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interview: GOOD BYE APRILが新作『Xanadu』をリリース。倉品翔と延本文音が、このアルバムの11曲についてとバンド結成10年目の思いを語る。

2020年はGOOD BYE APRILにとっての結成10周年イヤー。そして3作目のフルアルバムとなる『Xanadu』(ザナドゥ)は、そんな節目の年の発表作に相応しい出来映えとなった。のっけから結論的なことを書くと、『Xanadu』は10年目にして彼らが遂に打ち立てた、言うなれば金字塔。ライナーノーツの終わりにも書いたが、「4人が共に歩んだ10年あってこその到達点であり、ここからまた自分たちらしい歩き方でフレッシュさを持ちつつ前に進むんだという意思表示でもある作品」だ。

これまで「ネオ・ニューミュージック」を標榜し、70年代のニューミュージックが有していたメロディのよさなどを継承しながら現行のポップスとして響かせるやり方をしてきたGOOD BYE APRILだったが、新作『Xanadu』ではそれを踏まえつつも、新たにふたつのキーワードを4人が共有して制作された。「シティポップ」と「80s」だ。「シティポップ」的なアプローチはこれまでのアルバム収録曲でもなされたことがあったが、今回は倉品が特にそれを意識しつつ作曲。一方「80s」は4人とも好きでよく聴いていた音楽だったそうだが、それを大きく導入しようという延本の閃きから初めて実行。シンセサイザーを大胆に用いてアレンジされた今作における楽曲は、彼ららしいメロディと歌詞であってもこれまでのものとはずいぶん印象が違っている。着慣れた服を脱ぎ捨て、真新しい服に着替えたような、そんな印象だ(しかも4人がその着心地のよさを実感していることも伝わってくる)。

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自分がフロントマンの倉品翔と知り合ったのは、2010年2月15日の下北沢THREE。Lightshipというバンドでの活動の後期(その時点ではデュオ形態)だった。そして同年11月、ドラムのつのけんとベースの延本文音と共に彼はGOOD BYE APRILをスタートさせ、翌2011年7月にギターの吉田卓史が加入。3人での初ライブ(学芸大学MAPLEHOUSE)以降、主要な都内のライブはだいたい観に行き、その歩みをわりと近くで見てきた立場として、今こう思う。「GOOD BYE APRILは今が一番いいんじゃなぃか」。

というわけで、今回もまた詞曲を担当する倉品と延本のふたりに約3時間、話を聞いた。

尚、インタビューは2回に分けて掲載。前編は「どうしてこのタイミングで、このような傑作が生まれたのか」というところに焦点をあてたが、後編となる今回は各楽曲に込めたふたりの思いを紹介したい。

インタビュー・構成・撮影/内本順一

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「ARMS」を連続配信の最後にしたら、ここから先が見える気がしたんです。

――ここから1曲ずつ話を聞いていくね。まず「ARMS」。これは「早くにできて、とってあった」とさっき話してたけど。

延本: この曲で6ヶ月連続配信を締められたらいいなと思っていたので、とってあったんです。シティポップの懐かしさがあるのと同時に今っぽさもある曲なので、これを(連続配信の)最後にしたら、ここから先が見える気がして。

――メロディは「これぞ倉品翔!」って感じだね。

倉品: 嬉しいっす。僕が今まで積み上げてきたものの最新形というか。自分にしか作れないメロディの最新形ができたなと思いますね。

――この曲はシンセを購入してから作ったの?

倉品: レコーディングはシンセ購入後ですね。なので、だいぶ入れました。でも曲自体は去年の秋くらいに、「恋がはじまる」と同じテイストのつもりで作ったんですよ。なので、初めは「ARMS」と「恋がはじまる」の2曲ともアルバムに入れるのはどうなのかなと思ったんですけど、メンバーが両方入れるべきだと言うので。

――「ARMS」と「恋がはじまる」、全然タイプが違うじゃん。

延本: 全然違う。らっしー、たまにそういうこと言うんですよ。

倉品: いや、自分のなかでは着眼点が一緒だったんです。

――というと?

倉品: 具体的に言うと、KIRINJIの最新作(『cherish』)を聴いたときに、「この80sっぽい感じと自分のメロディを融合したら、いいものができそうだな」と思って、そこから2曲書いたんですよ。同じきっかけでその2曲ができたんです。

――なるほど。歌詞はどんなふうにできたの?

