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鮎川誠 追悼ライブ「音楽葬」@下北沢シャングリラ

2023年5月2日(火)

下北沢シャングリラで、鮎川誠 追悼ライブ<音楽葬>。

出演者が発表される前段階であっという間にチケットがソールドアウトとなった鮎川誠追悼ライブ。会場に入ると、ステージ向かって左側に鮎川さん、右側にシーナさんの大きなタペストリー。鮎川さんのそれには「makoto forever   THE KING OF ROCK'n ROLL HEART」と描いてあった。

開演前にはシーナ&ロケットの曲がずっとかかっていた。そして開演時間を少し過ぎると、いつものシナロケのライブと同じようにカウントダウンからスタート。スクリーンに鮎川さんありし日のシナロケのライブ映像が映し出されて「バットマン・テーマ」!   いつもと変わらず鮎川さんがそこにいる……ように思えるグッとくる演出だ。映像ライブの2曲が終わり、鮎川さんによるメンバー紹介と共に「スイート・インスピレーション」のイントロが聴こえだし、スクリーンがあがって川嶋さん、奈良さんの姿が。ギターは澄田健さん(VooDoo Hawaiians、MOTO-PSYCHO R&R SERVICE)だ。

ヴォーカルのルーシー・ミラーが勢いよく飛び出してきて、明るくステージで跳ねる。彼女の歌声は力強かったし、感情が乗っていた。多少粗さがあっても気にならない。だって、それを言うなら鮎川さんの歌だってある意味粗かったけど、それ故のロックンロール歌唱としてかっこよかったのだから。

「スイート・インスピレーション」「ハッピー・ハウス」「ロックの好きなベイビー抱いて」。明るくポップなこれらのナンバーを続けて歌うルーシーを見ながら自分も一緒に小さく歌っていたら、なんだか涙が溢れでてきてしまった。悲しい歌より明るい歌がときにどうしようもなく泣けてくることってあるものだ。

そのあとはゲストがルーシーに呼ばれて順に登場し、シナロケまたはサンハウスの曲を1~2曲ずつ歌ったり演奏したり。百々和宏、赤と黒の岩口タカと本間章浩、穴井仁吉、鬼平こと坂田伸一、松永浩、菊こと柴山俊之、鶴川仁美、花田裕之、浅井健一、ダイアモンド・ユカイと小暮shake武彦、ジュンスカの森純太、声優の山口勝平、最後に土屋昌巳。岩口タカさんは歌い終えてから「鮎川さーん」と叫んで号泣していた。菊さんの存在感はこのなかでもやはり破格だった。ルーシーが「なんか喋っとって」とゲストにふり、ゲストたちは一言二言、鮎川さんへ言葉を送って演奏した。みんなが心を込めて歌ったり演奏したりし、そのすべてが名場面と言えるものになっていた。

ゲストたちの演奏や歌はどれも最高だった。けど、この夜はなんといってもライブの進行をしながら歌っていたルーシーが素晴らしかったと僕は思う。彼女は本当にいいロックヴォーカリストになった。シナロケのメンバーになってたくさんのステージに立ち、ヴォーカリストとしてものすごく成長したことがこの夜よくわかった。上から目線のように思われたら申し訳ないしそんなつもりもないけど、彼女の進め方を見ていて、またMCのひとつひとつを聞いていて、ああ立派だなと思った。何より歌と言葉に愛が溢れていた。

土屋昌巳さんが翌日ツイートにこう書いていた。

「参加させて頂いただけでも光栄なことなのですが、鮎川さんとシーナさんの愛娘ルーシーさんがあのメンバーとあの観客をひとつの愛でまとめあげ包み込んでいた様にとても深く感動しました」

同感だ。愛がその場をひとつにしていた。
ルーシーはこう話していた。

「お父さんはほんと、ホラ吹きイナズマの歌みたいにパッと光って消えちまって、私は今すぐ探しに行きたい気持ちでやっていて…」

「お父さんはよく、シーナに会いたいからステージをやるって言ってましたけど、ほんとに今日何度もハッとさせられて、お父さんがそこにいるみたいな熱を感じて。光とか音とか気持ちとか願いとか、そういうものは同じ次元で繋がっているんじゃないかなって思います」

あと、「お父さんが亡くなってからギターの数を数えたら69本あって、アンプを数えたら47台あった」とも言っていた。そういえば鮎川さんが息を引き取られたのは午前5時47分だったそうだけど、それってただの偶然のはずがないよなと、そう思わずにはいられない。

奈良さんと川嶋さんのリズム隊は改めて強力で最高だなと思えたし、澄田さんはシナロケの原曲に近づけながら素晴らしいギターを弾いていたし、ルーシーはシーナの魂を引き継ぎながら自分の個性も出して歌っていた。シーナさんも鮎川さんもいないのに、シーナ&ロケッツはしっかりここに存在していると、そう思えた。そして、ルーシーとたくさんのゲストたちによって歌われるシナロケとサンハウスの曲を聴きながら、全部がロックの名曲だなと改めて思った。

シーナさんと鮎川さんがいなかったらそれはシーナ&ロケッツではないと言う人もいるかもしれないが、そうじゃない。ふたりの残した曲、フレーズ、型、スピリットはそのまま引き継がれ、シーナ&ロケッツは今もここにある。そう思えたことが嬉しかった素晴らしい<音楽葬>だった。ロックは、物語は、続いていくのだ。

最後は出演者全員で「ロック・イズ・オーライト」を。





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