見出し画像

『ただ悪より救いたまえ』感想。

2021年12月24日(金)

吉祥寺アップリンクで、『ただ悪より救いたまえ』。

予告を観て、これはやばそうだと期待が膨らみ、公開初日に観に行ったんだが、期待を上回る傑作だった。

ただひとつの幼き生命を護りたいがために暴走する元韓国国家情報院の工作員と、殺すことにしか感情の動かないイカれた殺し屋。大量に人を巻き込んで躊躇なき殺戮を繰り返しながら、どこまでも相手を追いかけ殺し合うふたりを描いた、血みどろの韓国ノワール。

『イカゲーム』主演のイ・ジョンジェがあれとは真逆の非道な殺し屋レイを演じてるんだが、その最凶ぶりは『虎狼の血LEVEL2』の鈴木亮平を上回るほど。なぜそこまで殺しに執着するのかとと問われて「理由は忘れた」と答えるあたりのゾワゾワ感といい、とにかくやばすぎで怖すぎる。

『チェイサー』『哀しき獣』『殺人の予告』などの脚本に携わったホン・ウォンチェンの監督作だけあり、脚本が練られている。なくてもいい場面、なくてもいい台詞がひとつもなく、これを観たいまとなっては、やはり狂気的な殺し合いを描いていた『虎狼の血LEVEL2』との差を思わずにいられない。世界水準のアクションにも陶酔できるし、汗が肌にベトッと滲むバンコクの湿度までも焼き付きた映像には特有の美しさもある(撮影監督は『パラサイト 半地下の家族』などのホン・ギョンピョ)。何しろ緊張感の緩む瞬間がまったくない!

また、執拗に殺し合うふたりには、意志疎通などないながらもある種のブロマンス的なものも感じたし、インナム(ファン・ジョン・ミン)とトランスジェンダーのユイ(パク・ジョンミン)とのある種のバディ感もいい。パク・ジョンミンという役者さんの演技は絶賛に値するな。

劇場を出て吉祥寺を歩きながらも、殴られたみたいな感覚がしばらく残り続けた。自分的には2021年の年間ベスト5入り決定。もう一回観に行こう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?