倉品: 今回は仮歌の時点で仮歌詞を一通り書くようにしたってところがミソで。延本がそれを書き換えることを想定しつつ、僕は僕でちゃんと絞り出しておこうと。延本がもっといい歌詞にしてくれるならそれでいいと思っていたんですけど、僕の書いた仮歌詞があまりにハマったので、それがそのまま採用されたという。

延本: 私がこの曲の歌詞を書き換えると重くなっちゃって、らっしーの軽やかな語感が失われるように思ったんです。らっしーの言葉のチョイスは、悪く言うと薄くて、よく言えば軽やか。メロディを書いて歌うひとの歌詞って、そこがいいところじゃないですか。だから物語性を深くするよりも、これは軽やかなままのほうがいいなと思って。

――この歌は、端的に言うなら愛が去ったあとの歌だよね。

倉品: そうです。都会に生きてて、少し疲れたなっていうときに愛を思い出す、その瞬間の心の動きを切り取ろうと思って書きました。

――それを重い言葉で書くとなると、ニュアンスが変わってしまう。

倉品: こねくり回して言葉を繫げると、曲としてダサくなるというか。演奏含めて曲自体がかっこいいから、語感を優先させたほうがいいと思って。聴覚上かっこよくないと意味がない曲なんです。

――「意味を探し過ぎて」しまうのは、「僕」じゃなくて「僕ら」なんだね。

倉品: そこも、主観的にすると重みが出てしまうかなと思ったので、あえて少し俯瞰した目線にしました。といっても、計算してそうしたわけではなく、無意識ですけどね。

――本当に1曲目に相応しいよね。メロディがかっこいいし、アレンジがフレッシュだし。「ARMS」というタイトルもクール。

倉品: 「腕の中」という言葉が歌詞に出てくるので、語感的に「ARMS」がいいかなと思って。この曲に限らずですけど、今回はタイトルもあまりこねくりまわさないようにしました。

――2曲目の「アイス」は、連続配信の第3弾曲。僕はこれを聴いたときに、次のアルバムは傑作になるなと確信した。

延本: この曲だけなぜかSpotifyのプレイリストに入らなかったんですけど、ミュージャン仲間とかAPRILを好きなお客さんとかには一番人気なんですよ。

倉品: これが今回唯一かな、歌詞から作ったのは。最初、延本としてはメモ書きのつもりで書いたらしいんですけど、見たときに僕は「これで完成してるじゃん」って思って。それを読んだときの感動をそのまま曲にして、ごり押しで「7月に出したい」って言ったんです。

――えんちゃんにしては抽象的な言葉を使わずに、わりとサラッと書いたような感じがある。そこがいいよね。言葉が平易で、耳に入ってきやすい。

延本: 自分はこねくり回すとよくなくなるタイプだなってことは思っていて。絵もそうですけど、溢れ出てきたときが一番いいんですよ。ボロっと出てきたままの未熟なところを残すのが一番いい。「アイス」も「なんやこれ?」って感じがよかったりするんじゃないですかね。これはコロナがまだ何もないときに書いたんですけど。

――あ、そうなんだ。コロナがあって世の中が分断した状況になっていったときに、「コロナよりも人間が怖い」というようなツイートをしてたでしょ? そういう思いからこれを書いたのかと思ったんだけど。

延本: 人間が一番怖いというのは前から思っていることで。この歌詞は、1年くらい前に『三体』というSF小説を読んで、ウイルスとか宇宙人とかよりも人間のほうが怖いという自分の気持ちがそこにリンクしたときに一気にメモとして書いたものなんです。

――「森は焼かれて 海は汚れて」という環境破壊の深刻さに触れながら、そこに続くのが「アイス食べよ コンビニの」という軽いもので。この重さから軽さの切り替えが素晴らしいし、さすがえんちゃん!って思った。

倉品: うん。混沌とした世界と、日常のなんでもない時間との、その対比が最高なんですよね。でも昨日親父と会ってたんですけど、田舎に住んでる親父にはこの歌詞のよさがいまいち伝わってなくて。

――都会みたいにコンビニがたくさんないからでしょ?

倉品: そう! 夜中にふたりでコンビニに行くというシチュエーションが田舎にはないんですよ。だから昨日、この歌詞のよさはこれこれこういうところなんだよって説明して。そのときに、自分がこの歌詞をいいと思ったのは東京で暮らしてるからなんだなって気づきました。

――この歌詞は、コンビニのアイスってところがいいんだよね。

延本: そう。サーティワンとかじゃなくて(笑)。

――それをピュアな衝動のまま書いてる感じがいい。どうしてそうなのかという説明もしないで、それこそメモ的に書いて推敲をしないまま歌にしている感じがいいなと。

延本: 確かにちゃんと考えて書いてたら「アイス甘いな甘い甘い」なんてふうには繰り返さないですからね。あと、最後もカオティックで。「アイス美味しいコンビニの夜中も明るい看板が」って、日本語がバグってる(笑)。その、あかん感じになるのがいいなと思って。

倉品: そのカオスを僕はちゃんとアウトロで表現しようと思って、あのコーラスを重ねたんです。この曲は自分にとっても自信作ですね。メロディ、よくできたなって。

――僕は「明日宇宙人が~」ってところがめちゃめちゃ好きで。

倉品: やった! まさにそこが一番の聴かせどころで。「宇宙人」の「うちゅ~~」ってところは絶対に伸ばしたかったんです。あそこでギアが入る感じ。

「らっしーが女のひとの歌をうたったほうが、えぐみが出るから。“恋がはじまる”はそこがうまくいった気がする」

――続いて3曲目「SAFARI」。イントロからしてフレッシュだし、歌詞もいきなり「単純なドラゴン」というわけのわからなさがいいね(笑)

