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TULIP@東京国際フォーラム ホールA

2023年7月2日(日)

東京国際フォーラム ホールAで、TULIP「50周年記念ツアー “the TULIP”」

前にTULIPを観たのは15年、いや20年くらい前だっただろうか。はっきり覚えてないのだが、それも今回と同じ国際フォーラムのホールA(2階席。今回は1階席)で、母と一緒に観たのだった。

中学~高校にかけて自分が一番好きだったグループはアリスなのだが、チューリップもよく聴いた。アルバムで言うと『日本』と『MELODY』の頃に特にハマって聴いた。75~76年だ。その頃住んでいたのは小さなアパートだったので、レコードをかければ母も一緒に聴くことになる。だからあの頃よく聴いていたアリスやチューリップや陽水や拓郎の曲は、自分にとっての青春の曲であると同時に、母にとっても思い出の曲だったりする。

昨年秋にNHKで放送されたチューリップのドキュメンタリー『僕の“最後の歌”を届けたい〜財津和夫 TULIPラストツアー〜』を見て、財津さんの言葉が心にずっしり響き、そのときに「最後のツアー」を観ておかなければならないと思った。できればまた母と一緒に観たいと思った。

いま91歳の母は、一昨年あたりからコロナ禍の外出控えもあって足腰がだいぶ弱くなっていた。一昨年の5月末には家で転倒して尾骨にヒビが入り、10月には再び転倒して今度は股関節を痛め、しばらく歩けなくなっていた。が、治療の甲斐あって昨年のある時期からだいぶ治り、杖をつきながらだけど、ひとりで出かけたりもできるようになった。昨年9月に「来年(2023年)7月にチューリップのコンサートがあるんだけど、行かない?」と誘ったときには、まだ街へ出ることや会場の階段をのぼり降りすることに自信を持てないようだったけど、とりあえずチケットを買っておく、もしその時期になっても不安なようだったら誰か友達を誘うから、と言って、僕はチケットを2枚獲った。

今年になって母の足腰はかなりよくなり、数週間前には妻の車で妻の実家に一緒に行ったりもした。それによって歩くことの自信がだいぶついたようで、先週になって再度聞いたみたところ、(チューリップのコンサートに)行く!と決断してくれた。というわけで、母の家に迎えに行って一緒に有楽町に向かったのだった。

客の年齢層は極めて高い。ライブの途中、メンバーの宮城さんが年齢層調査とか言って「10代の人」と聞くと、シーン。「20代の人」と聞くと、拍手がパラパラ(でも意外と少なくはなかった。親の影響で聴いている20代がけっこういるということだ)。「30代の人」と聞くと、パラパラ。「40代の人」と聞くと、まあまあ増えた。「50代の人」と聞くと、だいぶ拍手の音が大きくなった。そして圧倒的に多かったのは「60代の人」だ。たぶん7~8割が60代だったんじゃないか。「70代の人」と宮城さんが聞くと、だいぶ減ったが、それでもまあまあ拍手があった。そして最後に「80代以上の人」と聞くと、2~3人が拍手。「へえー、80代の人もいるのか?!」といった感じでそのとき少しどよめいていたが、僕は「ここにいますよ、91歳が」と言いたくなった。

ライブは2部制で、17時半に始まって終わったのは20時半頃。休憩の15分を除くとおよそ2時間45分くらいやっていたことになるが、自分の体感的にはけっこうあっという間だったし、母もそう感じたそうだ。つまり、少しも飽きさせない、よく練られた(喋りと演奏のバランスもちょうどいい)ショーを、チューリップはいまもやっているということだ。

ツアーは続くのでセットリストには触れないでおくが、1部は「誰もが知っているわけではない曲」「おお、それやるか?!」といった曲と有名曲とをいい塩梅に混ぜて演奏。2部ではシングル曲、ヒット曲、ライブでのお馴染みの曲を多く演奏した。もちろんほかにも聴きたかった曲はたくさんあるが、それを言い出したらキリがない。十分に満足のいくセットリストだったと言える。

財津さん、姫野さん、上田さん、宮城さん。このメンバー4人に加え、サポートメンバーが3人。(曲によっては)トリプル・ギター、ツイン・ドラム、ツイン・キーボードとなるわけで、ロック調の曲においてのダイナミクスも文句なし。バンドアンサンブルは見事なもので、こう言っちゃ失礼だが想像していた以上だった。さすがだ。ではヴォーカルはどうか。少し心配もあった財津さんだったが、思っていた以上に声がよく出ていて伸びやかだったし、冗談をたくさん言ったり、「有楽町で逢いしましょう」を歌いだしたりと、ゴキゲンで、とても楽しそう。また姫野さんの歌声は、あの頃と変わらない……いや、もちろん変わってはいるのだろうけど、そうは感じさせないあの黄金のヴォーカルのままのようで、改めて稀有で素晴らしいヴォーカリストだなと思った。そしてチューリップと言えばハーモニーだが、それも変わらず厚みがあって素晴らしく。財津さんは自分(たち)のことを「ジジイ」と言うけど、いやいや、むしろ若々しさを感じた3時間近くだった。

財津さんは姫野さんについてのMCのなかで、最後に「大好きです」と言った。姫野さんは姫野さんで観客たちに感謝を述べる際、「みなさんのことが大好きです」みたいなことを言った。70いくつのおじさんがこうして「大好き」という言葉を素直に発することの素敵さを僕は思った。自分もいくつになってもそうありたいとも。

横で観ていた母はといえば、1部では席に座って静かに聴いていたけど、休憩時間に「すごいのねえ」と言った。そして2部のある曲(昔、アパートで一緒によく聴いた曲だ)では席を立ちあがってそれを聴いていた。アンコール、財津さんが「みなさん大きな声で一緒に歌ってください」と言ってあの有名な曲を歌い始めると、母はまた立ち、一緒に歌っていた。終わって出口に向かうとき、「歌いながら感動して涙が出ちゃった」と言った。

食事をして母を家まで送り、自宅に着いて少しするとラインがきた。「この何年間忘れていた音楽の楽しさを思い出しました。感動です」と書いてあった。

一緒に行ってよかった。
ありがとう、チューリップ。
そう言いたい。

↑昨年作った「僕の好きなチューリップ」のプレイリストです。




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