忘れない風景

ふと思い出す風景がある。

母が腹痛を訴え救急車で運ばれた時のことだ。
地元の病院では手に負えないレベルだったらしくそのまま大学病院に向かうことになった。
父は救急車に同乗し、私は後から車で追いかける。

救急の待合室でひたすら待ち続け、無事を祈る。しばらくの後、処置が終わり横たわる母は青ざめていてまだ苦しそう。
幸い命に別条なく、ただ手術を伴うので長期の入院となった。

ホッとしたところで私達はお昼ごはんも食べずに待ち続けていたことに気づく。
二人で病院内にあるコーヒーチェーンのお店に駆け込み、パスタを注文する。

時間外の病院はひっそりしていて、ちょっと薄暗い。
しかも普段は父とパスタを食べる機会なんてないから不思議な光景。

コーヒー店は確実に私たちを癒すオアシスだった。
その時食べたトマトパスタはいつも以上に美味しくて特別。
時折、父と食べたその風景を思い出している。