内本順一
interview: GOOD BYE APRILはいかにしてモダンなポップサウンドを手に入れ、いかにして「今が最高」という状態に至ったのか。倉品翔と延本文音に聞く。
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interview: GOOD BYE APRILはいかにしてモダンなポップサウンドを手に入れ、いかにして「今が最高」という状態に至ったのか。倉品翔と延本文音に聞く。

内本順一

GOOD BYE APRILの新作『swing in the dark』はもう聴かれただろうか。「シティポップ」と「80s」をキーワードとして制作された前作『Xanadu』から、わずか1年2ヶ月で生み落とされた4作目のフル・アルバム。かつて「ネオ・ニューミュージック」を標榜し、どこか懐かしさも感じさせる良質なメロディを現在進行形のポップスとして響かせてきた彼らだったが、シンセサイザーを導入して音像を大きく変えた『Xanadu』を経て、新作はさらに著しい進化を見せている。エレクトロ風味のダンスチューンあり、胸躍るサマーチューンあり、ジャジーでソウル味のあるバラードあり、じんわり沁み入るフォーキーな曲あり。収録された全10曲は実に多彩で、アレンジの幅の広さに唸らされるばかりだ。が、それぞれに個性の強い10曲が並びながらもアルバムとしての不思議なまとまりがあり、聴き返すほどに彼らがいま表現したかったことが明確になっていく感覚がある。

シティポップのブームとバンドの志向がいい具合に重なったのは前作『Xanadu』からだが、新作『swing in the dark』ではメンバーたちの好きな洋楽からの影響も反映され、サウンドはグンとモダンに。リリックも英語詞部分が増量され、だからかリスナーの層も一気に広がり始めている。

結成から12年目の現在、『swing in the dark』で制作におけるセンスと実力を人々にはっきり知らしめることができたと言っていいはずだが、それだけでなく、ライブの力も並行してアップしていることを、自分は2月のアルバム・リリース・パーティで実感した。

アルバムがよく、ライブもよく、つまりGOOD BYE APRILは「今が最高」なのだ。では、いかにしてその状態に至ったのか。今回もまた、詞曲を担当する倉品翔(ヴォーカル、鍵盤)と延本文音(ベース)に話を聞いた。

先の見えないコロナ禍という「dark」のなかで、けれども彼らは、僕らは、静かに心の火種を「swing」させる……。

インタビュー・構成・撮影/内本順一

*記事の終わりに、倉品翔くんの弾き語り音源(4曲)があります。ここでしか聴くことのできないライブ音源です(DL可)。記事のご購入、よろしくお願いします。

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エイプリル

(写真左から延本文音、倉品翔、吉田卓史、つのけん)

「曲を作る過程でサブスクを意識するのではなく、盛り付けをする上で意識しています」

ーー新作『swing in the dark』がたくさんのひとに届いて、いいライブもやって。充実感でいっぱいの今日この頃って感じでしょ。

倉品翔: そうですね。

延本文音: もう、早く次を出したいですね。

ーーえ、もう?

倉品: ほんと、気が早いな。

延本: うん。どんどんやったほうがいいじゃん(笑)

ーー倉品くんはまだそんな気分じゃないでしょ。

倉品: まだ全然。『Xanadu』『swing in the dark』と短いスパンで作ったので、いまはこの2作を広める活動をもっと入念にしたいんですよ。『Xanadu』も、もっと多くのひとに聴いてほしいし。そういう気持ちがでかいので、次のリリースのことなんてまったく考えられないです。

延本: へぇ~。

ーー「へぇ~」とか言ってる。相変わらず対照的で面白いね(笑)。『swing in the dark』は『Xanadu』よりもさらに広い層に届いているように感じるんだけど、どう?

