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ジョン・バティステ@神田スクエアホール

2023年10月6日(金)

神田スクエアホールで、ジョン・バティステ。

ジョン・バティステ、待望の初来日公演だ。会場はキャパがスタンディング時で1000人の神田スクエアホール。第64回グラミー賞で最多の11部門にノミネートされ、アルバム・オブ・ザ・イヤーを含む5部門を受賞したアーティストの初来日公演にしてはずいぶん小さな会場であり、とにかく速攻でチケットを獲らねばすぐに売り切れて観ることができなくなってしまうだろう。そう思って発表後にクリマンの先行ですぐに獲ったら、整理番号はなんと13番!   ちょっと驚く。

どうやらアメリカでの人気に比べると日本はまだまだのようだが、しかし今の彼の単独公演を1000人キャパの会場で観ることができるとはラッキーだ。そして実際、いまこれを観ることができて本当によかったと実感できたライブだった。

チケットには「Premium Showcase in TOKYO」と書かれており、つまりこれはショーケースという位置づけ故にフルバンドではなく、サポートするミュージシャンはドラムスとパーカッションのみ(キーボード奏者もどうやらいたようだが、観客から見える位置にはおらず、自分の目では確認できなかった。が、確かに鍵盤音は鳴っていて、自分はそれはプリセットされたものだと思っていたが、実際はどうだったのか)。初めはずいぶん簡素だなと思いもしたが、始まって少しして、これで十分な編成だと思い直した。というのも、ジョンが何曲めかでピアノもプレイしだし、さらにメロディカ、ギター、サックスと、曲毎にあれこれの楽器を自在に用いて音を膨らませていたからだ。

用いた楽器のなかではとりわけピアノの自在な弾きっぷりに耳を奪われ(終盤の曲では右手と左手で違う曲を弾いて合わせるなんてことも!)、彼の音楽人生は鍵盤と共にあったのだなと感じた。メロディカもまた身体表現と言えるくらいに彼と一体となっていた。それに比べるとギターはまあほどほどにたしなんでいるといったレベルか。

音楽性的にはざっくり言えばニューオーリンズ表現と新作で一気に前傾化したカリブ的なノリが混ざり合いながら展開していくもので、中盤以降はときどきそこにブルーズやロックの成分も混ざってくる感じ。序盤からわかりやすくすぐに伝わったのは、彼の底抜けの明るさだ。こんなに陽気な人なんだ?! っていうくらい。ね?  音楽ってこんなに楽しいものなんだよ! と、彼は笑顔で、動きで、演奏の仕方で、全身で、伝えていた。

それが特によく表れていたのは、メロディカを演奏しながらの客席練り歩き。ステージを降り、客席に分け入り、観客を巻き込みながら実に楽しそうに演奏して歌う。約1時間40分のショーのなかで彼はなんとそれを3回もやったのだ。このあたりは路上で演奏してどんどんそこに群がって大きな盛り上がりになっていくニューオーリンズのスタイルそのまんま(ジョンはニューオーリンズ出身)なんだが、彼の場合は全てにおいてニューオーリンズ感丸出しというわけじゃなく、それをいろんな国、いろんなジャンル、いろんな音楽史に接続させていっているのが面白し、個性的だし、意義深い。

スティービー・ワンダーの曲のカヴァーもあったりでやはりスティービーからの影響は大きいんだろなと改めて思ったところあり。またいろんな楽器を自分で使って音楽の高揚を伝えるやり方にプリンスからの影響もチラと感じたところあり。個人的にはもうちょっと何らかの色気も備わったらもっと好き度が増すのだが、と思うところもあるにはあったが、こんなにもハッピーなあり方のライブで彼が何を目指して何を伝えていきたいのかはかなり理解できた気がした。

日本でももっと人気者になって、今度はフルバンドでのフルショーを武道館で……なんてふうになっていくことを期待してます。

歌いながら客席を練り歩いて目の前を通ったジョン。この近さ!

新作についてはこちらにわかりやすく書きました↓



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