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リクオ presents KANREKI HOBO CONNECTION~JIROKICHI編3days第三夜(リクオ、チャールズ清水、Dr.kyOn、伊東ミキオ)

2024年9月7日(土)

高円寺JIROKICHIで、リクオの還暦記念ライブ「リクオ presents KANREKI HOBO CONNECTION~JIROKICHI編3days」その3日目。共演はチャールズ清水、Dr.kyOn、伊東ミキオ

鍵盤ロック、あいるは鍵盤ソウル、鍵盤ブルーズ。そういうのが好きな人なら興奮して熱くなってじっとしていられなくなるライブだったはずだし、僕も「うっひょ~」「こりゃすげえわ」「たまらん」となる瞬間が何度もあった。この夜出演の4人みんなが、とんでもないスキルと音楽愛を持ち続ける鍵盤奏者。ソロでもグッと引き込む力のある彼らが、デュオでやったり、トリオでやったり、終盤では4人全員でやったりも。とりわけ4人のアンサンブルは超絶的。いやもう凄かった。さながら鍵盤と身体がひとつになった神々の遊び。こんなの初めてだし、JIROKICHIの決して広くはないステージにグランドピアノ1台とキーボード3台が並んでいる状態からしてレアだった。

CRAZY FINGERS(クレイジーフィンガーズ。略してクレフィン)というピアニスト集団がかつてあって、20年前くらいに精力的に活動し、CDもスタジオ盤とライブ盤を出している。メンバーはDr.kyOn、リクオ、斎藤有太、伊東ミキオ、YANCYの5人。でも僕はクレフィンのライブを一度も観たことがなかったし、CDも聴いていなかった。だからこそ新鮮だったし、驚いた。体験していないのでわからないけど、クレフィンのライブもこんな感じだったのだろうか。

そのクレフィンのうちの3人が、スペシャル・ゲスト的にチャールズ清水さんを迎えてセッションするという夜。JOROKICHI3daysの3夜目にこのプログラムを持ってきたことには、リクオ自身の原点確認みたいな意味合いもあったのかもしれない。

初っ端、Dr.kyOn、リクオ、伊東ミキオの3人で弾き始めたのは、スタイル・カウンシルの名盤『カフェ・ブリュ』の1曲目で、ミック・タルボットの洒落たセンスがそのまま表れていた「Mick's Blessings」!   この曲が大好きだった僕はそのとき「うぉーっ!」と一気に熱くなったのだが、あとで調べたらこれ、クレフィンの2004年作『ピアノフォルテ』のオープナーでもあった。こんな曲もやってたんですね。

以下、印象に残った場面をいくつか記しておくと。Dr.kyOnと伊東ミキオのデュオでは、伊東がサンハウスの「なまずの唄」をグッとテンポを落としてブルージーに歌い、歌い終わって「鮎川誠~」とその名を呼んだ。するとkyOnさん、「レモンティー」のイントロをさらりと演奏。そういう粋さ。

kyOnさんのソロでは「クインシー・ジョーンズ!」と名を呼び、クインシーのトラックに乗せてピストルズ「アナーキー・イン・ザ・UK」を独自日本語詞で歌ったり(「アナーキー・イン・ザ・バイユー」。Dr.kyOn&Black Bottom Brass Band feat.甲本ヒロトで音源あり)。そういえば僕はkyOnさんがひとりで喋って弾いて歌ってと進めるのを初めて観たが、喋りも面白く、誰よりも余裕があって、なんたって洒落ていた。ステキ。

リクオとkyOnさんのデュオではニューオリンズ音楽的な早弾きもゴキゲンだったが、リクオの名バラード「ソウル」の歌唱とふたりのピアノにグッと引き込まれた。kyOnさんの鍵盤の音色はなんであんなに美しいのだろう。