延本: けっこう若いひとに刺さっているというのが今作の強みで。『Xanadu』のとき以上にそれを感じますね。以前は私たちの音楽に懐かしさを感じて聴いてくれる年配の方が多かったんですけど、今作は若い子が「サウンドが新しい」というところで聴いてくれている。

倉品: 以前と違って、前作と今作は明らかにサブスク(*サブスクリプション。定額制音楽配信サービス)で聴いて気に入ってくれるひとが多いんですよ。『Xanadu』以前と以降で、サブスクの数字(再生回数)がまったく違っていて。

ーーサブスク映えするサウンドだったりするもんね。

倉品: そこはだいぶ意識してますね。

延本: こういう曲と並ぶと埋もれちゃうから、埋もれないようにこの音をもっと強くしよう、とか。ジャケの作り方もそうで、今作はサブスクの画面でも目立つジャケになっている。

倉品: 曲を作る過程で意識するのではなく、盛り付けをする上で意識しています。こうやって盛り付けたほうがサブスクでは美味しく見えるんじゃないかとか。

延本: サブスク用の盛り付け方。

倉品: 中身じゃなくて、食器を変えたような感じだよね。

ーー音のアタック感が、サブスクで聴いたときに気持ちいい。そういうミックスになっているし、それは『Xanadu』以前の作品群との大きな違いだよね。

倉品: そうですね。ミックスは『Xanadu』から引き続きで中村フミトさん(Endhits Studio)にやっていただいて、「一緒に『Xanadu』を越えよう」と密に意見交換したことで、よりいい音になりました。それとマスタリングは前作から変わって風間萌さん(Studio Chatri)にやっていただいたんですけど、風間さんはその場で調整していくんですよ。

ーー倉品くんから「こういう音にしてほしい」と前もって提示するというよりは、おふたりとのその場のやり取りで強弱が決まっていくというような。

倉品: 初めに僕からガッツリ話したのもありますし、やり取りのなかで決まっていったものもあります。『Xanadu』を作ったときに、中村さんとマスタリングについていろいろ話したんですよ。ラウドネスをどのくらいの数値にするか、サブスクに最適な数値はどのくらいなのか。それってけっこうエンジニアさんのなかでも判断が分かれるらしく、海外でもいろんな議論がなされていて、まだ正解がないんですけど。で、シングルで配信したときの「spring kiss」は僕が自分でマスタリングしたんですけど、そこでは少し音圧をつっこんでみたんです。サブスクで聴いたときにアタック感がほかに負けないくらいの数値を探して。体感上はそれがちょうどよかった。

ーー確かにあれはサブスクで聴くと音が鮮明で飛び込んでくる感覚がある。けど、まろやかさもちゃんと残っていて。

倉品: そうですね。音圧をつっこむと言っても、昔のJ-ポップみたいにつっこみすぎるわけではないので。あと、「missing summer」のマスタリングはシングルで先行配信したときのものからやり直してます。先行配信したときに風間さんがSpotifyで聴いて、音が痩せちゃったところがあると言ってて、そこを修正してくれたんです。

ーーなにしろ全体的に、『Xanadu』からさらにまたいい音になってるなと。

倉品: それはめっちゃ思います。

延本: 今回、自分でも一番聴いてますから。私は完成してから聴き返すことってそんなにないんですけど、今作はリリース日にもそのあとにも何周も聴いて、「ああ、いいアルバムだなぁ」って。聴きやすいし。

ーー少し時間あけて聴くと、改めて「ああ、いいな」って思う。フレッシュ感の強度があるというか、簡単には飽きない何かがあるんだよね。

延本: 聴く度に好きな曲がけっこう変わるんですよ。なんやろな、あれ(笑)

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「コロナ禍になる前のほうが、限界を感じていたところがあったんですよ」

ーーコロナ禍に入って活動を停止したバンドは少なくないし、メンバー脱退の報もこの2年でいくつもあった。そんななか、(2020年に)10年目を迎えたAPRILは、停滞するどころか大躍進している印象がある。

