見出し画像

『細野晴臣サヨナラアメリカ』感想

2021年11月13日(土)

吉祥寺アップリンクで、『細野晴臣サヨナラアメリカ』。

2019年5月~6月に行なわれた細野晴臣の、ソロとしては初となるアメリカ公演から、NYとLAの公演の数曲を見せるライブ作品。集まった観客たちの声も多く紹介されており、国外で細野さんがどのように受け入れられているのかがわかって興味深い。

2019年にドキュメンタリー映画『NO SMOKING』が公開され、それはなかなか味わいの深いものだったが、『細野晴臣サヨナラアメリカ』はCDに例えるなら『NO SMOKING』デラックスエディションについたボーナストラック的な未発表ライブ集。要するに『NO SMOKING』に入れられなかったライブ演奏部分をひとつの作品にしたものだが、しかし演奏が素晴らしいので当然ボーナストラック以上の意味合いを持つ。

このバンドの演奏は本当に本当に素晴らしい。アメリカで演奏されるブギウギは幸福の象徴のようだ。「自由にふれると、心が躍る。」とは『NO SMOKING』のキャッチコピーだが、細野さんとバンドの演奏には自由が躍っているという感覚がある。

しかし、コロナ禍に入ってバンドは集まれなくなる。2年前のあのアメリカツアーは遠い昔のことのよう、幻のようだと、細野さんもメンバーも言う。アメリカ公演がこのバンドでブギウギを演奏することの集大成だった、とも。つまりああしたブギウギをこのバンドで演奏することは、断定はできないけれど、恐らくもうないのだ。それはひとつの悲しさだ。この映像は90%の歓びと10%の悲しみでできている。

繰り返すがこのバンドの演奏は素晴らしい。それをいい音響で味わえるのだから、ファンなら観るべきだ。が、ひとつだけ。映像は荒く、編集があまりよくない。メンバーの振り返り場面の挿み方などもう少し工夫してほしかったし、全体的にもう少し滑らかに構成できたはず。そこは残念。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?