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ビッケブランカ@中野サンプラザ

2021年3月28日(日)

中野サンプラザで、ビッケブランカ。

春の嵐が吹いた週末の夜、Devil Tour ”Promised“ファイナルの2部を観た。

3rdアルバム『Devil』を携えてのツアー「Tour de Devil」、その東京・中野サンプラザ公演は、本来なら2020年5月9日に行なわれるはずだった。が、コロナで延期。「まっしろ」「Cava?」の国内ヒットや「Black Rover」「Black Catcher」の国外での人気も手伝って勢いとまらずの感があるそのなかで初のホール公演を迎えるはずだっただけに、「ああ、いま観たかったな」と延期が発表されたそのときはそう思ったものだ。

当のビッケにしても、2020年5月に初の単独ホール公演を成功させ、そしてその年の後半にはもう次のレベル、次のステージへ駆け上がることをイメージしていただろう。

しかし、それから約1年が経って、遂に、ようやく実現した中野サンプラザ公演を観ながら、僕は「いま観ることの意味」を感じ、考えもしていた。こんな世の中になり、まだまだ収束の予感すらない2021年3月の終りにこのライブが開催されたことに、幸福感と換言することもできるようなありがたさを感じた。中止になるライブもたくさんある。が、約束通り、このライブはこうして(客数を半分に抑え、そのかわり2部制にして)開催された。それはネガティブな要素のカケラもない、とことんハッピーで誰もが「楽しい」という気持ちを実感できるエンターテイメント・ショーだった。

DJスタイルに則ってEDM風味の「キロン」をビッケが歌い、その途中でバンドメンバーたちがミュージカルの出演者のように登場する、そんな開幕から約2時間。ロックスターのように激しめに魅せるパートがあれば、ピアノバラードをじっくり聴かせるパートもあり、代表的な曲を次々に続けて盛り上げるパートもあるといったふうに、まさに「やりたいことの全部盛り」といった感じの多彩なショー。これまで彼がやってきたいろんな場所・いろんな形でのライブの積み重ねが活きた、ある意味ではひとつの(現時点での)集大成と言えなくもない2時間だった。

ある時期から長きに渡り、ビッケのライブはギター、ベース、キーボード、ドラムスという4人の固定ミュージシャンからなるバンドと共に行われてきたわけだが、ホール公演(を含んだツアー)故だろう、今回はほぼ全編で弦や別鍵盤を加えた8人バンドが演奏し、ハコの大きさにも相応しい厚みのある音が鳴らされていた。ベースもビッケの後輩でよくステージでいじられていた大澤DD拓海から、よく跳ねながら弾くHALNAへと代わり、リズムの変化が見られた。そのHALNAさんや、ビッケバンドのもうひとつの「顔」とも言えるにしのえみさん始め、8人中5人が女性となり、見え方としての華やかさも増した印象。そしてよく演奏されていた曲のアレンジもけっこう変わったりしていて、それもやはりホールに映えるものだった。

主役のビッケの、いつもより大きな動き(それはサンプラのステージの高さと広さを有効に使ったものだった)といつも通りの大きな歌声も実にホール映えするもので、つまり見せ方の面でも聴かせ方の面でも会場の特性をよく考えた上でのショーの作り方だったというふうに感じられた。端的に書くなら、大きなハコでこそ映える編成・構成・動き・照明・曲アレンジだったということだ。

飽きる瞬間の微塵もない約2時間だったが、自分的には「白熊」「Lucky Ending」「TARA」とピアノ主体のスローを3曲続けたパートにグッときた。とりわけビッケ史上屈指のバラードだと思っている名曲「TARA」の歌表現の仕方がしっかり2021年のものになっているように感じられたのが、よかった。「ライブではもうずっとやっていなくて。今度やるとしたら、過去の曲として聴いてもらうより、このアルバムに入れたうえで歌ったほうがきっと価値が出るだろうってことで入れました。ライブでやりたいから入れたっていうのが一番正直なところですね」と、「TARA」をリミックスして『Devil』に再収録したことの理由について、自分の担当したナタリーのインタビューでそう話していたビッケだったが、その思いがちゃんと生きて、ここにいるみんなを感動させていると、そう思えた歌唱っぷりだった。

それと、終盤の代表曲連打のなかに入れこんで聴かせた「Avalanche」。その歌唱がものすごくエモーショナルで、個人的には今回そこがもっともグッときたところだった。

それから「アンコールだから、このくらいの(ラフな)感じで」と力を抜くそぶりのフリのあと、しかしいざ始まればそんなことなく、優しい気持ちを込めつつ歌われた新曲の「ポニーテイル」。刺激よりも素直さの側に振り、アコースティック味のある音に乗ったこの曲の歌唱表現も、ほかの曲とは違いながらも(違うからこそ?)素直に心に響いたものだった。

いやそれにしても、この濃いめのショーを1日に2回やりきるとは、まったくたいした体力・精神力。それもきっと、観客たちの静かなる熱意(拍手の強さ)あってこそなのだろうね。

あ、ところで、あの「アラジンと魔法のランプ」風味の衣装には何か意図とかテーマ性があったのだろうか。意図不明だったけど、まあ似合ってたからいっか。

*配信アーカイブ視聴は4月4日(日)23時まで。

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