倉品: 生き生きと活動できているのは間違いないですね。

延本: 世間の状況とは裏腹に(笑)。むしろコロナ禍になる前のほうが、限界を感じていたところがあったんですよ。活動の仕方を変えなきゃいけないところがいろいろあった。例えばショッピングモールでの野外ライブを、しばらくは1日に3ステージやっていたんですけど、2ステージに減らしたのも体力的な限界を感じたからで。自分たちで設営して、暑さ・寒さに耐えて演奏して、物販売って。休憩は入りますけど、それによってまた疲れたところから気持ちを持ち直してもう1ステージやって、たくさんある機材を片付けて帰る……っていうので1日が終わる。もちろんショッピングモールでフリーライブをやることの効果はあって、それがあったから頑張れたんですけど、だんだんとメンバーみんな、体力的にも精神的にもそろそろ限界という感じになってきて。で、結局コロナ禍になってやめざるをえなくなったんですけど、いま思うとそれは冷静に活動の仕方を考え直すいいきっかけだったかなと。

ーーショッピングモールでのフリーライブはいつ頃からやり始めたんだっけ?

倉品: 『ニューフォークロア』を出してからやり始めたので、3~4年やったことになりますね。あれを始めたことで家族連れのお客さんが一気に増えてホール・ワンマンができるようにもなったので、あれはあれでひとつの結果が出せたと思っているんですけど。でも「このまま続けていけるのかどうか」っていう段階には来ていたし、延本の言うように限界も感じていた。

ーー3年前だったか、僕がサマソニを観に行くんで海浜幕張駅から歩いていたら、近くのビルの広場でたまたまAPRILがフリーライブをやっていて、1ステージ観たことがあったけど。あの日はめっちゃ暑くて、座ってるだけで汗がダラダラ流れてきた。こんな炎天下で2~3ステージやるなんて大変だな、体調崩さなきゃいいけど、って思ったのを覚えている。

延本: ありましたね。そう、夏の暑さと冬の寒さも大変なんですけど、春と秋は花粉がすごいから喉に支障をきたすし、体調がおかしくなっちゃうんですよ。フリーライブで出会ってくれたひとは本当にたくさんいるので、感謝はしているんですけど、あれをあと数年続けるのは無理でしたね。

倉品: 僕も2019年あたりは体調があんまりよくなくて、歌も調子悪かったし、いろいろうまくいってなかった。

ーーそれが2020年から一気に好転して、サウンド面で方向転換を見せた『Xanadu』という意欲作も生まれた。そこからバンドは完全に新章に入った感じだよね。

延本: 劇的に変わりましたからね。

ーーどうして劇的にサウンドが変化したのかというと、これは前のインタビューでも話に出たけど、まず倉品くんがシンセを買ったことが大きかった。

倉品: それは本当にでかくて。アレンジの発想が変わりましたからね。でもそれだけだったらここまでは変わってなかった気がするんです。延本が突然、80sとシティポップに特化したアルバムを作りたいって言いだしたのもでかかったですし……。

延本: 急に降りてきたその発想。神のお告げ的な(笑)

ーー倉品くんが清野(雄翔)くんと一緒にいろんなアーティストのアレンジやプロデュースをやり出したのも大きかったよね。その経験も手伝ってか、倉品くんのアレンジ力が各段にアップした。

倉品: でもそれに関して言うと、年齢もあるみたいで。この前、清野さんとそういう話をしたんですけど、30歳を超えると見えるものが一気に変わるみたいで。変わったらしいんですよ、清野さんは。僕のなかでもまさにそれが起きていて、30を超えた途端に、アレンジするときに見える景色が変わったんです。それはシンセを買ったからとかそういう話ではなくて。アレンジだけでなく、歌詞を書くときの感覚も以前と全然違うんですよ。『Xanadu』以前は、僕が出す歌詞を延本にことごとく酷評されていたんですけど、実際それを読み返すと、書きたいことが書けてない。でも30超えてから書きたいことを形にできるようになった感覚があって。