倉品: 謎ですよね(笑)。でもこれ、歌うとすごく気持ちよくて。

延本: これは意地でも歌詞に出てくる全てを違う言葉にしようって思って作ったもので。それとあと、Gliderの(栗田)祐輔に対抗して書いたところもあります。祐輔の語彙力ってすごいなと思って、私もああいうのを書きたいなと思って書いてみたという。

――なるほど。どうかしてる感じの歌詞が、曲調に合っている。

延本: らっしーのメロディを聴いたときに、これは遊んでいいやつだ、やりたい放題やっていい曲だって思ったので。

――ワクワクするメロディってこともあって、「SAFARI」というタイトルもピッタリだよね。

延本: 「サファリっぽいな、これ」って思って。大自然のなかにとんちきな動物がいろいろいるイメージ。あと、Safariってブラウザがあるじゃないですか。昔、その名称に感心したことがあって。インターネットという広大な場所に探しても探してもいろんなものがあるっていうのが、大自然のなかに動物がいっぱいいるイメージと合ってて、それにSafariって付けたひとは天才だなと思ったんですよ。

――間奏がまたすごい。

延本: 間奏は私のイメージをみんなに伝えて。

倉品: 最初、ここにはない違うメロが入っていたんですけど、もっとぶち壊したいという延本のリクエストにお答えした感じですね。コードはタカシが出して、みんなで作りました。

――サウンドがちょっと80年代のYES(イギリスのバンド)っぽくもある。

倉品: 僕としてはTHE 1975とか、わりと最近のバンドのアレンジをイメージしてたんですよ。80sとどこまでリンクできるかっていうのをわりと意識していて。

――続く4曲目は連続配信第4弾となった「恋がはじまる」。出だしが小田和正さんっぽい。

倉品:「ラブストーリーは突然に」ですか? なんか最終的にそうなっちゃったんですよね。僕のなかではKIRINJIのイメージだったんですけど。

――80年代のトレンディドラマで流れそうな感じ。「月9」的な

倉品: そこは意識してアレンジしました。トレンディドラマ感というのが、キーワードとしてあって。

――爽やかな曲調だけど、でも歌詞は爽やかさとはほど遠いよね。

延本: そうですね。このアルバムを作る前から確信してたことがあって、それは、らっしーは女性が主体のラブソングを歌ったほうがハマるということなんです。なので、男のひと主体のラブソングじゃなくて、女のひと主体で書きました。らっしーが女のひとの歌をうたったほうが、えぐみが出るから。そこがうまくいった気がする。

――「赤いキズ」「赤い風と赤い並木道」「赤く焦げ付く」「赤い舌と赤いカナリア」といったふうに、「赤」が象徴的な色として繰り返されるわけだけど、えんちゃんのイメージする「赤」ってどういう色なんだろ。

延本: 血の赤とまではいかないけど、フレッシュな色というよりはドロドロした感じですね。曲が赤かった。メロディを聴いたときに「赤いな」って感じがしたんですよ。

――メロディが赤い?

延本: 私は小さいときから音を聴くと色が見えるんです。で、この曲を聴いたときは全部が赤く見えた。

――ほお。倉品くんは作曲者としてそれをどう思ったの?

倉品: しっくりきましたね。メロディを作っているときに自分には色は見えてないですけど、このメロディの持つ妖しさに「赤い」というワードが合っている気がした。実はけっこうこのメロディには僕らしいクセが入っているんですけど、妖しさにフォーカスさせたことで僕のクセが活きて、しかも今までにない仕上がりになった印象があります。曲が独特のムードを持てたというか。

――なるほど。「恋がはじまる」というタイトルだけ見ると初恋の歌みたいに思えるけど、実際は全然違う。

倉品: 真逆ですね。

――真逆だし、大人の女性の歌だよね。「あなたの指が触れた場所に 赤く咲いてく」とか、APRILの曲にしては珍しくセンシュアルな感じも含んでいるし。珍しくというか、これが初めてかもしれない。そういう意味では、えんちゃんにとって年相応の歌詞でもあるわけで。

延本: そうですね。確かに年相応だと思います。もともと(山口)百恵ちゃんが大好きで、阿木燿子さんの歌詞も大好きなので、こういうのを書いてみたかったんですよ。女性の恨み唄みたいなのもいつか書けるようになりたいと思っていて。百恵ちゃんとか(中森)明菜ちゃんが、いけない恋の始まりの歌をうたうと、かっこいいじゃないですか。そういうのを、らっしーが歌うのもいいんじゃないかなと思って。

――歌い手としては、どのへんに気を配ったの?

倉品: とにかくムードを大事にするってことだけを考えてました。声をダブリングしたのも、妖しさを意識してのことで。

――オートチューンをかけたみたいに聴こえるところのこと?

