見出し画像

Rei@渋谷クラブクアトロ

2024年3月1日(金)

渋谷クラブクアトロで、Rei。

Rei Release Tour 2024 “VOICE MESSAGE”、そのファイナル。
今回のバンドは、Ba.真船勝博、Dr.澤村一平、Key.TAIHEI、Vn.須藤杏。

Reiのライブはこれまで何十回と観てきたが、過去のどれとも手触りの異なるライブだった。

まずセットリストが非常に新鮮だった。今回はツアー・タイトルの通り、昨年リリースの最新作『VOICE』を携えてのライブ。となれば当然そこからの曲を多くやるのだろう……とは予想できたが、ここまでがっつり『VOICE』曲主体のライブにするとは自分は思っていなかった。過去曲のなかに塩梅よく『VOICE』曲をいくつか混ぜた構成にするのだろうと思っていたのだが、その逆で、『VOICE』曲を完全にメインとしながら、過去曲もいくつか混ぜていくという構成だった。そう、Reiはこのツアーでしっかり、広く、ズバっと、深く、『VOICE』に込めたメッセージ(=VOICE MESSAGE)を届けたかったのだ。

なんたってのっけからアルバム1曲目の「Love is Beautiful」が演奏されたので、そこでもうつかまれた(この曲のメッセージは今のReiの核となるものである故、中盤のいいところに持ってくるだろうと勝手に予想していたので)。「Sunflower」は去年からライブで数回演奏されていたが、それでも昨夜は不思議と新鮮に響いた。「CITY」を始め、ストリングスの入った曲にはヴァイオリニストの須藤杏さんが加わり、言うまでもなくその新鮮さ、その味わいは格別だった。エレクトリックギターを核とした所謂ロックバンドの音と、優雅なヴァイオリンの調べ。それが有機的に合わさるのを間近で(ナマで)感じるのは、CDやサブスクでそれを聴くのと体験としてまるっきり違う。

そうして『VOICE』収録曲の全てが、このバンドならではのアレンジによって音源とはまた違った印象で響いてきたのだが、そのなかでもとりわけ「朝」のアレンジのされ方とReiの歌唱の気持ちの入り方にやられた。今回は珍しく近年の代表曲とも言える「Categorizing Me」をやらなかったのだが、ある意味ではそれに代わって「朝」があった。そういうエモーションが、大きくライブアレンジされたその曲にあった。この曲がこんなにもエモーショナルに生まれ変わるとは。化けたと言ってもいい。

と、このように、ポップに新境地を表わしていた『VOICE』というアルバムの曲群がこのライブをはっきりと形にしていたということがまず、「過去のどれとも手触りの異なるライブだった」と自分が感じた要因のひとつ。

もうひとつは、オーディエンスの熱い反応、それによる熱気だ。

チケットはソールドアウトとなって、クアトロは満杯。そのたくさんの観客の反応が、自分が観てきた過去のReiのどのライブよりもこの夜は熱かった。登場時の拍手と歓声からしていつも以上のものだったが、ライブ中盤で「Call My Name」の演奏があり、そこでReiが「やっぱり名前を呼んでもらえるのは嬉しい」と話すと、みんなが「Reiちゃん!」「Reiちゃん!」「Reiちゃん!」「Reiちゃん!」とお囃子のように(まるでワッショイ・ワッショイとでも言うように)名前を呼ぶことに。Rei自身がその状態に少し驚きながら、笑ってしまっていたほど。

その熱気はライムスターとコラボした曲「My Runway」でさらなるものに。昨年のブルーノートで初めてライブ演奏したこの曲、実に、実に、ライブ映えする。「Step 1. 2. 3. 4. 5. pose」のところでみんなが一緒に手を挙げてカウント。最高だ。そして盛り上がりは終盤の代表的なロック曲連打でピークに達した。いつだって熱い演奏をするReiだが、やはりこれだけ客が熱いと、演奏も歌もさらに倍の熱さに自然となる。ステージとフロアの理想的なエネルギーの循環だ。

それにしてもなんでこの夜はこんなにも観客が熱かったのか。もちろん何よりReiの熱いパフォーマンスに応えて、というのは間違いないところだが、クアトロという会場の特性もあったかもしれない。オールスタンディングで、しかもソールドアウトである故、ギュっとフロアに人が詰まり、ステージの高さも音響もクアトロは理想的。ステージ上の熱をダイレクトに感じられ、それに応えやすい会場なのだ。つまりReiとクアトロという会場の相性がとてもいい、と、僕はそう感じた。

また、Reiの観客は普段ブルーズロック好きの男性客が圧倒的に多いのだが、この夜はいつもよりも女の子のファンが多かったようにも見えた。『VOICE』の曲のポップさと心のこもった歌詞(言葉、メッセージ)が、届くべき女の子たちにちゃんと届いたということの証なのかもしれない。あるいはライムスターの先頃の武道館で初めてReiを観て、彼女を好きになった、今回のライブを観ようと思ったという人もきっといたのだろう。

秋のツアーも彼女の口から発表され、東京はリキッドルームでやるそうだ。もっともっといろんな層の音楽好きが観に来て、さらに熱気渦巻くライブになることを願っているし、そうなりそうな気しかしない。


↓こちら、昨年10/27の東京キネマ倶楽部公演のレポート。

↓こちらは、昨年12/9のブルーノート東京公演のレポート。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?