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「SUPERSONIC」@千葉・ZOZOマリンスタジアム

2021年9月19日(日)

千葉・ZOZOマリンスタジアムで、「SUPERSONIC」(2日目)。

毎年必ず訪れていた場所には、知らないうちに様々な思い出が積み重なっているものだ。自分にとっては幕張のあのあたり……メッセ側の駐車場からマリンスタジアムに向かう道もそういう場所だったことに気がついた。歩道橋を渡ると海が見える。以前はそっちへ向かって歩くとキャンプエリアと芝生の広がるガーデンステージがあって、サマーソニックではそのエリアが一番好きだったし、そこで過ごす時間がけっこう長かった。そこからマリンスタジアムに続く道の途中には様々な絵描きさんが長い時間をかけて大きなキャンバスに絵を描いていて、時々立ち止まってはそれを眺めたりもした。ある年妻が、気に入った絵を描いていたある人に声をかけて仲良くなった。サマソニに行けば必ずその人が同じ場所で絵を描いていたものだが、今はどうしているだろう。

コロナ禍になって昨年は幕張に行くことがなかったので、2019年のサマソニ以来2年ぶり。感覚的にはもっと久しぶりのような気もした。フジロックの苗場ほどには特別な場所ではないように思っていたのだが、それでもなんだかんだ20年近くは毎年夏になると来ていたところだ。「帰ってきた」というような感覚が確かにあった。

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「SUPERSONIC」。逆風吹き荒れるなかでの開催だったと思う。感染力の強い変異株が広がり、医療逼迫。そんななかで開催されたフジロックには非難が集中した。徹底した感染対策が施され、結果的にクラスターの発生を防ぐことができたのだからフジは「成功」だったと言っていいはずだが、そうした良き結果の報道はほとんどされないし、SNSでもあまり広がらない。マナーとモラルを無視して開催された愛知の「NAMIMONOGATARI」がクラスターを発生させたこともあり、それによってフェス全体の印象が一気に悪くなってしまった。そのことが直接の原因ではないが、しかし遠因にはなっただろう、数多くのフェスが次々に中止または延期を発表した。2020年から1年延びて出演予定者と内容が大きく変わった「SUPERSONIC」は、出演者の東京・大阪間の移動が困難になったという理由から、大阪開催がなくなり千葉のみでの開催となることが8月30日に発表された。9月の頭には、「NAMIMONOGATARI」の影響もあってか千葉市が主催者側に開催延期を要望し、千葉県も参加人数の縮小を要請。そして9日付けで千葉市が後援を取り消した。またNICKY ROMEROに続いて、開催週の頭にはKYGOとFRANK WALKERが「アーティストの都合により」急遽来日をキャンセル。タイムテーブルが大きく変わり、19日の最終的なタイムテーブルが決定したのは公演2日前の17日だった。これほどに困難が次々押し寄せるなか、それでも主催者は諦めることなく、2日間のフェスを開催してくれたのだ。

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初日(18日)は台風の影響でかなり悪天候だったが、自分の行った19日は台風一過で晴天に。妻の車に乗ってゆっくりめに家を出て、3組目のDigitalismから観た。

Digitalism。Ismailは子供が生まれるため来日せず、Jensのみ。彼が卓を操作しながら、スタンドマイクで歌もうたう。ひとりで一生懸命それをやりつつ煽ったりもしている姿が健気でもあってステキだった。何年か前にサマソニに来たときは入場規制がかかったんだよな、ってなことを思い出したりも。それにしても、暑かった。まるで真夏のよう。夜に観れたらもっとよかっただろう。

続いてR3HAB。日本への愛が伝わるステージ。「声を出せないみんなに代わって僕が叫ぶね」と言い、おもいきり叫んだりも。優しいひとね。それにしても、ますます温度があがってさらに暑かった。スタジアムは熱がこもる。

次はPerfume。数年前にサマソニのメッセ内のマウンテンステージで少し観たので、今回が2度目。あんなにビシっとかっこよく揃いのダンスをキメて歌うのに、そして音質的にもけっこうゴリっとしたところがあってEDMのDJの出し音と比較しても遜色ないのに、MCになると急に幼稚園の先生が生徒たちに話すみたいな感じになるのは、あれもファンの方々にとっては魅力なのだろうか。自分的には、ああいうMCなしでクールに曲だけで構成していったほうがかっこいいのに、と普通に思ったりしたんだけど、ファンにとってはそういうことではないのでしょうね。

そして、待ってましたのSteve Aoki。アリーナで間近に観たかったんだが、動くのが遅くなって入場規制にひっかかり、戻ってスタンドで観た。もう最高なんてもんじゃないくらい最高だった。圧倒的なスケールの一大エンターテインメント。EDMといっても単調さがまるでなく、ほかのDJとはまったく異なる大きな起伏があって、ユーモアもある。「ガソリーナ」から「にんじゃりばんばん」まであらゆるジャンルのサウンドを自在にミックスし、まさにやりたい放題なんだが、不思議と一貫したセンスを感じさせもする。コロナ禍でいろんなものを抑え込んでいたこともあってか、単に「楽しい~」というだけでなく、そういう彼のやり方と音とが何やら感動に繋がりもするのだった。まさしくパーティ・モンスター。やはり世界で勝負してきた一流はスケール感が違う。阿呆のように踊りながら強くそう思った。「Everybody scre……Don't scream. Hands up in the air Ahhh!!」の言葉にも愛を感じた。

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最後は急遽決まったSTEVE AOKI、ZEDD、ALAN WALKERによるスペシャル・クロージング「B2Bセット」。zoomで打ち合わせしたらしいレジェンド3人の、その横並びでプレイしながら揃って両手をふったりする姿は、何やら微笑ましくもあり。それぞれのとっておきの有名曲をかけあったりしつつどんどん盛り上げていくその様を立って踊りながら観ていて、こんなの一生に一度のことだろなと思ったらまた感動。さらに最後には、今年はないと思っていたサマソニ名物の花火がどーん。ああ、来てよかった。本当に来てよかった。この世界にフェスがあってよかった。心底そう思った。

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感染対策は徹底されていた。フジロックもそうだったが、これでも足りないとしたら、じゃあほかに何をすれば…というくらい考え抜かれたものだったと思う。見回りのスタッフも数多く配備されていた。そしてスタンドでは、ライブ中でも誰かが座って立った椅子を念入りに拭いてまわるスタッフもいた。不織布マスクの着用も、歓声禁止も、もちろん全て徹底されていた。

それでも明らかに悪意のある記事が出たりもする。デイリー新潮の「音楽フェス「スーパーソニック」強行開催 記者が見た”厳戒態勢”と“フジロックとの違い”」というのが酷かった。徹底された感染対策を褒めるでなく、「窮屈すぎる」という結論に持っていくことに一体何の意味があるのか。

かようにフェスに悪しきイメージを植え付けようとするメディアが増えてしまった2021年ではあるが、しかし実際に参加した音楽好きは真実をわかっているし、信じている。フェスの大切さを。フェスなき世界のつまらなさとフェスのある世界の意味と輝きを。

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今年のフジロックが、そして今年のSUPERSONICが、ウイルスと共生して生きていくこれからの時代のフェスの第一歩になる。これでいい、ということはなくても、少なくともこれからのフェスのあり方の参考には大いになる。

やっぱりフェスがあってよかったと、もっと多くの人がこれからそう実感するようになるだろう。邦楽のみだったフジに参加し、そして遂に海外アーティストのオンステージが叶ったスパソニに参加して、自分は明確にそう思ったのだった。

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