倉品: そうです。それは『ニューフォークロア』から使うようになったんですけど、それをするとちょっと主体性が薄れて、自分の顔が見えにくくなるんです。それがいいなと思ったし、この曲で使わない手はないなと思った。普遍性にも繋がるんじゃないかなと。

――確かに。あと、この曲はアウトロもいいよね。終盤の卓史くんのギターの泣きがいいし、そこに合わさるコーラスもいい。

倉品: この曲のアウトロはすごく気に入ってます。主人公の女性の気持ちが一気に崩れる感じもアウトロのコード進行で表現できたと思っていて。

――この時点でもう、「きっとあなたは誰かのもの」なんだよね。別のひととの恋が始まっている。

延本: そうです。恋がはじまるんですよ。恋ってはじまってるものじゃないですか、そういうところで。

――そうだね。あと、この曲はドラムがすごくいい。

倉品: そうなんですよ。普通の4つ打ちのようですけど、つのけんにしか叩けないドラムになってると思います。

「個人的にはこれからもっと大人っぽい曲を歌っていきたいという気持ちもあって、“plastic“はその第一歩になったかなと」

――5曲目「plastic」。この曲も大人っぽい、というか夜の雰囲気のある曲で。APRILの曲のなかではかなりアーバン度数が高い。

倉品: そうですね。平坦に転がっていく曲って、僕的には作るのが難しいんですよ。普通にAメロ・Bメロ・サビって区別して作るほうがやりやすいんですけど、これができたのは自分のなかでひとつの成果ですね。

延本: 一番好きです、この曲。

――僕も相当好き。これを連続配信の5曲目に持ってきたのは大正解だったよね。ちょうど秋に差し掛かる時期だったし。

倉品: そうですね。この曲は7月にレコーディングをしたんですけど、できたのはその1週間前で。8月配信の「恋ははじまる」までは決まっていたんですけど、9月の配信をどうしようかってなったときに、新しく作るしかないねってなって。

延本: スローテンポで、メロディはそんなに大きく起伏のあるものじゃないやつをやりたいってところから始まったんです。「今夜はブギー・バック」とか、ああいうテンポ感の曲がいいねって話して。

――リズム的には山下達郎の「あまく危険な香り」だよね。その元を辿るとカーティス・メイフィールドの「TRIPPING OUT」に行き着くわけだけど。後半のピアノの入り方もまさに「あまく危険な香り」的で。

倉品: あれはもう、大オマージュ。めっちゃ意識しました。

延本: リズムを決めるときに、らっしーが「(山下達郎の)この曲の感じがいいんじゃない?」って言ってスタジオで流したんだよね。で、つのけんに叩いてもらって、「いいね!」ってなって。それによってオザケンから少し離れたという。

――えんちゃんの歌詞はどうやってでてきたの?

延本: まず仮タイトルを「plastic」にしていて、このタイトルで歌詞を書こうと。私のまわりには、たくさんの夢追い人がいるんですよ。ミュージシャン仲間にもたくさんいて。そういうひとと喋っていて、「叶うか叶わないかわからないけど、夢を追うのって美しいな」って思ったんですね。でも一般の社会人からしたら、「いつまでも夢だけ追いかけて、フラフラしてんじゃねえよ」って話じゃないですか。そういう社会人からしたら、夢追い人ってよく見えない存在で、それは都会の幽霊みたいな存在なんですよね。っていうところからこれを書いたんです。しかもバッドエンドなのが気に入っていて。例えば私のような人間が音楽を聴いたりして、それで勉強になったつもりになっていたとしても、世間から見たらそんなのただの道楽に過ぎないし。自分なんてたいした存在じゃないし、ガラクタのプラスティックみたいな存在だし、っていう曲です。

――「大嫌いな言葉だけど 夢は叶うよって 君だけには言ってほしかった」ってところが僕は好きで、グッとくる。どっかの誰かにそう言われても「てやんでえ」って思うけど、大事な君だけには……。

延本: そう、君だけには応援してほしかった、っていう。

倉品: 流れ的にも、Aメロで主人公の心情にグッとフォーカスしてる感じがあって、それによって曲が展開していく。

――ヴォーカルも、この曲には大人っぽい色気があるね。

倉品: 嬉しいです。個人的にはこれからもっとこういう曲を歌っていきたいという気持ちもあって、その第一歩になったかなと。

延本: 夜の歌なら、私はいくらでも書ける。作っていいってなったら、全部が夜の歌になっちゃうくらい。今はまだそれを自分で抑えてるところがあるかもしれない。

――もう抑えなくていいんじゃない? 個人的にはAPRILの夜っぽい歌が好きなので。

倉品: 夜の歌、実はけっこう人気が高いんですよ。僕ら、わりと太陽のイメージが強いと思うんですけど。

――「太陽」って曲もあったしね(笑)

