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『オッペンハイマー』(感想)

2024年5月5日(日)

宇都宮TOHOシネマズで、『オッペンハイマー』。

公開からけっこう経っていて既にいろんな考察が出ているが、一切それらを見ずに観に行った。以下、考察ではなく、あくまでも初観のざっくりした感想。

連休中は栃木にいたため、都内と違ってさほど大きくないシアターで観たのだが、基本、会話劇だし、ノーランがすすめるIMAXじゃなくても十分だと感じた。そりゃあIMAXならIMAXの音響による没入感もあるだろうが、今回が初観でもあったし、没入感が凄すぎるとかえって全体像をつかみきれなかったかもしれない。

3時間ときいてビビッていたのだが、最後まで引き込まれまくって観た。いや、3時間ずっとあの緊張感を保たせるんだからすごい。それ、ルドウィグ・ゴランソンによる不穏な音楽の鳴り方(と鳴りやみ方)の力も相当大きい。

1回じゃ理解できないという感想をSNSでいくつか見ていたが、時間軸の行き来や複数の視点の交差はあれど、そこまで難解というわけではなく、ノーランの構成力・編集力・脚色力に唸らされまくり。難解さでいうなら『テネット』を始め過去作のほうがよっぽどであり、『オッペンハイマー』は広げた風呂敷を最後にちゃんと畳んだりと、ある意味ではノーランらしくないというか、ちゃんと映画らしく整えようという意思を感じた。原作は膨大な情報量でなかなか難しいらしいから、視覚的にも編集的にもわかりやすいエンターテインメント作品になるように苦心惨憺したんじゃないか。

という意味で、アカデミー賞で脚色賞を獲ったのは、監督賞以上に納得。それとキリアン・マーフィーがオッペンハイマーの内的矛盾、複雑性を表情(特に目)であまりに見事に表していて、主演男優賞を獲るだけのことはあるよなぁと。

頭がよすぎて教養もありすぎるのに驚くほど他者の心理が読めない……頭よすぎて愚か、って人、確かにいる。あと、熱中して熱狂して成し遂げた後に、あの自己内熱狂は一体なんだったんだろう?ってことって、確かにある。オッペンハイマー自身はそれによってあとでしっかり引き裂かれている。だからよしということではもちろんないが(そんなことは言うまでもないいが)、そのかなしさが相当ずっしりきたのは間違いない。もう一度観て、もっと理解を深めたい。


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