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『花束みたいな恋をした』

2021年2月20日(土)

吉祥寺オデヲンで、『花束みたいな恋をした』。

出会って、つきあって、そして……という「ただそれだけ」のよくある話で、事件らしい事件が起きるわけでもない。にも拘わらず一瞬たりとも退屈せず、ある種のドキドキ感を持ちながら最後まで観ることができた。脚本と演出と俳優(特に菅田くん)の上手さだろう。

上手いなー。よくできてんなー。とは思う。ヒットするのもよくわかる。

坂元裕二感(2010年代以降のね)があらゆるところから溢れ出ていて、氏の脚本が好きなひとにはたまらん作品だろう。カルチャーネタの散りばめ度合もハンパなく、度を越してると言ってもいいくらい。

終わって出口に向かうとき、観に来てた若い人たち(女性同士が多かった)のザワザワ感がそれはもうすごかった。感想言い合いたくてたまらんのだろう。そういう映画も珍しい気がする。余韻を嚙み締めるとかいうんじゃなく、いますぐ自分の受けたものを口にして友達に確認したくなる…みたいな。で、このコたちはどんなふうに感じたんだろな。ひとりひとりに感想聞きたくなりました。

50代の自分としては、「うん、わかるよ」といったところもまあありつつも、「いまの若者はこうなのか?!」と思うところも正直少なくなかったかな。

まあ、あれですよ。それなりに長く生きてきた者として結論めいたこと言うなら、カルチャーの好みがそこまで合うならずっと友達でいるのがいいということ。結婚するなら「趣味」より「価値観」が合うかどうかのほうが何倍も大事ですから。と、こういうことを言いたくなる映画でもあったのでした。

もう一度戻って書くけど、あらゆるところから坂元裕二感が溢れ出ていて、氏の脚本が好きなひとにはたまらん作品。だけど、カルチャーネタの手数含めて、自分的にはやっぱりそれがしゃらくさく感じてしまったりもするのだなあ。「うまいでしょ」「センスいいでしょ」とドヤ顔されてるようで。なんか腹たつ。いや、面白かったんだけど。「好き」とは言いたくないっていう。それが自分にとっての坂元裕二感ってことを再確認。

だから、菅田くん演じた麦にブルースブラザースを聴く理由が、有村さん演じた絹にジャクソン・ブラウンを聴く理由が果たしてあったのか、といったところも言いたくなったりして。

ところで、麦と絹がカラオケで歌ったのが、きのこ帝国「クロノスタシス」で、そこがたまらんかった、泣いたという若い子の感想も多くみられますが。自分が共感するのはやっぱ「プカプカ」や「化粧」が好きな佐々木と苗村さんであって、花束みたいな恋をするふたりよりも気持ちが入るんだよなぁ、みたいなことも考えたり。それ、萩原みのりさんがこれにもまたなんともいい塩梅の出方をしてたからそう思った、というわけではなくてね。



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