倉品: ありましたね。あれは今聴くと、若いなって感じです(笑)。

――6曲目は「水蒸気」。これは電子音から離れたシンプルなスロー曲で。

倉品: めちゃめちゃシンプルな曲。ユーミン(松任谷由実)の「ノーサイド」みたいなイメージで作りました。1年半以上前からあった曲なんです。

――倉品くんにとってのパーソナルな曲だよね。パーソナルな曲ならではのよさが出ている。

倉品: 湖畔の朝靄のキャンプ場という明確なシチュエーションが自分のなかにあったんです。そこでひとり、ぼーっと湖を見ている自分の絵が浮かんでいて、それをそのまま歌詞にしました。

――それを見ながら、自分の過去をぼんやり振り返っている。

倉品: そうですね。見えない心の傷というか。僕はひとつのことをずっと考えてしまって、いつまでもそれが尾を引くほうで。自分のいまの人間性を考えてみても、昔のあの哀しみがあって今のこの性格があるんだなって思うし。けっこう自分のことを書いちゃいましたね。

――メロディの展開もいいし、あと、この曲はベースもいい。

延本: これはけっこうベーシストとしてオススメの曲です!

「叩けば叩くほど曲がよくなるという経験を”サマーレインと涙の跡”でして、それが自信にも繋がって、そのあとのレコーディングにも活きたんです」

――7曲目は連続配信第2弾だった「人魚の鱗」。これぞシティポップって感じだね。

延本: 大はしゃぎでシティポップをやってる感じですね(笑)

倉品: リファレンスとしても杏里さんの「悲しみがとまらない」があったので。

――配信したときの反響も大きかったんじゃない?

延本: この曲で初めてSpotifyの「New Music Wednesday」っていうプレイトリスに選ばれて、注目度がグッと高まったんです。選ばれたときはみんな大興奮だったよね。「入ってるよ!!」って。むちゃくちゃ嬉しかった。

――歌詞はどうやって出てきたの?

延本: いつの間にか書けてた感じでした。全然書けない日があったんですけど、「人魚」というワードが出てきてからはスルスルっと。これも女性の目線で書きたかったんですよ。それと、昭和の魔法少女系アニメの歌詞みたいなのがいいなと思って。ある時代のああいうアニメの主題歌って、シティポップっぽいのがけっこうあったじゃないですか。そういうポップさが出せればいいなと思って。

――夏に配信するから夏っぽい曲をってことは意識してた?

倉品: 意識して書いたというよりは、そういえば曲調が夏っぽいねって感じで。配信曲の候補のなかで、これが一番夏っぽい曲だった。

延本: 中村(フミト)さんのミックスがきたときに、めっちゃテンションあがったよね。「これはすごい!」って。

倉品: うん。中村さんの手によって、完全に化けましたね。例えばヴォーカルのリバーブも1曲のなかで場所によって変わるんですよ。そういうのを緻密に組んでくれて。

延本: 中村さんは、そういうのを楽しんでやってくれてるのがよくて。

倉品: うん。この曲のときも電話がかかってきて、ドラムで高橋幸宏さんみたいなアプローチを試したいと言われて。初めはもっと普通のバンドサウンドだったんですけど、そういうふうにすることでグッと面白さが出た。もちろん、つのけんのドラムなんですけど、音の加工が一工夫あることで、より80s感が伝わりやすくなったと思います。

――8曲目は「サマーレインと涙の跡」。連続配信の第1弾だから思い切り80sっぽいアレンジに振り切ったの?

倉品: もともとこういうアレンジで、(連続配信の)1曲目はこういう曲がいいねってことで選んだんです。

延本: この曲はどうしてもサビ始まりにしたくて。そうするためのイントロを考えることと、あと、Aメロを変えたいってことになって、新たにAメロとBメロを絞り出すのが苦しかったです。歌詞も書けなすぎて、めちゃめちゃ苦しかった。

――そうなんだ。

延本: 歌詞で一番苦しんだのがこの曲で。何十回書き直したかわからないくらい。テーマすらなかなか決まらなくて、書いてはマルっと消して、また書いての繰り返しで。

――そんなに格闘してでできた曲だったんだね。

倉品: でも、この曲でそれをとことんやれたことがよかったんですよ。叩けば叩くほど曲がよくなるという経験をこの曲でして、それが自信にも繋がって、そのあとの曲作りにも反映したし、レコーディングにも活きたんです。

――「壊れる為の二人じゃない」と、いきなり核心から始まる。

延本: 「ない」「ない」って言いたかったんですよ。信じたいだけのひとの言葉というか。そう思いたいひとの曲にしたくて。

倉品: 強がってる感じだよね。

延本: そう。「自分、頑張れ」みないな。「よね?」とか「はず」を含んでの「ない」。

――えんちゃんの歌詞にしては、抽象的ではなく、珍しく心情を書いてもいるよね。

延本: あ、そうですね。確かに。なんか、まっすぐな感じのようでいて、悲しいというか。雨の歌だし。

――この主人公は、えんちゃんと似てるところ、あると思う?