延本: らっしー(倉品)の肩の力が抜けた感じはあると思います。それは全員に言えることなんですけど。今作はアレンジ含めて、4人の好きな音楽が均等に入っている気がしていて。『Xanadu』までは、今回は倉品色が強いとか、今回は私の色が強いとかっていうのがあったと思うんですけど、今作は全員が肩の力を抜いてお互いのアイデアを受け入れたり吸収したりしていて、それがいい結果に繋がった。誰かが自分のルールに捉われていたら、できなかったことがいっぱいあったと思う。

倉品: ああ、確かにそうかもね。『Xanadu』が僕のなかで大きかったのは、それまでの自分の拘りを一回捨て去ったってことで。『I MISS YOU SO LONG』(2019年のミニアルバム)を、「オレの色を出すんだ!」って思いながら作った結果、そういうやり方はバンドにとっては大事じゃないことがよくわかった。そこまで自分が手綱を持ってやる必要がないと気づいて、それを離せたことで自分の視野も広がり、アレンジの際に見える景色が変わったことにも繋がったんじゃないかと思うんです。

ーー10年というキャリアも関係あるんじゃないかな。パッションで突っ走るんじゃなく、肩の力を抜いたくらいの走りのほうがいいものになるとわかって、それができるようになったという。

倉品: そうかもしれないです。こういう言い方もアレですけど、今作は曲作りの段階で、そこまで「いい曲を書くんだ!」って思ってなかったんですよ。それよりもみんなの「こんな曲やりたい」という気持ちに全力でのっかっていった感覚が大きい。

ーー『I MISS YOU SO LONG』のときの真逆だね。

倉品: ですね。あのときは「自分がいい曲書かなきゃ」ってめちゃめちゃ思ってましたから。

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「かっこいいなと思えた。若いひとたちに聴いてもらえるものができたことが、自分たちでも意外だったというか」

ーー今作『swing in the dark』は、いままでで4人が一番楽しんで作ったアルバムって感じがする。

延本: 確かに。録り終えたものをみんなで聴く度に「これ、やばいでしょ?!」とか言って、みんなで喜んでましたから。そういう青春感がありました。

ーー『Xanadu』からの勢いに乗って、自信を持って作れたってところもあるんじゃない?

倉品: 『Xanadu』がけっこうギリギリのスケジュール感で作れたので、時間的に追い込まれても大丈夫だろうとはみんな思っていたんですよ。むしろ追い込まれたほうが力が出せるんじゃないかと。そういう意味での自信はあったんですけど、でも『Xanadu』をどう超えていけるのかは、作り出すまで僕はわからなかった。『Xanadu』の手応えが大きかった分、「次は何をどう作ればいいんだろう?」って思っていたんです。そんななかで「spring kiss」が録れたのがでかかった。このやり方でいいものができるんだったら、これで1枚アルバムが作れるんじゃないかと。そこから去年の制作が一気に加速した感じでした。

延本: 「こういうことができるんだ、自分たち」って感じだったよね。

ーー「こういうこと」というのは?

倉品: 『Xanadu』で僕らのサウンドが変わったわけですけど、でもあれも打ち込みから作ったわけではなく、バンドっぽく録ったものをあとから打ち込みっぽくしているので、そういう意味ではそれまでのやり方と繋がっているんですよ。それに対して「spring kiss」は1から100まで打ち込みで。スタジオを使わず、完全に宅録。4人がパソコンのなかでアイデアを出し合って作るということを初めてやった曲で。それがこう、なんというか奇跡的な曲に仕上がった。

延本: かっこいいなと思えた。世界的に流行ってるようないまっぽい音が自分たちにもできるんだ、っていう。若いひとたちに聴いてもらえるものができたことが、自分たちでも意外だったというか。いままでは「いい曲」を作れるかどうかってところでやってきたけど、これは「かっこいい曲」として聴かせられるって思って。

