。

ふと携帯をみて、病院からの不在着信の記録が目に入ろうものなら、ぶわっと冷や汗が出て折り返し電話する。

休みの日でも、どこか心が仕事につながっているのだ

そうすると、365日仕事とも言える。

なので、最近はチームで診療して休日は交代で患者を診療するように、休める日を作るよう整備しているところもある。

女医の産休・育休の一例

私が働き始めて本当の意味での休日を感じたのは、一人目の産休中だ。自分のもとに電話がかからない。もとい、電話がかかってもどうすることもできないので、私が何かをしないといけないといけない電話がかかってこなくなった。

いや違った。一人目の時は、産休に入る前にトラブルで入院しないといけなくなったので、仕事の引継ぎもできず患者さんに挨拶することもできなかった。心が潰れそうなほど申し訳なかった。そして、自分と赤ちゃんがこれからどうなるのか不安で仕方がなかった。

1人目の妊娠中は、何一つ上手くできなかった。仕事から帰ると、すぐに横になるほど体が疲れていた。その前に2回流産していたので、無事に出産までたどり着けるかどうかも常に不安だった。

どうやって上司や同僚に妊娠を伝えて良いか、どんな風に勤務の調整をお願いしてよいかも分からなかった。女性医師はもとより少なく、更に同じような状況の女医さんがいることは、同じ病院の中ではどこでもかなり少ないと思う。これは私の一主観に過ぎないので参考程度にしてほしい。

素晴らしい同僚や上司ばかりなのに、私は一人だった。孤独だった。自分で自分を追い込んで、全く余裕が持てなかった。

そうだ。一人目の妊娠、出産、育児が少し落ち着いてきて、ようやく気付いたのだった。

「あ、そういえば、もう病院からの電話はかかってこないんだった。」

その時、ようやく「休日」に気づいた。

#休日のすごし方 というテーマの記事で、まさか一人目の産休・育休を振り返ることになると思わなかった。

あの時、私は不安や育児で手一杯だったのだろう。あの1年、私は何をしていたのか思い出せなかった。

娘が1歳になるまでのアルバムを見返した。

友達が来てくれた。

一緒に結婚式に参加した。

ペンギンを見た。

お食い初めをした。

コスモスを見た。

ドキドキしながら二人で新幹線に乗った。

離乳食を作った。

気づいたらティッシュをたくさん出していた。

お友達と遊んだ。

ハイハイレースで1番になった。

2人で石垣島に飛んだ。

お花見をした。

1歳の、お祝いをした。

そうだ。そうだ。娘と一緒に過ごした1年は、宝物だった。今まで正解を求めてばかりだった私にとって、妊娠・出産・育児は暗中模索だった。誰もが認める正解なんてどこにもないのに、それじゃないといけないと、もがき続けていた。

あの一年は、いつになっても忘れない。
忘れても、写真を見て思い出せばいい。

娘が大きくなったら、あの写真たちや、このnoteの記録を見てくれたら嬉しい。できることも、できないことも含めて全部、大事な1年だった。

休日の過ごし方。これは、週末のすごし方とも言えるし、夏休みのすごし方とも言える。そして、育休のすごし方、とも言える

これから父になる男性へ


同期より、仕事のキャリアが1年遅れた。更に、これからも同期と同じように働くことはできない。いや、子供をもっともっと長く預けて夜まで働くことはできるけど、私は今はそれを選ばない。

患者さんに、十分な診療ができるだろうか。これが一番の悩みの種だった。今でも。

ただ、子育てをして分かったことはたくさんある。それは仕事に役に立つ。自分の傲慢さがひっくり返って、やさしさに気づいた。相手の背景を想像する、ということに努めるようになった。

正しいと思っていたことが、ただの押し付けだったこと。
圧倒的に配慮に欠けていたこと。
反省には切りがない。
穴があったら入りたい。

正直に言うと、3人目の育休に入った今でも。穴があったら入りたいことばかりである。

つまり、この記事で何が言いたいかというと。

男性のみなさんへ
「育休いいですよ。ぜひ。 かしこ」

#休日の過ごし方の、予想外の結論だ。

育休は、世の中を知る一つの手段でもある。
休みとは、遊びであり、学びである。

残りの育休も、遊び、学ぶ。

おとなになっても ちゅっちゅるー
こどもになっても ちゅっちゅるー

ちゅっちゅるー

いつか、子供たちと車の中で聞いたこの曲が頭から離れない。






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