延本: 全然違うと思う。私はとことん恨み節にいくほうだから。研ナオコさんが歌いそうな女性のタイプ(笑)

「シブい曲も好きな方には“ぜいたく”のよさが絶対に伝わるという自信があります。確かに塩味全開のものを前に出すときがあってもいいのかもしれない」

――9曲目は「木綿のハンカチーフ」。初めは「え? カヴァーも入れるの?」って思ったんだけど、「サマーレインと涙の跡」からの流れが自然で、結果的にすごくいい収まり方をしたよね。

倉品: そうなんですよ。この曲は入れるべきかどうしようか迷っていたんですけど、ほかの曲が揃って並べてみたら、全然合うじゃんってなって。

延本: 思ってた以上にしっくりきた。

――そう思う。この曲をカヴァーするにあたって意識したのは、どんなところ?

延本: 元曲は何千回聴いてもいい曲じゃないですか。だから絶対超えられないし、だからといって崩し過ぎても元曲に失礼だし。だから絶対元曲に勝てないことを前提にしながらも最良のものに仕上げようという気持ちで取り組みました。あと、春の行楽シーズンの鉄道のCMとかで使われたらいいなってこともイメージして(笑)

倉品: いいところをそのまま残すという発想ですね。いい曲をよく聴かせるってことだけを考えてました。なので弦のフレーズはまんま残したんですけど、ピアノから始まることで少し違う聴こえ方をするかなと。

――宮本(浩次)くんの「木綿のハンカチーフ」は聴いた?

倉品: 聴きました。すごくいいですよね。潔いというか、勇気があるからああいうふうに歌えるんでしょうね。僕にはああいう歌い方はできないし、とにかく曲を大事に大事にって考えて歌ってました。

――10曲目は「ぜいたく」。これも「水蒸気」同様、倉品くんにとってのパーソナルな曲で。

倉品: フルでこの曲のデモを作ったのが2年前くらいだったんですよ。「ぜいたく」も「水蒸気」も僕のなかでは自分の趣味ソングというか、ただ好きなように作っただけのものなんです。けど、みんなが今回やろうよと言ってくれたのでやることになって。

――僕は倉品くんのこういうパーソナルな曲をいつもすごくいいなと思っていて。会場限定で売ってたこの前のソロ作もいい曲ばかりだったのに、倉品くん自身はそんなに強くプッシュしてないでしょ。「ぜいたく」も「水蒸気」も、メンバーがいいって言わなければやらなかったわけでしょ? それってなんでなんだろって思うんだけど。

倉品: なんですかね(笑)。自分では、そういうソロみたいな曲以上にバンドでやりたいことが常にあるんですよ。今で言うと、それはシティポップで、そっちをやりたいというのが先にきて。これまでずっとそうやってきちゃってるっていうだけのことなんですけど。

――こんなにいい歌詞、いいメロディなのに。

倉品: ほんとですか? 嬉しいっす。でも、こういう曲で「いくぜ!」みたいな感じは、僕にはないんですよね。こういう自分の趣味ソングは、言うなれば塩味というか。

――塩味が好きなんだよ、僕は(笑)

倉品: あはは。でも内本さんのようにシブい曲も好きな方には絶対に伝わるっていう自信はあります。うん、確かに塩味全開のものを前に出すときがあってもいいのかもしれないですね。でもまあ、それはバンドのみんながそうしたくなったときにやればいいというか。

――バンドのみんなも、こういう塩味があったほうがいいから選んだわけでしょ?

延本: そうですね。純粋にリスナーとして聴いて、いい曲だから入れたいって思ったし。意外と、つのけんがアルバムのなかで一番好きだって言ってた。

――何年かすると、自分でももっと好きになる曲かもしれないよ。

倉品: ああ、年をとってから大好きになりそうな曲かもしれないですね、確かに。

――かなり自分自身を見つめて書いてる曲でしょ?

倉品: いや、「ぜいたく」はどちらかというと映画を観てる感覚で書いていて。「水蒸気」のほうが自分のことを書いた感じがあります。「ぜいたく」はイメージありきで書いていて、自分を吐露している曲ではないですね。

――そっか。とはいえ、倉品くんとえんちゃんでは歌詞にすることがやっぱり違っていて、倉品くんのほうが私的な感情とか思想とかが反映されることが多いよね。

延本: そう思いますね。私は自分の生き方みたいなものがないので。

――いや、それは自分がそう思っているだけで、実際はめちゃめちゃあると思うけど。えんちゃんは歌詞にはそれを出さず、ストーリーにしたり絵画的なものにしたりすることが多いし得意なんだと思う。それが所謂APRIL像に繋がっているわけだけど、だからこそ倉品くんの私的な歌の存在感も際立つというふうに僕は思っていて。

