『ベイビー・ブローカー』感想。
2022年6月25日(土)
吉祥寺オデヲンで『ベイビー・ブローカー』。
赤ちゃんポストに入れられた赤ん坊をめぐって、ベイビー・ブローカーを裏稼業とする者たちと、産みの母、ブローカーを追う刑事たちが織りなす物語。
この深刻な問題を扱いながら、こういうヒューマンドラマに落とし込むのが是枝さんなんだなぁ、良くも悪くも。と、そう思った。
話の持っていき方に唸らされるし、撮影がよくて印象に残るシーンもいくつかあるし、音楽の使い方もいい。さすがの上手さだ。が、上手すぎてガツンとこない。ドラマ的な盛り上がりに欠ける。静けさのなかにあたたかさが滲むのがこの作品のよさであり、それはわかるのだが、このテーマを扱うならば俯瞰的な問題提起以上の何かがもっとあってよかったのではないか。ノイズが無さすぎて、何かこう上品で高級な日本料理をいただいているみたいな感じなのだ。韓国を舞台に韓国人俳優を使って韓国で制作されているにも関わらず、韓国料理の辛みがない。もう少しある意味の粗さがあったほうが入り込めるんだが…という気がした。
俳優たちはそれぞれにいい演技をしていて、特にやっぱりソン・ガンホは素晴らしい。優しいだけじゃなく、ちゃんとアウトローの怖さもある。けれどもそれが役を超えたところでグワッと迫って来ないのが勿体ない。上手さがドラマに活かされていないように感じるのだ。
『万引き家族』はいろいろもっとクセもあった気がするんだが……。ジワッとは来たけど、自分としては揺さぶられる感覚が希薄だった。
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