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Caravan@日比谷野外大音楽堂

2023年10月9日(月・祝)

日比谷野外大音楽堂で、Caravan。

起きたら雨。昼間もずっとくずついた天気で、しかもかなり気温が低い。晴天の野音でビール飲みながらCaravanを聴く気持ちよさをイメージしていたので、あいたたた。風邪をひかぬよう、薄手のダウンを着て、レインコートも持って会場へ。開演少し前まで天気はぐずついていた。

でも、始まったらば、やんだのだ、雨。結局ライブが終わるまで降られなかった。そしてライブが終わり、地下鉄で家の最寄り駅の地上に出たらば、またけっこう降っていた。つまりライブの間だけ降りやんでいたわけで。Caravan、もってるなぁ。

14回目となるCaravanの日比谷野音公演。来年以降に野音は建て替えが始まるので、今の野音での最後のCaravan公演となる。そしてこの日・10月9日はCaravanの49回目の誕生日。観客からは早い段階で「誕生日おめでとー!」の声がかかり、終盤ではサプライズで椎野さんが花束を手渡したのに続き、バンドメンバー全員が“何か“をCaravanに渡して祝っていた。Caravanは何度も「ありがとうございます」と言い、「こんなふうにこの場所で誕生日が迎えられるなんて」と喜びもひとしおといったふう。「野音は観客として何度も来ていた場所」であり、「初めてそこでやれたときにはライブ中に思わず泣いてしまった」と言うくらいだから、そこでのバースデイなんてそりゃあハッピーに決まってるよな。おめでとう、Caravan。

始まり方からしていいライブだった。ステージに登場すると、そのまま向かって左側の段を降り、客席通路を通って、客席ど真ん中に設置されたマイクスタンドの前へ。笑顔でみんなの顔を見渡してから「Feed Back」を弾き語る。10年前(2013年)の野音のオープニングの再現だ!

やがてメインステージでバンドメンバー4人(高桑圭a.k.aカーリー・ジラフ、椎野恭一、宮下広輔、堀江博久)が演奏を始めると、ゆっくりCaravanがそこへ移動。息の合った豊かなバンド演奏にCaravanが歌を乗せ始めた。

歌入りでは3年振りとなるニューアルバム『1974』を9月に配信リリースし、このライブ日にCDも発売。ならばその新作曲が主体のライブになるだろうと思っていた人もいただろうが、そこからの曲もやりつつ、総体的にはこれまでのキャリアのベスト選曲的な内容。集まった人たちはそれぞれの「聴きたかった曲」が演奏されると、イントロの段階で拍手と声を大きく送っていた。

拍手と声と書いたが、深刻なコロナ禍時期がとりあえず過ぎ、またみんなが好きなように「声」が出せるようになったのは(客にとってもCaravanにとっても)大きなことだったはずだ。なんといっても、いくつかの曲でみんなが腕を振ったりしながら、一緒にコーラスしていた。一緒に歌っていた。それが大きかった。よって、声が出せなかったときの野音公演とは明らかに異なるあたたかな空気感・幸福感がこの日の会場に満ちることになった。

ところでCaravanの曲の多くはミッドテンポである。故にロックミュージシャンのライブのように温度が高まりつつあるところでとびきりのロックンロールナンバーをおみまいして大盛り上がりになる、というあり方ではない。“わりとアップめ“くらいの曲はあるにはあるが、基本はミッドからスロー。けれどもそれが続いていく気持ちよさというのが確かにあるし、気持ちいいだけではないドラマチックな感覚、あるいは滋味深さのようなものも味わえる。しみじみと、いい演奏、いいメロディ、いい歌詞、いい歌だなぁと、改めて噛みしめながらグッときてしまう瞬間が何度かおとずれる。自分の人生と歌のなかのフレーズが重なり、救われた感覚になったり肯定してもらえた感覚が得られたりもする。その感覚を味わいたくて自分はCaravanのライブに足を運ぶのかもしれない。とか思ったりもした。

「これ聴けたー、嬉しい」という曲がいくつもあったが、個人的に最も心にきたのはアンコールの最後の「Soul Music」だった。照明とステージの背景はどこか幻想的というか夢のなかにいる感覚をもたらし、立ち上がって聴いていたらサビの「それは光~」というフレーズがカラダの奥のほうまで入ってきた。Caravanは光をよく歌う。その見ている光がどういうものか、自分にも見えた気がした。スローミュージックの幸福。Caravanの長く続けてきたことがそこに集約されているような気もした。

音楽の「よろこび」がそこにあった。
そうだった。そういえばこのライブのタイトルは「Rebirth of Delight」だった。


↑新作『1974』に関してCaravanに話を聞きました。ぜひご一読を。

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