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『エターナルズ』。クロエ・ジャオは『サイボーグ009』を読んだだろうか。

『エターナルズ』を公開初日(5日)と昨日(11日)、IMAXで2回観てきた。

FBに書いた1回目の感想は以下の通り。

11月5日(金)、新宿TOHOシネマズで『エターナルズ』。

待ちに待った『エターナルズ』。公開初日となる今日、IMAXで観てきた。
驚きの連続。情報量がめっちゃ多くて、かつてないくらい壮大な物語だけど、破綻していない。普通に考えたら畳めるはずのない大風呂敷をちゃんと畳んでみせたクロエ・ジャオ監督の手腕は大したものだ。『ノマドランド』の印象から静謐で淡々とした進み方だったりするのかと思いきや、バトルもたっぷりでテンポよく進み、飽きる瞬間など少しもない。いやホント、こんなに壮大な物語をよく2時間37分におさめることができたなぁと感心しちゃう。これまでのマーベル作品とは確かに趣が違うけど、ユーモアもちゃんとあるし、MCU以外にこんなの絶対作れないとも言えますね。始まりの物語だけど何かひとつの到達点にも思えるな。

この作品で初めて出てくる10人のエターナルズでありながら、10人それぞれの個性がハッキリ描かれていて、役割や見せ場も均等に与えられ、観ている途中から必ず誰か推しになるだろう作りもいいところ。僕的には、いつも通りの怪力マブリーはもちろんだけど、マッカリ役のローレン・リドロフのチャーミングさとドルイグ役のバリー・コーガンのかっこよさに惹きつけられた。

ひとことで言うなら、愛と心の物語。大満足!。このあとパンフ読み込んで、来週あたりにもう一度観に行くつもりです。

解説・論考は既にいくつも出ていていろいろ読んでいるのだが、以下の解説が面白く、大いに納得。

このように、『エターナルズ』は特殊能力を持った多様な10人がそれぞれ悩んだり自信喪失したりしながらも自分(たち)の役割に向き合って闘いながら生きていく人間ドラマ。一度目は頭に入りきらなかったやや複雑な物語の設定部分も確認した上で昨日、池袋グランドシネマサンシャインでもう一度観直し、改めてこれだけのことをよく2時間半ちょっとにまとめたな、細部に至るまでほぼ破綻がないなと感心しつつ、こういう物語が本当に自分は好きだ、そういえば昔から大好物だったよなとも思ったのだった。

例えば自分が多大なる影響を受けた石森章太郎の傑作漫画『サイボーグ009』。旧昭和版(1966-1968年、白黒)のTVアニメをリアルタイムで見て夢中になり、劇場版も母に連れていってもらい、小学生の頃からコミックを買ってがっつり読み、中学生の頃は部屋にポスターを張っていたくらい好きだったのだが。これがまさしく「特殊能力を持った9人がそれぞれ悩んだり自信喪失したりしながらも自分(たち)の役割に向き合って戦いながら生きていく人間ドラマ」だった。なんのために、誰のために闘うのか。どうして自分はこんな特殊能力を持ってしまったのか。さらに突き詰めると、守らねばならない人間に、地球に、本当にそこまでの価値があるのかどうなのか。彼らは深く悩み、自問し、葛藤し、ときには仲間同士でいがみあい、でも助け合い、宿命と向き合って生きていた。『仮面ライダー』にせよ『ロボット刑事』にせよあの頃の石森作品はみな悩んで葛藤しながら闘い続ける者の物語だったが、僕が『サイボーグ009』をとりわけ好きだったのは、国籍と年代の異なる「複数の」者たちが自分の抱える思いをときに仲間にぶつけたりしながら共に役割と向き合って生きていて、そのなかで友情だったり愛情だったりが芽生えたりもする、そういうところだったんじゃないかといま思う。

『エターナルズ』がまさにそれなのだ。

まず、多民族で、様々な超常能力を持った主人公たちという初期設定に共通項がある。イカリスの空飛ぶ能力は002=ジェット・リンク、ギルガメッシュの怪力は005=ジェロニモ・ジュニア、姿を変えて相手に見せるスプライトの能力は007=グレート・ブリテン、マッカリの高速移動は加速装置を使う009=島村ジョー、武器とカラダが一体になったようなセナは004=アルベルト・ハインリヒに通じるものがある。性格で言うなら、リーダーでありながらリーダーとしての自信を持てずにいるがしかし調和力の高いセルシは島村ジョーっぽいし、どこか虚無的で冷たいようでいて実際は優しさのあるドルイグはハインリヒっぽい。

またイカリスが最後に決断してとった行動はジェット・リンクの覚悟を思い出しもした。そして何より、物語のテーマ性が未完の『天使編』に通じている。石森章太郎が『サイボーグ009 天使編』で問うたことを、クロエ・ジャオは『エターナルズ』に託して問い直そうとしているかのように思えたりもするのだ。

さらに遡って、自分が『サイボーグ009』(旧昭和版)とほぼ同じ頃に見ていたアニメ『レインボー戦隊ロビン』(1966-1967年、白黒)のことも思い出した。自分が幼稚園の頃のSFアニメで、キャラクターデザインを石森章太郎や藤子不二雄らが分担して行なった作品だ。こちらは少年ロビンと6体のロボットが地球制服を企むパルタ星人と戦う物語なのだが、感情のチャンネルを持たないニヒルなウルフはドルイグっぽく、復元光線で傷を瞬時に治癒するリリはエイジャックの能力に通じ、ベンケイは心優しき怪力ロボットでギルガメッシュ的なのだ。

因みにこのような『レインボー戦隊ロビン』のヒントになったのは『南総里見八犬伝』。自分は1973年から1975年にかけてNHKで放映された人形劇『新八犬伝』を子供のときに夢中で見たものだったが、八犬士同士の出会いや互いの素性を知る前の行き違いなどは、これも『エターナルズ』の物語の骨格に通じるものがある。8つの玉の合わさりは、要するに「ユニマインド」だ!

もうひとつ書いておくと、『エターナルズ』のファストスが絶望して吐くあの言葉は、『デビルマン』5巻の不動明のそれと同じものでもあった。

このように、自分が子供の頃に見たり読んだりしてきた昭和の漫画やアニメの設定やテーマ性の、『エターナルズ』は現代的なアップデート版と見ることもできるわけで。そりゃあ好きにならずにいられないはずがない!!

クロエ・ジャオ監督は日本の漫画やアニメが大好きなのだそうで、エヴァンゲリオンやナウシカ(漫画版)も当然見て(読んで)参考にしたところは多いのだろうが、果たしてサイボーグ009やレインボー戦隊ロビン、八犬伝なんかのことも知っていたりするのだろうか。

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