魔道祖師:二組の姉弟のこと 他

前稿同様ネタばれしていますので読みたくない方はそっとじ願います。

 前稿、2万字のメモ(「魏無羨は誰に殺されたのか」)をまとめたとき、かなり私の魂魄も飛んでいて、その感覚が飛んでいたのだけれど、もう一度陳情令を見直して、乱葬崗から帰還したとき、そこから不夜天で(夷陵老祖となった彼が消滅する場所がドラマでは場所が違う)崖から飛び降りるまで、とりわけ「羨羨は3歳」と師姉に甘える場面で辛くなってもう見ていられなくなって思わず消した……。ある意味魂鎮めは成功した(しすぎた)と言っていいのだろうか?

 それはともかく、書き残しがあって心残りだったので補遺を足しておく。


補遺1【二組の姉弟をめぐる物語】

 夷陵老祖としてある魏無羨が怨霊だとすると温氏滅亡させたところで思いを遂げているので本来なら昇天していいはずだけれども、彼はこの世にとどまっているのはなぜだろう? 江氏再興を見届けるためなのか。ただ漫然と残っているだけなのか。心残りとしてあるのは江姉弟の行く末しか思いつかないが他に何かあるのか。


 ここで二組の姉と弟について触れておく。
 江氏の姉弟江厭離と江澄、温情と温寧である。どちらも魏無羨と関わり深く物語の軸を支える人物である。江厭離は次のような人物として描かれている。
江澄の実の姉だ。性格は優しく人と争わず、話し方も穏やかではあるが、外見は特別秀でてはいない。容姿は 中の上で、仙術の資質も平凡。各世家の仙子たちが才色を競い合う中、周囲と比べれば、やや影の薄い存在だと 言わざるを得ない。〉(1-179)
 だが、彼女は弟たちを深く愛していて、いつも弟たちのこと気に懸ける母のような存在だ。実際、虞夫人は気も強く実子江澄も修練が足らないとこきおろされることもしばしばだ(3-282)。虞夫人が登場するだけでぎすぎすした雰囲気になることも多い(→【10】)そのなかにあって、江厭離は常に温かくときにばらばらとなりそうな家庭内の空気をまとめ続ける存在である。
 魏無羨は本当は師姉江厭離を姉以上の存在として意識しているのではないかという気がずっとしていた。
 乱葬崗前の少年時代はそういう要素は余り表に見せないし、「師姉」として尊敬している、という態度を崩さないからそこにはまだ強い思慕の感情ではないのかもしれない。
 しかしながら、乱葬崗から帰還して以後、金子軒とのやりとりを見ていると感情的になっているし、それは師姉への慕情のようなものが強く表れ始めているような気もする。本人の自覚の有無は置いておいて第三者には危うく見えたこともあったのではないか。例えば、息子金子軒との婚礼を目論む金夫人は、
魏無羨とをしげしげと見る目つきには若干の警戒心が滲んでいて、どうやら彼が江厭離とともに帰ることを少し不快に思っているようだ。
「あなたたちみたいな若い男女二人が、従者もなしでいつも一緒にいるのはどうかしら?」
〉(3-176)
 と気にする様子を見せる。江厭離の方は〈「阿羨は私の弟です」〉と言い切り、二人の関係が姉弟以上のものではないとしているが、金子軒と対立しては激高する魏無羨を見ていると魏無羨の方はどうかなと思わなくもない。
 〈意外にも、江澄は金子軒をかなり高く評価しているような口ぶりだ。
「江澄、正直に答えろ。それはどういう 意味だ? この間、お前がわざわざ巻狩に師姉を連れていったのも、まさか本気で師姉をあいつに……?」
「別に 駄目ってこともない……あいつを許すかどうかはお前が決めることじゃない。姉さんは、あいつに思いを寄せてるんだからな?」
魏無羨はたちまち言葉をなくし、しばらくしてからやっと声を絞り出す。
「なんで、好きになったのがよりによってあんな……」……
「羨羨、何歳になったの?」
「三歳だよ」
  おどけた答えに江厭離が笑うのを見て、彼はやっと起き上がると、少し考えてから口を開いた。