倉品: 僕がこのバンドで歌詞を書く意味はそこにしかないと思っているんですよ。僕は延本みたいにいろんなタイプの歌詞を書けるわけでもないし、僕の歌詞が必要なときに少しだけあればそれでいいかなって思っていて。だから、アルバムで言うと今回くらいの割合で出せるのがちょうどいいんです。

――確かにこのバランスはちょうどいいのかもね。ここぞというときに倉品くんのパーソナルな曲が出てくると、それがかえって際立つし。例えば『ニューフォークロア』の「star over」がそうだったように。

倉品: はい。どんどんそういうふうになってきてる気がしますね。

――因みにこの曲も卓史くんのギターがとてもいい。

倉品: そうなんです。卓史の成長は今回すごく感じるところで。

延本: ギリギリまで「できひん」って言ってたけど、最後にちゃんと仕上げてきたもんな。

「”桃源郷”という言葉も、自分たちがずっと追い求めてきた音楽生活にどこかリンクするところがある。それが10周年イヤーのアルバムのタイトルトラックになるというのは、意味的にも深いなと」

――そして締めは表題曲の「Xanadu」。まさに表題曲に相応しい。曲が先だったの? それともアルバムタイトルが先だったの?

倉品: アルバムタイトルが先に決まりました。

延本: その時点では最後にもってこいの曲がなかったんですよ。別の曲があったんですけど、どうしてもそれだと弱いって話になったので、それをぶっ壊して1から作ることになったんです。

――その弱かった曲を元に書き換えたの?

倉品: いや、イントロ以外は全部作り変えました。なので完全に別の曲になりましたね。ただ、サビでコーラスを主体にするというアイデアだけは最初からあったんです。そこは押し通した。

――コーラスを主体にすることで、4人でバンドやってる感じを表わそうと?

倉品: というか、それに関しては明確なリファレンスがあったんですよ。スターダスト・レビューの「と・つ・ぜ・んFall in love」なんですけど、それを自分たちっぽく今やったら新鮮だろうなと思って。それが結果としてバンド感に繋がった。今までも僕らはコーラスを大事にしてきたので、サビのメインがコーラスっていうのがかっこいいだろうと思ってトライしたんです。

――スタレビの「と・つ・ぜ・んFall in love」の元はアース・ウインド&ファイアーの「セプテンバー」だから、そのノリが「Xanadu」に引き継がれてると言えなくもない。因みに「桃源郷」というテーマ性は前からあったものなの?

延本: テーマからアルバムタイトルを付けたというわけではなく、「Xanadu」という語感に引っ張られてですね。そもそもXかZから始まる単語のタイトルを付けたいって言ってたんですよ。それで検索したら「Xanadu」って出てきて、一発で「これや!」と。意味を調べたらユートピアとかパラダイスとかいくつかあったんですけど、桃源郷というのは死んだひとが行く場所じゃなくて生きてるひとにとっての世俗を離れた別世界というような意味があるとわかって、それっていいなって思ったんです。

――昔、六本木に「XANADU」ってディスコがあったんだよ。ザナドゥじゃなくてキサナドゥって読むんだけど。

延本: へえ~。かっこいいですね。Xで始まるってかっこよくないですか?

――うん。でも、かっこいいからってことで、Xから始まるタイトルを探したの?

延本: らっしーが「10周年だからXが入るのはいいね」って言って、そこからですね。それにXとかZで始まるタイトルってそんなにないし、「Xanadu」ってすぐには読めないけどクセになる語感でもあるし。それこそ80sの洋楽のアルバムタイトルっぽい感じもあるから。

――オリビア・ニュートン=ジョンのその時代のヒット曲にも「ザナドゥ」ってあるし。

倉品: そう。そういう意味で80sのフィーリングが匂うところもいいなと。文字の並びも気に入ってるんですよ。Xで始まってUで終わる言葉ってあんまりないので。

――で、そのタイトルを決めて、そういうムードの曲を作ろうと。

倉品: というか、さっき言ったように別の曲が始めにあって、レコーディング1週間前というギリギリのタイミングでとにかく理想に近づけるためにメロディを変えまくって、5パターンくらい作ったところでやっとこれが見えてきた感じだったんです。でも結果的にアルバムの最後に相応しいメロディが出てきたなと思えたので。

――実際、曲調も歌詞も今のAPRILに相応しいものになったよね。

倉品: はい。「桃源郷」という言葉も、自分たちがずっと追い求めてきた音楽生活にどこかリンクするところがあるので。それが10周年イヤーのアルバムのラストの、しかもタイトルトラックになるというのは、意味的にも深いなと思いました。

延本: その歌詞もレコーディング当日まで書けなくて、その日の朝やっと書けたもので。その場で読み返したら、なんか自分たちっぽい歌詞になっていた。今回のアルバムって、そういう結果論が多いんですよ。何かに導かれるように出てくるみたいな。

――偶然のようでいて必然であるというような。

倉品: そうですね。この曲の場合はタイトルトラックとして10周年の自分たちに相応しい曲にまで鍛え上げたいと思いながらメロディを作り変えていたので、そういう意味での意識は入っていたから、やっぱり偶然というより必然だったのかもしれないし。