倉品: 『Xanadu』は明確に80sとシティポップというキーワードを出して、そこをめがけて作った感じだったんですけど、「spring kiss」はそもそも発想が違うんですよ。つのけんが好きなザ・ウィークエンドの曲を聴いて、「こういうのを作ろう」ってところからスタートしているので、曲作りのプロセスがまったく違う。自分のなかにあるものを出そうというのではなく、初めからそこを目指してやったので。

ーーなるほど。「spring kiss」に限らず、確かに今作は洋楽曲からの影響が随所に見られる。日本のシティポップからの影響が強く出ていた『Xanadu』とは、そこが大きな違いで。

倉品: そうですね。つのけんと吉田の「洋楽のこういう感じをやりたい」という言葉に自分も乗っていったことでいろんな曲ができたし、結果、バラエティに富んだアルバムになった。もともとあのふたりは洋楽志向なんですけど、そのフィールドにバンドが入ったことによって、これまでやったことのないことをやれたような気がします。僕からしても、それは自由で、楽しいことでした。

ーー逆に言うと、これまでつのけんと吉田くんは自分たちの趣味性を抑えていたってこと?

倉品: 僕らに任せてたところはありますね。曲作りは僕と延本にゆだねるっていうスタンスだった。

延本: ふたりは、自分たちが好きで聴いている音楽とバンドでやりたい音楽は別っていう考え方で、そこを重ね合わせたいというのはこれまでそれほどなかったと思うんです。けど、いまなら自分たちの好きなことをやれるし、やりたいって初めて思ったんじゃないかな。

倉品: 僕のなかにも、いまの洋楽っぽさを取り入れてアウトプットするという発想がこれまではなかったんですけど、やってみた結果、ちゃんと自分たちの音楽として消化できると気づけたから、いまはもっとなんでも聴いてなんでも取り入れてみようという気持ちになってますね。

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「「冗談」という曲は、完全に爽やかさを殺すためにああいうサウンド、ああいうリズムにしたんです」

ーー音楽性だけじゃなく、歌詞も今作は英語詞の部分が相当増えてるよね。

延本: 曲が英語を呼んでるからそうしてる、ってことで。「ここは日本語でしょ」って曲が言ってるところは日本語にしてるって感じですね。

倉品: 僕はもともと英語が好きで、英語で歌詞を書くことに抵抗がないのと、あと、英語のほうが言いたいことが言えるってときもいっぱいあるんですよ。だから、曲が英語を呼んでいるなら英語で書くほうが自然なんです。

ーーもともと英語が得意だったの?

倉品: 好きなんですよ。英語を勉強したくて大学に行っていたので。そのくらい好きなんです。

ーーあ、そうだったんだ。

延本: らっしーの書く曲自体、英語のほうが乗りやすいものが多いですからね。

倉品: そうなったきっかけが明確にあって。それは大学に入ってオアシスに目覚めたタイミングで、そこから自分の作るメロディががらっと変わったんです。それまでは完全にJ-ポップ・リスナーで、規則正しく展開するメロディを書いていたんですけど、オアシスに目覚めてUKっぽさを吸収してから、英語が乗りやすいものになった。

ーーえんちゃん的にも、英語詞部分が多くなることに抵抗はないの?

延本: まったくないです。例えば「FANTASY」のサビのメロディに日本語詞を乗せようとすると、ダサくなると思うんですよ。ちょっと中2感が出ちゃうというか。ダサいロックバンドみたいになる。そこみたいに勢いでいくところは、英語のほうが絶対いいなと思って。