「師姉、一つ 聞きたいことがあるんだけど」
「いいわよ」
「人って、なんで誰かを好きになるのかな? あ、この『好き』っていうのはそういう意味の『好き』だよ」
 魏無羨の問いかけに、江厭離は小さく驚き不思議そうな顔になった。
「それを私に聞いてどうするの? もしかして、誰か好きな人ができたの? どんな女の子?」
「そんなのいないよ。俺は誰も好きにならない。少なくとも誰かを好きになりすぎたりはしない。だって、それって自分で自分に首輪と手綱をつけるようなものだろう?」
〉(3-188)
 これに対して「あなたはまだ一歳ね」と厭離に笑われるのだが、本当に人情の機微がわからないのかわからないふりなのかは定かではない。
 金子軒と江厭離の婚礼が決まると〈「俺の師姉には世の中で一番の男じゃなきゃ釣り合わないんだ」〉(3-254)という、この台詞も捕らえようによっては「一番の男=自分」のようにも読める気がするので悩ましい。
 それでも、例えば江厭離がひそかに江氏と縁の切れた魏無羨の元に、江澄と共に訪れて婚礼衣装を披露し、まだ生まれてもない甥の字(あざな)の名付けを頼む(江澄も同行している)など家族としてまだ情愛深く接している。
 このあたり、魏無羨と江厭離との間には姉弟としてでも、+αの気持ちがあったとしても強い絆があることだけはわかる。
 さて、この+αをどうとらえるか。最初、「恋」?と考えたが、この「三歳の羨羨」のエピソードの直前に次のようなエピソードがある。それを読み直して「恋」ではおさまらないと考え直した。
 魏無羨は自分が江家に引き取られたときのことを思い出す。似た年頃の少年が引き取られて自分だけのものだった部屋やいろいろなもの(家族の愛情も)を分け与えねばならなくなった江澄は苛立ちから魏無羨を部屋から追い出してしまう。行き場をなくした魏無羨は屋敷を出て木の上で夜明かしをしようとする。それを探し出して、家に帰ろうと声を掛け、江澄との間を取り持ってやる。足を怪我した魏無羨と江澄をおんぶと抱っこで歩き、あたたかな汁物を与え医者を呼ぶ。〈彼女の体は小柄でとても痩せていて、かなり線が細い。当然力もあまりなく、時々ふらつき立ち止まっては魏無羨が滑り落ちないように彼の太ももを抱え直しながら歩いていた。しかし、魏無羨はそんな彼女の頼りない背中に伏せていると、この上ない安心感を覚え〉(3-195)た。
 まだ十二,三歳という江厭離の姿は小さな母だ。魏無羨は四歳で両親を亡くし九歳で江宗主に見つけてもらうまで野良犬に追いかけられたり捨てられた果物の皮を拾って食いつなぐ浮浪児だった。彼を引き取ったことが江澄の母虞夫人(江宗主の妻)には面白くなく、なにかと魏無羨に罰を与え、罵ったりしたことがところどころで語られている。この屋敷の中で修為が身につかないと叱られる江澄にとっても気ままが過ぎると叱られる魏無羨にとっても江厭離は母なる存在だったのではないか。魏無羨が邪道を修めることを金子勲に咎められたときも厭離は毅然として彼をかばっていう。〈「阿羨が使った方法は、確かに他の方とは違います。ですが、それも彼が修練して得た実力です。……それで彼を邪道と言うのは少々理不尽なのではありませんか……それに巻狩は巻狩です。なぜ躾の話を持ち出す必要があるのでしょう? 阿羨は我が雲夢江氏の門弟です。本物の姉弟同然の間柄なのです」〉(3-173)
 大勢いる前で反論し謝罪を求める。これが魏無羨にとっては唯一彼をかばい守る存在としてあり続けた江厭離なのである。
 こうした彼女の包容力と芯の強さに少しずつ惹かれていく金子軒の気持ちもよくわかるし、のちにはこの金江夫婦はとても仲睦まじく、隠し事もしないという(3-297)。