――「僕ら行く 各駅列車で」っていうのが、実にAPRILらしい。

延本: 一気にビュンと行かない感じが(笑)

――ははは。まあでも、「ここから」という希望を強く感じさせる曲だよね。「ここに辿り着いた」というよりは、「ここから」という気持ちのほうが出ている曲で、それを最後にもってきたことに意味がある。今回の締めに相応しい。

倉品: 想像以上でした。

延本: ひとに聴かせると、だいたいみんなこの曲が一番いいって言う。

――珍しく派手さもあるしね。ドラマチックだし。

延本: 確かに。

――卓史くんのギターもイントロから炸裂してるし。マイケル・ジャクソン「今夜はビート・イット」的な感じで、それも活かしながらのアレンジも効いてるなぁと思った。

倉品: アレンジはまったく悩まなかったですね。ギターのこういうフレーズがここにきて、シンセがここでこうきて、っていう組み立てが瞬時に浮かんだんですよ。めっちゃ簡単にアレンジできた。

――やっぱりそういう曲がよかったりするんだよね。

倉品: そうですね。フレーズが呼ばれるように出てくる、みたいな。

――アルバム全体の流れもいい。風が吹いて、夏になって、夜っぽくなって、秋が来て、最後に季節もない桃源郷に連れていかれる、というような。

倉品: 曲の並びは3ヶ月くらいずっと考えていたんですけど、最終的にこれでビシっとハマりましたね。

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――あと、ジャケも今回は非常に素晴らしいので、えんちゃんからどうやってこのジャケができたか説明してくれる?

延本: (デザイナーの井上) 絢名と話して、最初に色合いをどうしようってところから決めていったんです。アーティスト写真も同時に進めていたので、それも含めてアースカラーっぽいのがいいって話になって。今まではけっこう色も派手めにしてたんですけど、今回はシンプルでもいける気がしたのと、あとちょっと色あせた感じにしたいっていうのもあり。それでいくつか画家の絵とかを見せつつ、どこか不思議な、シュールな感じがいいってなったんです。

――なんでシュールなのがいいと思ったの?

倉品:ザナドゥって言葉の持つニュアンスが大きかったんですよ。

延本: そう。桃源郷って、もしかしたらちょっと気味が悪いようなニュアンスもあるじゃないですか。どこか夢のなかの景色のようというか。現実じゃない感じみたいな。で、絢名が円を中心にしたモチーフのラフを送ってくれて、その円を歪めて雲形にしてもらった上で、私が絵を描いたんです。色は抑えて正解だった。

――この独特の造形と色彩がマッチして、ほかにないジャケットになったよね。柔らかさと不気味さがいい塩梅だし。

延本: 今までずっと絢名と一緒に作ってきてるけど、今回のはかなりヤバいと思います。精密に計算された色使いのデザインで、「絢名、やったったな!」って言いたくなる。

――というわけで、内容も素晴らしいし、アートワークも素晴らしいし、本当に最高のアルバムになったなと。10年目でこういう攻めのアルバムができてよかったよね。

延本: なんか1stアルバムができたみたいな気持ちです。これがこれからの起点になる気がする。これを起点にしてここからバンドをでかくしていきたいというか。

――10年間のなかで、最もバンドの転換期になる作品じゃないかな。

倉品: そう思いますね。

――中村フミトさんと出会ったことも大きいのだろうし。

倉品: それは本当に大きいです。

――あと、えんちゃんが音楽制作に対するモチベーションを完全に取り戻したのも大きいし。

延本: ははは。あと、6ヶ月配信でSpotifyでちゃんと結果を出せたことも、メンバー全員の自信に繋がった。それも大きかったですね。すごく勇気づけられた気がします。

――4人の創造力が合わさって作られたアルバムって感じがすごくするし、実際4人の結束力も今が一番って感じじゃない?

倉品: それは言えますね。今回、卓史とつのけんもすごくよくて、それでできたアルバムだって思います。今までで一番そう思う。不思議と自然にみんながそういうふうになったタイミングだったんですよ。

延本: 実はみんなが80sを大好きだったというのは大きかったかもしれないですね。好きだから、やってて楽しい。自分たちの好みの曲ができていくのが嬉しかったし。

――それに時代とも合ったよね。3~4年前に80sとシティポップをテーマにして作っていたら「なんで今、これ?」って感じだったかもしれないけど、今は時代がこういう音を求めているから。

倉品: 確かに。

延本: 初めてかもしれないね。私たちのやりたいことと時代が合ったのは。今までだと例えば私たちが歌ものをやりたいっていうときに4つ打ちが全盛だったりとかしてたし。

倉品: うん。時代性と噛み合ったことが今までなかったという自覚はありますね。意識したこともなかったし。でも今年はたまたま「きたな!」っていう。

延本: イケてるバンドになれたやん(笑)



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