ーー日本語にするとメッセージ性や意味性がどうしても出るので、むしろそれを匂わせたくないときに英語にする、っていうところもあるのかな。

延本: ありますあります。歌詞の意味を深く感じてほしいというよりは音として楽しんでもらいたい場所に関して、そうするとか。

倉品: それでも頑張って日本語にすることの価値もあるとは思うんですけど、それをやることでダサくなるのは嫌なんですよ。

延本: 私たちも言うたらギターロック・バンドあがりなので、うっかりするとそこに戻っちゃう恐れがあって、そうなると致命傷になりかねない。

倉品: 声質含めて、かっこいいひとが歌ったらかっこよくなるんでしょうけどね。これは自己分析なんですけど、僕のメロディと声ってウェットじゃないですか。ちょっと湿ってる。僕自身は根暗だからそれが心地いいんですけど、世の中のひとは音楽をもっとライトに聴きたいんじゃないかなと。僕は感傷に浸れる曲が大好きなんですけど、みんながそういうのを好んでるわけではなく、ライトに音楽を楽しみたいひとのほうが多数なんじゃないかと思うことが多くて。

ーーいや、そうとは言い切れないと思うけど、ただサブスクで音楽を聴くのが当たり前になってから、確かにそういう傾向も見られるかもしれないね。CDを買って歌詞を見ながら…という聴き方ではないわけだから。

倉品: そうですね。どうやって聴くかで変わってきますもんね。

ーー「最近、英語の歌詞が多いですね」とか「以前のように日本語で書いてほしいです」ってファンのひとに言われたことはある?

倉品: それが意外とないんですよ。言われるかと思ったけど、まったくない。

ーーそのへんは自然に受け入れられてるわけだね。あと、APRILは「爽やか」と言われることが多くて、実際爽やかな曲は多かったと思うけど、今作はアーバンだったりメロウだったり、夜っぽい雰囲気もけっこう入っている。それは意識してそうしたところもあるの?

延本: 「冗談」という曲がありますけど、あれは完全に爽やかさを殺すためにああいうサウンド、ああいうリズムにしたんですよ。私たちが普通にやると、どうしても爽やかさっていうものは出てしまうもので、それは悪いことではないんですけど、でも私たちにとって「爽やかですね」というのは誉め言葉ではない。嫌味にしか聞こえなくて。

倉品: そこまでじゃないけど(笑)。でもそう言われると、刺さってないんだなって感じがしちゃうんですよ。

延本: なんか、当たり障りのない曲、当たり障りのない子って思われてるみたいで。「冗談」は一歩見違えると、そうなりかねない曲だったんですけど、アレンジで爽やかを殺したんです。

ーー「爽やかを殺す」ってすごい言葉だね(笑)

延本: あははは。でも最近は爽やかって言われなくなったよね。昔はよく言われたけど。みんな褒めて言ってくれてたんだと思うけど、嫌だったな。爽やかなひと苦手だもん、私。

倉品: はははは。まあでも、確かに今作は大人っぽいムードみたいなのを目指して作った曲が多いですね。

ーーとはいえ、完全に大人のアルバムかというとそうではなく。青春感の名残りというか、若き日々から大人の季節への移り変わり感もあるかな。なんか、『Xanadu』のほうが定義しやすかった。でも定義しづらいから弱いというわけではなく、聴き返すほどに伝わってくるものが今作のほうが大きい。

倉品: あ、そうなんですよ。自分でもどういうアルバムなのかわからないで作っていた感じが今回あって。こんなにいろんなタイプの曲ができて、一体どういうアルバムになるんだろって思ってたんですけど、でも奇跡的にまとまっていることにあとで気づいた。「feel my hush」で始まって「空の数だけ」で終わることで、『Xanadu』以上に訴えかけてくるものが強くなったんじゃないかなと感じました。

ーーこの曲順に並べたことで得られた力というのがあるのかもしれない。

延本: 確かに。美しい配色を見てる感じ。いろんな色が入っているけど、並ぶとキレイな一枚の絵になる、みたいな。

倉品: 「feel my hush」で始まるっていることが、すごく大きくて。コロナ禍を生きてきた自分たちのマインドとかもそこに反映されてる気がします。

ーー具体的に言うと?

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内本順一

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内本順一
音楽ライターを始めて四半世紀ちょい。 主にシンガー・ソングライター系のライナーノーツを書いたり、ウェブや雑誌でインタビュー記事やレビューやコラムを書いたりしております。