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勝手にチャウ・シンチー祭。1990年『ゴーストハッスル』でしみじみ

自粛疲れというか韓国ドラマ疲れに陥り(何しろ基本16話、各話1時間超えを8タイトルぶっ続けで観た)、もはや90分の映画など短編感覚。Netflixでチャウ・シンチーの『ゴーストハッスル』(1990)を発見したのでこれでガス抜き!のはずが、シンチー再評価運動に突入してしまった。

「ありえねー」演出でおなじみのシンチー作品

90年代はシンチーの時代だったと思っている。香港の宝といってもいい(トニー・レオンという宝はまたの機会に)。それまでフランス映画専門だった女性ライターさんに「どうして私にチャウ・シンチーを教えたの!彼と出会って映画人生が変わってしまった」と言われるほどディープインパクトを与え、もちろん私じゃなくてシンチーがスゴいんだが、それも彼のエポックメイキング作『少林サッカー』(2001)が誕生するずっと前のお話。

過去に観た中での私のお気に入りは『0061/北京より愛をこめて!?』(1994)。From Beijing with Love…しびれる。「007」シリーズだけではなく『ロボコップ』や『ジュラシック・パーク』、親友トニー・レオン出演作『恋する惑星』『欲望の翼』、本作ヒロインのアニタ・ユン主演『つきせぬ想い』など、全編にわたってパロディが散りばめられたスパイ・コメディ活劇で、シンチーは市場で肉屋を営む元中国諜報部員。内容的には、初監督作とあっていろいろ模索している感はあるけれど、こんなにもイカした肉屋に私は出会ったことがないし、彼以外には存在しない。唯一無二の肉切り包丁が似合うヒーロー。シンチーは包丁や斧が好き。

コロコロコミック的3種の神器

そんな『0061』から4年前の主演作品が今回Netflixで初見の『ゴーストハッスル』。ゴーストとハッスルを足してしまった邦題センスもさることながら、チープ・ドタバタ・ナンセンスと3拍子揃ったシンチー作品。新米刑事のシンチーとその上司が、幽霊となった殉職刑事の敵を討つため上司が崇拝する尊師のお告げのとおりアイテムを集めるんだけど、これが「おしっこ・うんこ・おなら」というコロコロコミック的な3種の神器。ちなみに本作にはいないけどシンチー作品全般におけるキラーアイテムとして「うすらはげ」も挙げられる。ほんとにいい塩梅にはげたおっさんがエエ役で出てくることは『少林サッカー』『カンフーハッスル』『西遊記~はじまりのはじまり~』でも証明済み。

この『ゴーストハッスル』でのおしっこは穢れなき「処女の尿」という条件つきなのだが、シンチーは愛するピチピチの彼女のではなく、警察署の掃除のおばちゃん…あえてババアと言います、ババアの尿を採取。きっと熟女のほうが霊験あらたかなのでしょう。それもコーラがぶ飲みのうえ脅かして失禁させたもんだから顔中に浴びるとか、のちに『カンフーハッスル』でもいじめっ子たちにおしっこかけられてたよね。そうして集めた尊いアイテムを調合した秘密兵器を手に、クライマックスのバトル。

ここで見逃せないのが、シンチーが敵に火の玉をオーバーヘッド!この10年後、彼はCGというテクノロジーを手にして『少林サッカー』を作ったのだと思うと非常に感慨深い。霊力バトルでアクロバティックに宙を舞うのも、さらにのちワイヤーアクション技法を得て『カンフーハッスル』に。上司刑事が霊力でびよびよ~~んと腕を伸ばすシーンの手作り感を考えると、十数年でコロコロコミックは少年ジャンプに進化した。『少林サッカー』『カンフーハッスル』は武術の達人や超人たちによる超常的な戦いの“ありえねー”演出とはいえ、その肉体には言葉が感じられるし、たぶんずっと精神年齢は少年ジャンプ(シンチーのドラゴンボール観たかった…)。Netflixで次は『最強の出前人』を観ます。レストランのしがない出前係のシンチーが柔道部のマドンナにひとめぼれして柔道一直線。胸高鳴る。

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