初めて観るチャールズ清水さん。この夜はこの方の歌と演奏をナマで聴けるということで楽しみにしていた人は多かっただろうし、僕もそのひとり。

日本の鍵盤ブルーズ&ロックの先達であるチャールズさんに対して僕は勝手に伝説のミュージシャンというイメージをもっていたが、関西弁の喋りも含め、思ってたよりずっとフレンドリーで軽やかな人という感じ。もっと言うならチャーミング。そういう軽やかさはもちろん演奏にも表れている。まずはリクオと一緒に「MY DADDY」。そのニューオーリンズ味。チャールズさんのヴォーカルはレオン・ラッセルと鈴木慶一が混ざったような。現在、新作も作っているそうで(まさに「続ける」のが大事ってこと!)、初披露された「ラブゲーム」という新曲が沁みた。それからリクオとふたりでの「イマジン」も。

再び伊東ミキオとリクオのデュオ。伊東の歌うジュリーの「お前がパラダイス」がよかった。そこにkyOnさんが加わり、最後にチャールズさんも再登場して、4人で初めにやったのはボ・ガンボスの「魚ごっこ」。the Tigerと吾妻光良さんを迎えての前夜も演奏されたが、こちらはなんたって本家本元のkyOnさんが歌うのだからたまらない。kyOnさんのヴォーカルにウキウキしちゃった。そこからリクオの「ミラクルマン」。これもクレフィンの『ピアノフォルテ』に入ってた曲で、つまりリクオ・伊東・kyOnにとってはやり慣れていていつだって盛り上がりを生みだせるロックンロール。ではあるが、そこにチャールズさんがいるのが肝。それぞれがそれぞれにローリングするピアノを弾いて繋いで、本編終了曲に相応しい盛り上がりを見せた。いやぁ、滅多に観れないすごいもん観たわ~。

アンコールも凄かった。チャールズさんがグランドピアノを弾いて歌い、3人が音を重ねるチャールズさんナンバー「続ける」。その弾む感覚といったら!   一緒に歌っている伊東ミキオさんの幸せいっぱいな表情も印象に残った。それからザ・バンドの「アイ・シャル・ビー・リリースト」。友部正人さんによる日本語詞バージョンでリクオが歌い、「友部正人!」と名を呼んだりも。その友部さん、客席にいらっしゃいましたね。そして最後の最後は全員でリクオの「光」を(続けて聴くとこの曲はリクオ版「アイ・シャル・ビー・リリースト」といった趣もある)。4人が声を合わせて始まった「光」は圧倒的に素晴らしかった。これまでライブで何度も聴いたリクオの重要曲であり、前夜も歌われたけど、この夜の「光」ほど感動したことはなかったかもしれない…というくらいに素晴らしかった。美しかった。魔法がかかっていた。

JIROKICHI3日間のなかで、リクオはいくつかの同じ曲を2日間または3日間歌った。同じ曲が、しかし一緒にやる相手によって形が変わり、違う響き方をする。それが面白かった。3日間行ってよかったと思った。例えばチャボさんと梅津さんを迎えた初日の「いい事ばかりはありゃしない」には当然RCの匂いがあったが、the Tigerと吾妻さんを迎えた2日目のそれにRCの匂いはなく、けれども純粋に名曲としての継承を感じた。1日目の「満員電車」は梅津さんのサックスによってRCのバラードのようなソウル味が表れていてグッときたが、2日目のそれは吾妻さんのギターによるブルーズ味にやられた。2日目と3日目に演奏された「魚ごっこ」も、確か3日間とも演奏された「ミラクルマン」も、必ず終盤に歌われた「光」も、その日・そのとき・その人たちならではの響き、ムード、バイブスが生まれ、その違いを感じることがまた面白かった。それこそがセッションの醍醐味であり、化学反応であり、音楽特有の魔法なのだろう。そして大きく言えばリクオは3日間通してそれを感じてほしかったのかもしれない。だからあえていくつかの曲を2日間または3日間演奏するようにしたのだろう。そのようにして楽曲自体が生き続け、歩みを続ける。そんなことを強く感じた「KANREKI HOBO CONNECTION」だった。

リクオさん、3回目の二十歳、おめでとうございます。





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