うじき最強セッション@CLUB Que
2024年10月2日(水)
下北沢CLUB Queで「うじき最強セッション@CLUB Que 30年をぶっとばせ!」。
CLUB Que30周年イベント・シリーズの一貫で開催された、うじきつよしを中心としたセッションの一夜。
開演予定時間の少し前にオープニングアクトとして無限放送の井垣宏章が弾き語りで数曲。初めて観たが、強烈なキャラだ。
本編はまず、仲野茂。現在力を入れている仲野茂バンドではなく、この日だけの特別編成で、メンバーは仲野茂(ヴォーカル)、下山淳(ギター)、樋口素之助(頭脳警察。ドラム)、MARCH(Captain Hook。ベース)。
外道の「香り」で始まり、ピストルズの「アナーキー・イン・ザ・UK」(日本語詞)、スターリンの「ロマンチスト」、頭脳警察の「ふざけるんじゃねえよ」など全8曲を演奏。茂さんの気合いと声のパワーが相変わらずすごい。60代であれだけの迫力ある歌声を出せる歌手はそうそういないよなと改めて実感。そんな茂さんのルーツでもあるバンド(外道、頭脳警察、ピストルズなど)の曲が多めで、最後に「ふざけるんじゃねえよ」を歌う際には「パンター! ふざけろ!」とシャウトした。ギターの下山には途中でハグするなど、やはり相当の信頼を置いている様子。またCaptain HookのMARCHと頭脳警察の素之助のリズム隊もよかった。仲野茂バンドの竹内理恵さんといい、茂さんのバンドに女性メンバーがいるのはとてもいいなと僕は思う。
セットチェンジを挿んで、後攻はうじきつよしを中心とした「うじき最強セッション」。メンバーは、うじきつよし(ヴォーカル&ギター)、佐藤タイジ(ギター&ヴォーカル)、澄田健(ギター&ヴォーカル。VooDoo Hawaiians、シーナ&ロケッツ)、寺岡信芳(ベース。リクオ with HOBO HOUSE BAND、怒髪天)、椎野恭一(ドラムス。AJICO)の、まさしく最強セッション。ジミヘン「リトルウイング」で始まり、澄田をフィーチャーしたセクションではサンハウス「地獄へドライブ」やJ.B.(またはシナロケの)「I Feel Good」、タイジをフィーチャーしたセクションではシアターブルック「ありったけの愛」とプリンス「パープルレイン」をやり、続いてストーンズ「ホンキートンクウィメン」(日本語詞)やスリードッグナイト「ジョイ・トゥ・ザ・ワールド」も。アンコールではこのメンバーに下山と樋口素之助も加わって「クロスロード」を。4ギターの厚みはとてつもなく、うじきさん曰く「レーナード・スキナードみたい」。さらには仲野茂と井垣宏章も加わって頭脳警察「悪たれ小僧」と清志郎版「サマータイムブルース」を。それでもアンコールの声がやまずに、何やろうか? などと言いながらザ・バンド曲をうじきが日本語詞で歌って幕を閉じたのだった。
豪華にして想像以上のパワーを感じるセッションだった。まず、うじき、タイジ、澄田のギタリスト3人。その個性の違いが面白く、それが合わさった際の出音がものすごかった。また、椎野恭一のドラムに、アンコールでは素之助が加わってツインドラムとなり、その際の鳴り音もすごいものがあった。それでも一貫して強力なリズムがキープされるのは、やはり寺岡のベースの安定感あってこそ。うじき、タイジ、澄田という個性の異なるギタリストたちが自由に暴れまわれるのは、寺岡と椎野のリズムの安定があるからこそだなと強く感じた。
タイジさんの名場面、澄田さんの名場面など、各所に印象的なそれがあったが、総じて強く印象に残ったのは、やはりこれだけの凄腕&クセ強ミュージシャンたちに自由にプレイさせながら締めるとこは締めるうじきさんのリーダーシップだ。しかも最初から最後までず~っと笑顔。あんなに楽しそうに弾いて歌う人はなかなかいないし、人としてもミュージシャンとしても懐の深さを感じさせた。また、メンバー紹介の仕方も丁寧かつ気持ちがこもっていて、ひとりひとりとの出会いのエピソードなんかも楽しく話したり。つくづくあたたかな人で、そりゃあみんなから信頼されるわけだ。
それともうひとつ。茂さんのバンドで「ふざけるんじゃねえよ」が演奏されたり、うじき最強セッションで「悪たれ小僧」が演奏されたり、頭脳警察の樋口素之助がベテランたちに混ざって素晴らしいプレイを見せていたり。そんなこんなでパンタさんの存在を感じる場面も少なくなかった。澄田さんは鮎川さんの曲も演奏したし、プリンスやどんと(「夢の中」)の曲も演奏されたし、このようにして亡き者たちのスピリットは残り続けていくのだなと、そんなことも思ったライブだった。
長く日本のロックを聴き続けてきた人間にとっては、これだけのミュージシャンたちが一堂に会してそうした曲をセッションするのだからまさにたいへんスペシャルな夜だったわけだが、その貴重さ・面白さが外にそれほど伝わっていない(SNSでもさほど話題になっていない)のは少し残念というか不思議なところ。こういう場に自分の意思で立ち会おうとする編集者やライターがもっといてもいいのに…とは思うがまあ、そんなことを嘆いてもしょうがない。今でもこういうロックから離れられない自分がこうして少しでも伝えていけばいいのだ。
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