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AJICO@Zepp Shinjuku

2024年4月24日(水)

Zepp Shinjukuで、AJICO。

Zepp Shinjukuには初めて行った。新宿なので、Zepp系列のなかでは家から近くてありがたい。けっこうなキャパだし、この日はあいてなかったけどバーも充実しているようだし、長めのイベントとかでもこのハコは悪くなさそうだ。

ってなことはさておき。「アジコの元型」ツアー・ファイナル。7月に追加公演も決まったが、とりあえずの区切り公演である。

3月30日の日比谷野音公演も観たが、あの日は初夏のような天気で、まさしくAJICOの新作収録曲じゃないが「あったかいね」と言いたくなった。が、ファイナルのこの日は雨が降って肌寒く、ベンジーは「あったかいね」を歌う際、「さっむいね」と歌っていた(「半袖でいいかも」はそのまんまだった。「長袖がいいかも」にかえて歌ってほしかったですねw)

追加があるとはいえ、とりあえずファイナルなので曲名書いても問題なかろうから書いてしまうが、オープナーは野音同様、最高にかっこいいロックなディスコ曲「ラヴの元型」だった。初っ端から「キターー!!」ってなもんで、昂揚して踊りたくなって、その気持ちに素直に踊りながら聴いたわけだが、多くの客は遠慮してるのか様子見なのかさほど踊るでもなくおとなしく聴いてる感じだった。が、2曲目で(野音もそうだったけど)後半にやるのだろうと思っていた代表曲「ペピン」がきて、ベンジーが歌うところになったら多くの客が一斉に沸き、そこから熱度が一気にあがったようだった。因みに今回の「ペピン」は鈴木さんの鍵盤によるイントロがステキで、その段階ではまだその曲だとわからなかった人も多かったと思う。

野音は野音で開放感があって、夕空とも合っていて気持ちがよかった。けれど、ライブハウスで近い距離で観て音を浴びるよさというのが、ああいうバンドなのでやはりある。あちこちツアーで回ってきたからだろう、3月の野音のときよりもグルーブの強度が遥かに増していると感じた。近かったからそう感じた……というだけではなかったと思う。あの曲をやったこの曲をやったという以前に、そのグルーブを体感できているというだけで幸せだった。そう思えるくらいのベースでありドラムでありギターであり鍵盤でありヴォーカルであり、そしてその合わさりなのだ。極上のアンサンブルなのだ。

UAとベンジー、もちろんほかのメンバーもだけど、とりわけふたりが本当に楽しそうだった。MCではUAとベンジーが駄洒落を披露。「パンナコッタ食べたらパン残った」(UA)に対し、ベンジーが考えたという駄洒落を鈴木さんがかわって披露した。新幹線での移動中、ベンジーが抹茶アイスを買って言ったのだそうな。曰く「ちょっとまっちゃ。アイス高イス」。そのあと僕は、「あったかいね」にかけて「アイス高いね」という大オチがくるんじゃないかと心のなかでニヤニヤしてたんだが、そういうことではなかった。

まあそんなユルくてリラックスした雰囲気も醸し出しながら、しかし曲が始まればそのリラックスタイムがなかったかのように途端にビシっと引き締まる。ひきずらない。切り替えが完璧。さすがだ。

サプライズ的な演出もあった。UAの「悲しみジョニー」は以前からAJICOのライブでも度々歌われている曲だが、今回はUAがステージを降り、フロアの真ん中あたりまできて、そこに立てられた脚立にのぼって歌ったのだ。

また、今回もブランキーの曲が歌われたのだが、野音で歌われた「ガソリンの揺れ方」にかわって、この日は「赤いタンバリン」がベンジーによって歌われた。これには観客みんな大興奮。UAは最後、叩いていたタンバリンを投げ込んだ。

終盤では、これはファイナルだからだろう、さっきの駄洒落MCとうってかわって、UAがメンバーひとりひとりを紹介しながら感謝の気持ちも述べていった。ベンジーは座ってアコギを弾いていたのだが、急に弾くのをやめて立ち上がり、UAへの思いを口にした。今回のツアーで(UAを)好きになった、いや前から好きだったけど、もっと。というような言葉だった。正直な人だ。純粋な人だ。僕はといえばそんなベンジーが今回のAJICOを通してもっと好きになった。

ベンジーはそんなふうに心を開いていた。このバンドだとそうなるのだろう。UAのあのオープンマインド度合いに感化されるのだろう。ふたりは、というかメンバー全員がだろうが、こんなふうに影響しあい、されあいながら、AJICOをやっている。なんてステキなことなんだろう。

それからUAはこんなことも言った。「私たちは今日こうして音楽を楽しめているけど、遠い空の下では人がたくさん殺されていて。24年前も同じようなことを言ったと思うけど、なんにも変わってないね。でもロックは戦争をとめるためにあると思うからAJICOは続けます」。そうして「毛布もいらない」を歌った。ゾクゾクするくらい素晴らしかった。

アンコールが終わって、これで終わりかと思ったが拍手が鳴りやまず、それに応えて再びベンジーが出てきて、ほかのメンバーがあとに続いた。そしてもう1曲。オープニングにやった「ラヴの元型」をイントロのギターリフをベンジーが長めに弾いて、もう一度やった。オープニングのときとは違い、みんながカラダを動かして気持ちを開放しながら聴いて盛り上がっていた。そのことが、このライブがいかに最高だったかを証明しているようでもあった。

楽しかった。かっこよさと楽しさが線で繋がっていて、だから最高なんだと思った。こんな大人のロックバンド、なかなかない。


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