 そういう仲の良さがどの程度魏無羨の耳に届いていたかは定かではないが、少なくとも彼女の婚礼衣装を纏った姿を美しいと褒め、その夫金子軒の悪口も控えるようにする(魏無羨をふたりの間にできたこども金凌の一月礼に招待したから)、ふたりの息子のために魔除けの鈴を作ってやるなど魏無羨の方でもこの二人の婚礼を受け入れていったし、間違いで温寧が金子軒を殺してしまったとき、姉とその息子の行く末を心配をしている(3-303)。魏無羨にとっては大切な家族としてこの江厭離とその息子金凌は意識され続けている。
 この物語にはもう一組の姉弟が登場している。温情、温寧の姉弟である。この二人は温氏のなかでも傍系で、他の世家への侵略殺戮などの行為とは無縁であったにも関わらず、温氏の一族としての非難を浴びていることは既に触れたが、この二人は魏無羨にとっては恩人でもあった。蓮花塢を攻められ江澄が捕らえられたときに助け出す手伝いをする温寧、それを黙認する温情。この二人のおかげで江澄の命は救われ、蓮花塢から逃げ延びることができた。また、殺された江氏夫妻の遺体についても温寧が必ず見つけて返すと約束する(遺体は岐山で焼かれ後日その遺灰が届けられた、3-188)。金丹をなくした江澄に魏無羨の金丹を移植したのもこの姉弟である。最も苛烈だった頃の温氏の中にいて、実は魏無羨と江澄はこの二人のおかげで生き延びた(注:江澄についてはほとんど眠っていたのであまり恩義には感じていない)。
 魏無羨の乱葬崗からの帰還から温氏は滅亡の一途を辿るが、魏無羨は積極的にこの温情温寧姉弟を助けるために動く(【5】)。前にも指摘したが、魏無羨の行動原理は「正義」である。少年時代からそうだったが、その一途さは夷陵老祖時代になると一層その傾向は強くなる。空気を読まない、加減をしない、自己保身をしない(だからこそ、江氏とは袂を分かつことになった第十六章「豪毅」)。
 「鬼将軍」と呼ばれた意志を持つ稀なる凶屍になる温寧は金子軒を殺してしまう。折しも金子軒に招かれ夫妻の間に誕生した甥金凌の誕生一月礼の祝いに参じる途中のことである。
(注:魏無羨)は胸に手を当てて自問しながら呟く。
「ここ数年の間、俺はいったいなんのために自分をこの乱葬崗に閉じ込めてたんだ? なんで俺がこんな目に遭わなければならないんだ? 俺はあの時、なんでこの道を選んだんだ? なんで、自分をこんなふうにしてしまったんだ?他の奴らを俺をどう思ってる? 俺は何を手に入れた? 俺がおかしくなったのか? 俺が? 俺が!」
最初からこの道を選ばなければ良かった。
「申し訳ありません……」
彼がつかえながら何度も繰り返し謝るのを聞き、ふいに魏無羨は自分をひどく滑稽だと感じた。
何もかも、温寧のせいではない。自分自身のせいだ。……
この武器をしっかり制御できなかったのは、自分だ。己の能力を過信しすぎたのも自分だ。そして、今までのの危険な前触れをすべて見過ごし、自分ならあらゆる暴走の兆しも抑え込めると思い込んでいたのも、すべて魏無羨自身なのだ。
〉(3-304)
 このあと温情と温寧は魏無羨を針で三日間動けないように寝台に残し乱葬崗を下りていく。金氏の本拠地に行って償うためだ。
ふいに、ある恐ろしい考えが心の底から湧き上がってきた。
 それはこの三日間、何度も何度も否定し続けてきたことだ。だが、それでも繰り返し現れ、どうしても消えてはくれなかった。
 温情と温寧が自ら出て行ったことで、もしかすると彼は心の奥底では、それを喜んでいるのかもしれない、と。
彼らがそうすれば、自分はいったいどうすべきかと思い悩む必要もなくなる。なぜなら温情と温寧は彼の代わりに選択し、この面倒ごとを解決してくれたのだから。
魏無羨は、手を上げて自分に平手打ちをすると低い声で自分自身を怒鳴りつけた。
「何を考えているんだ!?」
……頭を切り替え、何がなんでも、せめて温氏姉弟二人の遺体と骨だけは取り戻さなければと決意を固めた。
〉(3-311)
 何度も繰り返すが、彼の行動原理は「正義」による。それでもここで見せる逡巡は人間らしい弱さでもある。怨霊であると言い切るのを躊躇った理由もここにある。そもそも怨霊が自分以外のためにこんなに一生懸命になれるものなのか? それこそが乱葬崗の怨念をねじ伏せた彼の意志の強さなのだと言うことか。
 温情は殺され灰となって散る(命は命で償うのがこの世界の鉄則。最強の兵器たり得る温寧は意志を奪われ監禁されていた)。
 このあと、温氏の本拠地であった不夜天城で行われた四大世家を中心とする仙門百家の決起集会が行われ、その場に魏無羨は姿を見せる。一本の矢が魏無羨を貫き(【6】)、決戦の火蓋(?)が切って落とされた。
 この場にあろうことか江厭離が姿を見せ、魏無羨に戦うことをやめるように言うがこの戦場でのどさくさのうちに殺されてしまう。魏無羨はそれを見て逆上し、陰虎符を使ってしまう……。
 守りたかった江氏、とりわけ師姉江厭離を死なせたあとの彼の虚無感は射日の征戦後この世に残り続ける意味を問い直したであろう。
――なんのためにここにいるのか?
 その問いへの明確なひとつの回答として自己の昇華を導き出したのではないか。このあと、魏無羨はどうやってか乱葬崗に戻り乱葬崗殲滅戦を迎えることになるのである。
 乱葬崗にはまだ彼が守らねばならない温氏の残党たちがいる。殲滅戦のため各世家が乱葬崗に向かったのは不夜天から3ヶ月後。魏無羨は陰虎符の半分を砕きもう使えなくしてある。この時点で彼は死、もしくは消滅を覚悟していると言っていいのだろう。魏無羨はここで死ぬ覚悟をし、それはきっと温氏のものたちも同様だったのではないか。彼は「術の反動」と言っていたが、それも織り込み済みのことだったのではないか?
 そこで何が起こったのかは描かれない。読者は結果を知るばかりである。
 ただ、魏無羨とこの温氏残党については続きの物語がある。魏無羨が莫玄羽の献舎を受けてこの世に再びもどってから、もう一度第二次乱葬崗殲滅戦ともいうべき争いが起きる。その争いは滑稽とも哀れともいうべき筋書きから起こったが、それにしては破壊力は大きく魏無羨やその仲間である藍忘機、温寧、居合わせた仙門百家のものたちなどが窮地に立たされた。そこへこの温氏残党が血屍となって魏無羨たちを助けるために別の者が操る凶屍(死体)と戦う。これは誰かに命じられたものではなく(招きでもなく)、自らの意志によるところが大きいように思われる。魏無羨の危機に参じたのである。こうした動きを見せる凶屍(死体)はほかにない。もしかすると、これは凶屍というよりは鬼(怨霊)として甦ったという方がいいのかもしれない。戦い抜いて彼らは砂のように崩れてこの世を去る。去る直前礼を尽くそうとする彼らの姿には作中人物ならずとも胸を打たれる。
 そのあと、魏無羨は珍しいスピーチを行う。口達者で口の減らないキャラクターとして描かれていたが、彼は自己弁護らしきことを一切してこなかった(冗談に紛らわせる場合などは別として)。
 それがこんなことを彼や温氏をまだ責めるものたちへ向けて発する。
「あいつは足を一本なくしたけど、俺は八つ裂きにされた……お前は両親を亡くしたけど、俺はとうの昔に一家離散、一門から追放され、身を寄せるところのない犬になって、両親の骨灰なんて見たこともない……おまえらが言う温氏残党っていうのは十三年前に一度死んだんだ。そしてちょうどここで、ついさっき、その者たちは俺のために、お前らを助けるために、もう一度死んだんだ。今度は跡形もなくこの世から消え去ったんだよ……お前らに聞きたい。これ以上いったいどうしたらいいんだ?……誰もお前に俺を許せとは言っていない。俺がやったことはお前らだけじゃなくて俺も覚えてる。お前が忘れられないように、俺だってもっと忘れられないんだ!」〉(3-376)
 罪なく殺され、その死後もなお責められ続けるものたちへの哀惜。同時に、二度までもこの世から消える悲しみ。温氏の人々と魏無羨はその境遇が似ている。

補遺2【魏無羨の前世と今世】


 魏無羨は自分でも〈今世は前世と違った心境で、ずいぶんと落ち着いて対処できるようになっていた。〉(2-272)という自覚があるし、同じ不夜天での戦いについても、
「お前ら全員合わせて三千はいるか? 忘れるな。かつて射日の征戦では、三千はおろか五千人にも俺一人で挑んだんだ」〉(3-321)
 と前世では嘯いてみせるが今世莫玄羽の身体で甦った魏無羨は、
「三千人? あの夜の不夜天城には確かに三千あまりの修士がいたけど、でもその場には大世家の宗主たちや、各世家の精鋭に名士もいたんだぞ。そんなふうに際立った腕利きたちが顔を揃えていた場所で、本当に三千人をたった一人で綺麗さっぱり殺せると思うのか? お前は俺を買い被りすぎか、もしくはそいつらを甘く見過ぎているんじゃないか?」〉(3-334)
 と、至って謙虚に冷静にその夜のことを分析している。
前者については戦いに臨む前の自らを鼓舞し煽り敵をひるませる意図があったとしても、後者の冷静さはまるで人が変わったように落ち着いている。このあたりの魏無羨の今世の穏やかさは読む側にも安心感がある。
 たとえば、魏無羨は自分の過去の姿に触れては、
やや傲慢に見えるその青年は、いかにも造詣の深さは計り知れずといった風情で、どこか世の中を見下している様子だった。魏無羨は若き日の自分の生意気な態度を見てにわかに歯がゆさを感じ、気取った態度のそいつに 飛びかかって、思いきりぶちのめしてやりたい衝動に駆られた。〉(2-235)
 
「魏公子は以前、規則や礼儀礼節など細々と煩わしいことは一切気にしたくないし、剣を持たないくらいでなんだ、たとえ服を着ていなくたって、誰も自分に無理強いすることはできない、と言っていましたよ。若さゆえ ですね」
  当時の自分の思い上がった妄言を他人の口から聞かされると、なんとも言い難い気分になった。魏無羨は面目なさを覚えたが、今さらどうすることもできない。
〉(2-236)
 十三年間眠っていた魂が成長したのか、身体が伴えば人としての穏やかさが戻るのか。



補遺3【前稿BLに付けたし】


 温晁に乱葬崗に落とされた魏無羨を思うとき、彼は十七歳。恋を知ることもなく殺されたのだなと胸をつかれる。だからこそ、莫玄羽の身体でこの世に甦ってきたときにはどうか幸せになってほしいとそれだけを願いたい気持ちにさせられる。
 友としてあるいはそれ以上の存在として彼を追い続けた藍忘機が、魏無羨の魂の帰還を確信したとき、身体がどうこうなんて問題は超えてしまうかもしれないなあとも思えてきた。  

 なにしろその魂を抱きしめたいと思ったときには、そこにある身体を抱きしめるしか我々には方法はないのだし。

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